慶應義塾大学経済学部の駒村康平教授 4月10日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は、『日本の将来推計人口(平成29年推計)』を公表しました。これによると、2065年に日本の人口は8808万人まで減少し、65歳以上の高齢者が占める割合は38.4%に上昇するとされています。一方、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は、2060年に1.35とした前回推計(2012年)に対し、65年は1.44になると見込まれ、回復の兆しを見せています。現在の自公政権が進める子育て支援策などの拡充が、一定の効果を出している証明ともいえます。人口減少や少子化が社会に与える影響や、求められる政策について慶應義塾大学経済学部・駒村康平教授のインタビュー記事を、5月9日付の公明新聞より転載します。
参考:『日本の将来推計人口(平成29年推計)』
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp_zenkoku2017.asp

思い切った財源投入を/価値ある給付型奨学金の創設
――将来推計人口の受け止めは。
駒村康平・慶應義塾大学教授 5年前の前回推計に比べて将来の合計特殊出生率が若干回復し、寿命予測も伸びたことで総人口が1億人割れするタイミングは少し先延ばしになった。
 出生率の回復は、労働環境の改善や育児休業制度の普及、景気の回復などが後押ししたと考えている。
 ただし大きな傾向として少子高齢化や人口減少は今後も続く。現に昨年生まれた赤ちゃんの数は統計開始以来、初めて100万人を割り込んだ。出生数は2050年代から60年代にかけては50万〜60万人程度まで減少すると予測される。
平成29年版人口推計
――少子化や人口減少が社会に与える影響は。
駒村教授
 子どもの数が減れば、おのずと将来の労働人口は減少し、経済成長が鈍化する。推計では65年に、働き手である生産年齢人口(15〜64歳)が現在より4割も減る。社会の活力低下が懸念され、社会保障制度も見直しが迫られよう。
 一方、労働者不足を補う技術革新も進むはずで、将来のイノベーションを担うのは今の子どもたち自身だ。新たな課題に挑戦したり、グローバルな視野を育む環境の整備は、極めて重要な成長戦略といえよう。
 こうした意味から、少子化対策や教育に財源を思い切って投入すべきだ。

――具体的には、どのような政策が求められるか。
駒村教授
 一つは社会全体として子育てを応援する体制の強化だ。良好な保育環境の整備や、学費の補助、児童手当の拡充などの優先度を高めてほしい。
 子どもたち一人一人を育む観点では、一握りの英才に社会をリードしてもらうという発想から、子どもたち全体の力を底上げする方向に転換すべきだ。
 特に貧困の連鎖が問題となる中、親の経済力の多寡で子どもの進路が左右される状況は放置してはならない。その点、今年度に創設された給付型奨学金は非常に有効で、社会全体をボトムアップする効果がある。

保育士の処遇改善、高校無償化/東京都の方向性正しい
――都議会公明党の推進で、東京都は保育士の給与アップや私立高校の実質無償化を進めている。
駒村教授
 都が進める政策の方向性は全く正しい。保育士の処遇改善は全国的な課題で、資格を持ちながら離職した潜在保育士を掘り起こして待機児童解消につなげてほしい。認定こども園など幼保一元化も加速すべきだ。
 高校進学率が100%に近い中、授業料の実質無償化も家計が厳しい子育て世帯を応援する観点から意義は大きい。誰もが生まれた時から良好な生育環境やチャンスが保証され、厚みを増した中間層が社会全体を豊かにする未来をめざしてほしい。

――政治への期待は。
駒村教授
 今、社会階層の分離が進んでいると実感する。高所得階層の子どもたちが、自分と違う境遇の人がいることを知らないままリーダーになることに危うさを感じる。
 暮らしの現場には、生活感やにおいがある。障がいのある人や生活困窮者など、地域の多様な声を政治に反映すべきだ。特に大衆に根差した公明党には連立与党の中で、福祉や社会保障、格差の問題解決の中核となるよう期待している。
 中でも、虐待を受けた子どもや社会的養護を必要とする子どもたちに光を当ててほしい。最近の研究の蓄積によると、ネグレクト(育児の怠慢や拒否)などを受けると、心理的・能力的な発達に長期的に深刻な影響を及ぼし、自己肯定感や社会への信頼感も低くなりがちだ。こうした子どもたちの幸せがあって、初めて社会全体の幸福がある。

駒村康平(こまむら・こうへい)
1964年、千葉県生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。経済学博士。国立社会保障・人口問題研究所、駿河台大学助教授、東洋大学教授などを経て現職。著書に『中間層消滅』(角川新書)など。