地域猫
 5月16日、井手よしひろ県議は、地域猫活動の先進事例としてNPOねこだすけの工藤久美子さんのご紹介で、東京都新宿区の町内会地域猫対策部を現地調査させていただきました。
 以下、地域猫活動の10年の歴史を、地域猫対策部の責任者と役員の方、地主さんらに振り返っていただきました。

地域猫活動は、地域の生活環境問題解決の一手法としてスタート
 この町内会では、10年前から『地域猫対策』を進めています。戸建と集合住宅の間に公園や駐車場、神社などがあり、昔から常に野良猫が数多く暮らしていました。
 地域猫活動をスタートさせる以前(2007年前)は、町内には80〜100匹くらいの野良猫がいたものと思われます。いわゆる餌やりさんの存在や、多頭飼育(猫屋敷)が複数存在し、排せつ物やその匂い、鳴き声、事故や病気で行き倒れになる猫、駐車場に止めた車が傷けられるなど、町内では深刻な猫問題が起こっていました。
  こうした中2007年、新宿区役所から「駅周辺の自転車」と「地区内の野良猫」対策について、各町内会から担当者を選出し、行政と地域が一緒になって住環境の改善を行いたいと要請が来ました。
 また、隣町の町内会は、いち早く野良猫対策を進め成果をあげていて、この町内会からの猫の移動に困り、再三にわたって共に活動をすることを呼びかけてきていました。
 これが、この町内会が地域猫活動に取り組むきっかけとなりました。

地域猫用のトイレ
 こうして、2007年11月、町内会として“地域猫活動”に取り組むことが正式に決定しました。
 早速、その旨をチラシを作り町内にポステイング。それ以来、1年に5回活動報告のチラシを印刷して配布しています。ちなみに、新宿区ではこうした広報紙を保健所が無償で印刷してくれます。

2007年11月、地域猫活動が正式にスタート
 2007年12月、町内でもっとも野良猫が集まり、被害が集中していた駐車場のオーナーに猫用トイレを設置することをお願いし、快諾していただきました。すぐにトイレを2つ設置。このオーナーも、「猫は嫌いではなかったが、ここまでの被害に疲れきった。やれることは全てやった」とお手上げでした。
 驚くことにトイレを設置したその日から、猫たちはそのトイレを使いました。その後、トイレは町内のリフォーム会社の協力で屋根付きのものも整備され、最大時6つにもなりました。その結果、路上の糞はなくなり、糞まみれだった土地はハーブ園に変わりました。もちろん匂いもなくなりました。

 苦情のあった地区から、野良猫の捕獲、手術を開始しました。とにかくトラップを仕掛けて獣医さんに運ぶ 、手術をして地域に戻す・・・・を繰り返しました。TNRの後の猫たちの管理は、トイレ設置以外は、とりあえずは従来通りとしました。熱心な餌やりさんがいるので、手術したことだけを伝えて、とりあえず餌を与え続けてもらいました。一箇所がほぼ終わると、次の苦情の場所や猫が多く見られる場所へ移動し、TNRを続けました。

 TNR活動が進んだ背景には、優秀で活動に深い理解があった獣医さんにも恵まれたことも大きなポイントでした。地域猫活動においては、行政、町会、ボランティアの『三者協働』が必要だと言われます。しかし、今振り返ってみると、獣医さんの協力無しには、この活動はありえないことに気づきました。獣医さんの意識改革、具体的には手術費用の軽減が必要です。まさに必要なことは『四者協働』だと痛感しています。

 自由にやっていただいていた餌やりにも、次第に、方法や時間にマナーを守っていただくよう、お願いをしました。決まった餌やりさんがいない地域では、餌やりさんを必死で募集しました。その結果、数人が分担してトイレ掃除や水当番まで決まって理想的な地域猫活動の地域ができ上がりました。
 様々な苦労もありましたが、結局、野良猫のTNRは約 2 年で終わり、3年目からは無責任な飼主や人間対策と他の地区から移ってくる猫への対策が活動の中心となりました。

地域猫活動9年半、地域の猫問題はほぼ解消
 9年半経過した現在は、町の中に野良猫をほとんど見かけなくなりました。全く居なくなったわけではありませんが、その場所、場所の食事の際に現れるだけで、あとはどこかで寝ているようです。食事を決まった時間に決まった場所でもらえることがわかっているので、のんびりしています。メスもオスも手術が終わりましたので子猫が生まれることもありません。猫そのものの数も減ったし、トイレ掃除が進みましたので、町がきれいになりました。『野良猫がかわいそう・・』だと言っていた人も、『猫なんか大嫌い』と言っていた人も両方が喜んで会話が生まれることもあります。
 地域猫を中心にして、住民の触れ合い・交流の場も生まれています。年に2回地域のボランティア拠点施設で町内会地域猫部の主催で“地域猫バザー”がにぎやかに開催されています。

 現在は、町内の約8箇所の餌場に、26匹くらいの『地域猫』が暮らしています。他地域から新顔が入り込んでも、餌やりさんが管理しているので、あまり居つくことがありません。もちろん、新顔の猫に耳先カットのしるしがなければ、すぐに町会に連絡があり、捕獲に向かいます。
 2013年までに合計145匹の去勢不妊手術を行い、元の場所へ戻しています。譲渡は原則としてはしていませんが、13匹(子猫9匹、成猫4匹)に新しい飼主が見つかりました。

茨城県は今年から地域猫活動に本格的な支援
 一方、茨城県では今年度から地域猫活動に本格的な支援をスタートさせます。地域猫活動は、新宿などに比べて10年以上取り組みが遅れていることになります。
 しかし、これはこれで意味があることだと思います。先進地の成功例、失敗例などを謙虚に学び、地域住民も猫たちも、住みやすいいばらきを目指したいと思います。
 6月10日には、日立市では地元の地域猫活動グループの皆さまによる「いばらき地域猫活動セミナー」が開催されます。周回遅れのランナーかもしれませんが、そのロケットスタートにご期待ください。