気象庁のHP 6月に入り沖縄地方と鹿児島・奄美地方が梅雨入りしたのを皮切りに、日本列島は今年も豪雨災害の起きやすい時期を迎えました。6月2日も、日立市で早朝一時間当たり20ミリ以上の雷雨となり、鉄道のアンダーパスで冠水や停電事故は発生しました。
 これまで繰り返された豪雨災害の教訓を生かし、国や自治体で進められている豪雨対策を一層進めなくてはなりません。

気象庁が情報を“見える化”。市町村や住民の避難活動支援
 気象庁は、防災気象情報を迅速かつ分かりやすく提供する工夫を進めています。5月17日から、気象庁のホームページで、大雨や雷の警報を発表する確率がどれくらいあるかを5日先まで公表する取り組みをスタートさせました。警報を発表する確率を「高」と「中」で表し、事前の備えに生かしてもらうのが狙いです。 (http://www.jma.go.jp/jp/warn/
 また、文章で表していた注意報・警報を市町村単位で時系列に色分けし、判別しやすいよう“見える化”しました。気象や時間帯ごとに一覧表で表記し、警報は赤色、注意報は黄色、最大級の警戒が求められる特別警報は紫色で示しています。
 土砂災害が発生する危険性を把握できる「土砂災害警戒判定メッシュ」の表示も改善しました。これまでは市町村の境界線が引かれただけの地図に表示していたが、「危険な地域が分かりづらい」との声を受け、市町村名や道路、鉄道、河川の情報が入った地図上で見られるようにしました。
 7月には、大雨による浸水や河川が氾濫する危険が高まった地域を色別に5段階で示す地図もHPで閲覧できるようにします。情報は10分ごとに更新され、自分がいる場所の危険度を1キロ四方まで拡大して確認できます。
 気象庁が、こうした取り組みを始めたきっかけの一つが、2014年8月に広島市北部を襲った豪雨災害です。3時間で217ミリもの雨が降り、大規模な土砂災害が発生。77人が亡くなるなど多くの犠牲者や負傷者が出ました。
 被害が大きくなった要因として、住民の避難率の低さが指摘されています。夜間の豪雨を事前に予測できず、市が避難勧告を出す前に土砂災害が発生してしまったからです。
 国土交通省が2015年1月に取りまとめた報告書「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」では、市町村が的確に避難勧告を発表するのと同時に、住民自らが防災気象情報を基に主体的に避難する重要性を指摘しています。
 この報告書を踏まえ、国交省の審議会は気象庁に、市町村が避難勧告を出したり、住民が避難する際の参考になるよう、1,災害の可能性が高くなくても、発生の恐れを積極的に伝える、2,危険性を認識できるよう情報を分かりやすく提供する――ことを提言しました。これが一歩ずつ具体化されています。
 気象庁の地域気象観測システム(アメダス)によると、この40年間で1時間に50ミリ以上の豪雨が起きた件数は増加しています。1976〜86年は年平均で162回でした、2006〜16年は年平均232回まで増えています。
 1時間に50ミリ以上の豪雨は、マンホールから水が噴き出し、自動車のワイパーがきかなくなるほどの降雨量です。現在の堤防や排水設備では対応できないケースですも想定した避難が必要となっています。

逃げ遅れゼロへ水防法改正、防災計画「タイムライン」策定も
 防災情報を迅速かつ分かりやすく提供しても、高齢者や障がい者などの災害弱者が逃げ遅れてしまう可能性は残ります。昨年8月の台風10号によって発生した洪水では、岩手県の高齢者施設の入所者9人が避難できず亡くなりました。
 そこで国は、高齢者や障がい者、入院患者など配慮が必要な人が利用する施設に対し、避難計画の策定や訓練を義務付けた「改正水防法」を成立させ、6月中に施行されます。
 対象は、河川が氾濫した際に浸水する可能性がある区域内の施設です。策定しない施設には市町村長が指示し、それでも従わない場合は施設名を公表できる仕組みです。国土交通省は現在、避難計画を策定するための手引の改訂に向けた検討を進めています。

 大規模災害の被害を軽減するためには、国だけでなく自治体や住民、企業などが最悪の事態を想定し、「いつ」「誰が」「何をするか」の行動をまとめておくことも重要だと言われています。
 その観点で始まったのが、「タイムライン」と呼ばれる米国発の防災計画です。台風が発生してから上陸するまでの数日間を使って事前に防災行動を開始し、被害の防止や発生後の早期復旧をめざします。
 国交省は、国が管理する全国109水系の河川でタイムライン簡易版の試行を進めています。茨城県では、一昨年の関東東北豪雨被害を受けて、鬼怒川沿岸地域でタイムラインの整備が進んでいます。
 平成27年9月関東・東北豪雨を踏まえ、国、県、市町等によって構成された「鬼怒川・小貝川下流域大規模氾濫に関する減災対策協議会」において、鬼怒川・小貝川下流域の減災に係る取組方針を策定しました。タイムラインは「逃げ遅れゼロ」に向けた取組のひとつとして、作成されました。 協議会関係市町である常総市をはじめとする茨城県内の10市町、鬼怒川・小貝川上流域の栃木県内の10市町においても、避難勧告の発令に着目したタイムライン(H28年5月版)が作成されています。作成したタイムラインの運用を開始し、迅速かつ的確な避難行動のための取組において活用を図ることになっています。また、このタイムラインをもとに、わが地域、我が家のタイムラインつくりなどの活動も進められています。
常総市のタイムライン(H29年4月版):http://www.city.joso.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/50/timelineH29.4.pdf