日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター 6月8日、井手よしひろ県議は、6日発生した日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターでの作業員被ばく事故について、県原子力安全対策課より緊急の聴き取り調査を行いました。
 この事故は、6日午前11時15分頃、茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構の「大洗研究開発センター」で点検をしようとした核燃料の貯蔵容器の内部の袋が破裂し、実験で使ったプルトニウムなどを含む放射性物質の粉末が飛び散ったものです。現場にいた5人のうち50代の職員1人の肺から2万2000ベクレルの放射性物質が計測されました。原子力機構によると、男性職員の肺の被ばく値から、血液や骨、臓器など体全体に取り込まれた放射性物資の総量を算出し、36万ベクレルと推定しました。この数値は1年間で1.2シーベルト、50年間で12シーベルトの内部被ばくが見込まれる値です。
 5人は、6日夜千葉県の放射線医学総合研究所に搬送され、放射性物質の排出を促す薬剤投与などの治療を受けています。現時点で体調不良などの訴えはありません。
 原子力機構によると、破裂した容器は点検作業が行われていた部屋の隣にある使用済みの核燃料物質を置く「保管庫」に平成3年以降、置かれていました。以来26年間に渡って、管理状況の記録がなく、内部の確認が行われていなかったことがわかりました。
 定期的な点検を定めた規定などはなく、今回は、施設の廃止に向けて原子力規制庁の指示で核物質の管理状況などを調べるために点検が行われていました。

 今回、作業員5人が被ばくした放射性物質の量は、前例のない内部被ばく事故となりました。
 急性の放射線障害が現れる被ばく量ではないとの見方が強いものの、取り扱っていたのがプルトニウムを含む研究用の核燃料である点は深刻です。プルトニウムは長期間、アルファ線を出し続け、周辺の臓器や組織に障害を与えることが知られています。特に肺に沈着した場合には、発がんリスクを高めることが懸念されます。
 作業員5人には今後、放射性物質を体外に排出するための薬剤の投与や、身体症状が現れないかの経過観察、長期的な被ばく影響の評価、本人への説明と精神的なケアなど、長期にわたるきめ細かい対応が求められます。
 一番の問題は、事故原因が明らかではないことです。高速増殖原型炉もんじゅの点検漏れなどで、今まで再々指摘されてきた原子力機構の安全意識の欠如がまたも問題視されることは火を見るより明らかです。
 原子力機構の説明では、貯蔵容器を開けた際に放射性物質の入ったビニールバッグが破裂したといわれています。内部被ばくした作業員は、吸引を防ぐためのマスクをしていたはずですが、なぜ、放射性物質を吸引してしまったのか。大いに疑問です。
 再発防止のために、事態の経過や想定される原因についてできるだけ詳細な情報を公開し、教訓を導いて再発を防がなければなりません。
 1999年に東海村で起きたJCO東海事業所の臨界事故を思い出されます。JCO事故の最終報告書では、直接的な原因に「モラルハザード(倫理観の欠如)をエスカレートさせたこと」を挙げられました。単純作業とは言え、核燃料物質をバケツで取り扱うというずさんな作業の結果、作業員2人が亡くなりました。緊張感に欠けた作業が、恐ろしい結果を生むことを、原子力関係者はキモに命じたはずです。しかし、繰り返された今回の事故、原子力機構に同じような士気低下や慣れ、緩みがなかったのでしょうか?
 いかに優れた技術、設備を言えど、それを操るのが人間である以上、事故は絶対ないとは言えません。事故原因の徹底究明と充分な対策が望まれます。
 井手県議は、来週行われる常任委員会の審査で、この問題を取り上げる予定です。