日立市の渇水対策
日立市の水道は、久慈川からの取水に全面的に依存している。日立市は久慈川の最下流に位置しながら、流域で最大の人ロを抱える。その取水ロは、河ロから6.2キロ上流の常陸太田市下士木内町にあるため、海水のそ上によって水質の塩分濃度が上がり、取水制限に追い込まれる。4月から8月までに3度も、取水ロへの塩分そ上を防ぐための防潮フェンスを設置した。

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久慈川の防潮フェンス


 水需要の高い夏場、日立市では日量8〜9万トンが使用される。市内唯一の森山浄水場は日量10万3000トンの浄水能力があるが、施設の老朽化が進んでいる。

 十王ダムを水源とし、完成時には日量2万8960トンを処理する日立十王共同浄水場の建設が計画され、北部の共同浄水場と南部の森山浄水場からの二本立てで水道水の安定供給を図る予定がある。

 しかし、日立の人ロは20万人を割り込み、景気低迷で水需要の大幅増加は期待できない。

 日立十王共同浄水場建設にともなう費用負担は約70億円。これを25年間のうちに、市民の水道料金で返済しなければならない。

 日立市の水道事業は困難な道を歩まなくてはならない。

花貫ダムの「操作基準」を見直し
 一方、県北の渇水状況も深刻である。三度に及ぶ取水制限に追い込まれた花貫ダムは8月23日、過去最低の貯水率1%を記録した。その後の降雨で19.2%まで回復、危機状況からは脱した。しかし、8/31現在でも農工業用水は45%の取水制限が続く。

 花貫ダムの貯水を受けて高萩市内を横断する花貫川からは、8つの企業が工業用水を取水している。日本加工製紙高萩工場では、不安定な操業が2月上旬から7カ月も続いている。加工製紙では、チップから紙の完成品までを一貫製造しているが、製品の一部は他社から購入した中間製品のパルプを基に製造せざるを得ないのが状況に陥っている。

 農業関係では、8月中旬に稲作農家の一部に影響が出た。水不足で水田にひび割れが出来、川から直接ポンプアップをして急場をしのいだ場所もあった。

 県久慈水系ダム建設事務所の説明によると、今回の渇水には2つの要因があるという。

 第一の要因は雨不足。高萩市は毎年のように水害に悩まされる雨に恵まれた地域。しかし、昨年秋から小雨に悩まされ、平年の半分程度しか降っていない。地下水にも影響が出始め、水道に切り替える家庭が増えている。

 二番目の要因は、下流城での水需要が非常に大きいこと。周辺のダムに比べ倍の水利権が設定されているという。したがって、ほかのダムよりも放流量が多く、そのために、貯水率が低下する。

 ダムの運用を定めた「操作基準」によると、花貫ダムは最大200万トンの貯水能力を有するが、その3分の1の57万トンにとどめることになっている。

 洪水防止を眼目に、貯水量を抑えたために、渇水時の利水対策に弱点があったわけである。

 今回の渇水を契機に、県は本年度、貯水量を2倍に増やすため操作基準の見直しを開始した。ダム建設から23年が経過、河川改修がかなり進行したこともあり、渇水対策を含めた利水面に重点を移した「操作基準」を2年先を目処に策定する。




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