茨城県議会での「従軍慰安婦」削除問題を伝える新聞各紙



茨城新聞97/7/2
一面インサイド記者の目


県議会の「慰安婦」意見書

「削除」できぬ政治的主張

足りぬ議論、「教育に介入」

 今春採用された中学社会科(歴史)全教科書(七冊)に登場した「従軍慰安婦」関連記述について、県議会は19日、削除を求める意見書を可決し、20日付けで首相と文部大臣に提出した。慰安婦問題を巡っては、1993年8月、政府が約2年間にわたる調査結果に基づいて、慰安所と慰安婦の存在の事実を認め、「多くの女性の名誉と尊厳を深く傷つけた。歴史の教訓として直視し、研究・教育により記憶にとどめたい」との内閣官房長談話を発表している。県議会は、こうした政府の公式見解と正反対の意見書を可決。議会構成で圧倒的多数を占める自民党の賛成による今回の決定は、市民団体などから「教育現場への政治の介入」と批判の声が上がっている。(報道部・服部誠一)

論議なき採決

 自民党県連は、提出された「削除の決議を求め請願」(請願者・日本を守る茨城県民会議)の扱いについて、同政調会教育部会関連と判断し、潮田龍雄部会長、池田有宏副部会長に任せた。6月10日の受理後、請願は文教治安委員会に付託された。

 12日昼頃、請願を付託された県議会文教治安委員会の杉田良文委員長(自民)は、議事堂内の自民党議員控え室内で、「(請願は)採択で行こう」と提案。すでにメンバー間では請願について話し合いがもたれており、午後の自民党議員会でも異論はなかった。

 文教委(16日)の請願審査では、「日本の戦争教育は加害者的側面を伝えてこなかった」(井手義弘氏:公明・新進ク)「慰安婦記述は教科書検定を通っており、地方議会になじまない議論」(長谷川修平氏:民主)と反対意見が出された。しかし、賛成意見は出ないまま、6対2の賛成多数で採択。

 19日の本会議でも同じ光景が見られた。大内久美子氏(共産)の反対討論に対し、賛成討論はなかった。起立採決により、意見書はあっけなく可決された。

賛成・反対

 市民団体などの批判や抗議が続出し始めたのは、文教委の採択時以降。県地方公務員労組共闘会議などが相次いで声明を発表。「教科書に真実と自由を」県連絡会(神林昇代表)は、街頭活動などで「国際的に通用しない議論が政治の力関係で決められている」と厳しく批判した。

 一方戦争体験者が多い、自民党内では、「太平洋戦争の大きな枠組みの中で、慰安婦問題だけが突出して扱われている」と教科書記述への反発が当初からあった(杉田氏)という。

 可決された意見書は、削除を求める理由として 峩制連行」に国や軍が関与した証拠は未確認◆崕招外岼舵悄廚箸いΩ斥佞六実にない造語とし、「青少年の健全育成の立場から教育的配慮が欠如している」と主張する。

文部省によると、慰安婦記述削除を求める意見書は29日までに、全国20議会から提出されているが、都道府県議会レベルでは本県が唯一の提出者だ。

価値判断の素材

 「従軍慰安婦」について、教育現場でも戸惑いの声は確かにある。慰安婦問題を歴史・公民で授業化した県央の中学教諭(社会科)は、「慰安婦を説明することばに苦労する。はやしたてる生徒もいる。それで授業が舞い上がるのが怖い」とうち明ける。その一方、「賛否両論あるからこそ、生徒に戦争を自ら考えさせる絶好の素材になる」と同教諭。

 次の教科書改訂は4年後の2001年。21世紀に、新たな教科書で学ぶ子供たちは、今回の県議会決議をどう捉えるのか。結果的に教育界に政治的主張を持ち込んでしまった事実だけは、削除できないのではないだろうか。



朝日新聞
1997/6/17茨城地方版


中学歴史教科書の従軍慰安婦記述

削除の請願を採択

県議会文教治安委員会・意見書案も議決

 請願は、記述の削除と意見書の提出を求めるものと、文部大臣が教科書発行者に対して訂正を求めるよう要望決議することをもとめる二件。同委員会十人のうち、六人が賛成、二人が賛成、欠席が二人だった。

 反対した井手義弘委員(公明・新進クラブ)は討論で、「日本が加害者となった事実は、親から子供へ伝えてこなかった。歴史の事実として、後代に残すことが必要だ」と述べた。

 また、長谷川修平委員(民主)は「従軍慰安婦そのものについて、数々の証言によって事実だと考えられる。子供たちに戦争はこんなにひどいものだということを教えるために、教科書に載せる必要がある」と述べ、反対した。賛成した委員の討論はなかった。

 賛成した請願紹介議員の池田有宏委員(自民)は、委員会後「今までの歴史を把握した限り『従軍慰安婦』というのは、マスコミの人たちがつくった言葉。証言している人たちの言うことも信じられない」と話した。(以下略)



読売新聞
1997/6/17茨城地方版


従軍慰安婦・記述削除要求へ

県議会政府へ

(前半略)
 委員会では、井手義弘(公明・新進ク)、長谷川修平(民主)両委員が「数々の証言で、従軍慰安婦問題は事実だったと考えられ、歴史的評価を載せるのは当然」などと述べ、削除に反対する姿勢を示したが、自民党の他委員は意見を示さず、賛成多数で意見書案を採択した。

 委員会終了後、杉田光良院長は「(従軍慰安婦は)あったかどうかわからない。(中国などとの)関係悪化は想像されるが、日本国民としての立場から採択した」と述べ、意見書を教科書出版会社にも「参考資料」として提出する方針を明らかにした。



産経新聞
97/06/17茨城地方版


「従軍慰安婦」削除 茨城県会委と水戸市会も採択

 茨城県議会(川井一郎議長)は十六日開いた文教治安常任委員会で、「日本を守る茨城県民会議」(青木芳郎議長)などから提出されていた中学校社会科(歴史)の「従軍慰安婦」記述の削除を求める請願書を賛成多数で採択した。十九日の本会議で採決される予定で、県議会では全国で初めて首相と文相に削除を求める意見書を出す。

 全国都道府県議会議長会によると、従軍慰安婦問題で中学校教科書から削除を求めることについて採択しているのは岡山、鹿児島の両県議会となっている。



茨城新聞
1997/6/20一面トップ


「削除」意見書を可決

教科書の「従軍慰安婦」記述

県議会・都道府県議会で初

970620sinbun 第二回定例県議会は最終日の十九日、本会議を開き、今春から採用された中学校社会科教科書の「従軍慰安婦」関連記述の削除を求める意見書を可決した。同意見書は内閣総理大臣および文部大臣あてに提出される。「従軍慰安婦」関連記述の削除を求める意見青が可決されたのは、都道府県議会レベルでは初めて。意見書が可決されたことに対し、共産党県委員会(山田節夫委員長)、新日本婦人の会県本部(武藤きよ子会長)、県地方公務員労働組合共闘会議(矢田部興治議長)は同日、抗議声明文を発表した。

 中学社会科教科書に掲載されている「従軍慰安婦」関連表記問題では、記述の削除を求める請願と、意見書提出との分離採決で行われ、六十二人の全県議が参加。自民五十四、無所属一の計五十五人が「削除」に賛成。公明・新進ク三、民主三、共産一の七人が反対し、それぞれ賛成多数で可決された。

意見書は

教科書に記述されている「強制連行」については、政府の調査では、国や軍が関与したことを実証する証拠は確認されていない

「従軍慰安婦」という言葉は当時存在せず、事実のない造語にすぎない−とした上で、青少年健全育成の立場から証拠のない問題提起は教育的配慮に欠ける

などとし、内閣総理大臣、文部大臣に対し記述削除を要望している。

 採決に先立って、共産党の大内久美子議員が「従軍慰安婦問題は政府も公式に認めている歴史的事実であり、(同問題を)歴史教育に取り上げることは政府自身の方針との反対討論を行った。

 また、同請願が採択され意見書が可決されたことに対し、共産党県委員会、新日本婦人の会県本部などは同日、「(従軍慰安婦問題を)地方議会の場で政治的圧力によって削除を求めようとすることは、憲法と教育基本法の理念と原則にそむき、断じて許すことはできない」との抗議声明文を発表した。

 この日の議会傍聴には、一般県民など四十人余りが訪れたが、傍聴した二十四歳の会社員は「地方議会の議題になる必然性が全くない」、その妻(ニ七)も「『従軍慰安婦問題』は極めて大事な問題なのに、簡単に決められてしまい、拍子抜けした」と語り、団体役員の男性(五四)は.「歴史的事実を抹消しようという暴挙」と怒りをあらわにしていた。



茨城新聞
97/6/20社会面


従軍慰安婦「削除」可決

教育現場に広がる困惑

授業化悩む教師・自粛傾向に危惧の声も

 県央の社会科教諭は二年ほど前、中学二年の歴史授業で「慰安婦」と黒板に板書し、生徒に意味を尋ねたとことがある。「看護婦さんのこと」と首を傾げられたのが印象的だったという。言葉を選びながら「兵隊の性的処理をする人たちのことだよ」と説明した。同教諭は、「(削除の)議会決定が授業を束縛することにはならない。むしろ賛成反対の意見があるからこそ生徒自ら戦争を考えさせる絶好の素材になるはず」と話す。

 土浦市内の学校関係者も「従軍慰安婦だけを取り立てて授業で追求することはない。言葉の削除があっても、生徒たちは学習を通して戦争の悲惨さを学ぶ」と冷静に受け止める。

 その一方、鹿行のある社会科教諭は「慰安婦問題も含め、戦争を伝える授業については県内でまだまだ議論不足のよう。今回の議会決定は、教師や学校の考え方にますます混乱をきたす」と指摘した。

 今回の意見書提出決定は自民党議員の圧倒的多数によって可決された。政治的要素も多分に含まれていることから、各地域の中学校現場で、今後、近現代史教育の自粛傾向が広がるのではと危惧する声もある。

 水戸市内の教育関係者は、中学の近現代史授業は、二年生の学期末近くに追い込みがちで、県立校入試やテストにも出題されにくい分野、と指摘し、「各地域によって戦時事情も異なり、「(近現代史は)ただでさえ授業が難しい。今後ますます、教員の意識は狭められるのでは」と危機感を募らせた。



新いばらき新聞
1997/6/20社会面


県議会・意見書の可決は全国初

自民などの賛成多数

慰安婦記述「削除」問題・市民団体は反発

 意見書は、ゞ飢塀颪傍述された「強制連行」は政府の調査では、国や軍の関与を証明していない◆崕招外岼舵悄彭言う言葉は当時存在せず、事実のない造語に過ぎないとして、両記述の削除を求める二請願をほぼ原文のまま意見書化したもの。

 本会議で、杉田光良文教治安常任委員長の同委員会における採択など委員会報告に対し、大内久美子氏(共産)が「削除」請願文中に「全教科書(七社)に従軍慰安婦や強制連行などの記述があるとしたが、従軍慰安婦の記述は三社のみ。強制連行の表記は一社もない。事実誤認の意見書がそのまま採択されれば、本義会の名をはずかしめる」などと指摘し、「歴史の事実をゆがめ、戦争の根本的反省のもとに生まれた憲法の理念に反する」などと反対討論した。

 起立採決の結果、公明・新進クラブ、民主、共産の七氏を除く全員が賛成した。

 議会閉会後、「削除」請願に反対した井手義弘氏(公明・新進クラブ)は「親から子へ、戦争被害としての体験は伝えられるが、同時に加害者であったということも、責任を持って語られなくてはならない」と述べた。

 また、今橋孝行氏(民主)は「政府の対応からみれば、この問題は歴史的事実であり、一人一人の議員の認識と良識が問われた。自民党県連は党議拘束を外して各議員の意志表示をさせるべきだった」と話した。(以下略)



毎日新聞
1997/6/20全国社会面


「教科書からの慰安婦削除を」茨城県会が意見書採択

 茨城県議会は19日、今年度から中学の歴史教料季に盛り込まれた従軍慰安婦の記述の削除を求める意見書を採択し、首相と文相に提出することを決めた。文部省などによると、この問題に関する都道府県議会からの意見書提出は初めて。

 意見書は「従軍慰安婦や強制運行の記述は事実とは認め難い。国の関与の証拠もなく、中学生に提示するのは教育的配慮に欠ける」としている。

 同県議会には記述削除を求める2件の請願が出ていた。県議会は請願と意見書を自民党と保守系無所属議員の賛成多数(54)で採択した。公明・新進、民主、共産(計7)は反対した。

 従軍慰安婦の記述の削除を求める請願・陳情については今年3月までに岡山、鹿児島両県議会が趣旨採択をしたが、意見書などは提出していない。

 茨城県教職員組合の酒井富子委員長は「事実を子供に教え、判断力を養うことが大切」と意見書に反論している。【橋本 明子】



読売新聞
1997/6/20茨城版


県議会・削除求め意見書可決

中学校の教科書の従軍慰安婦記述・自民だけが賛成


 中学校の社会科教科書から「従軍慰安婦」の記述削除を求める意見書について、県議会は六月定例会最終日の十九日、本会議で審議し、自民党の賛成多数で原案通り可決した。公明・新進クラブ、民主党、共産党は反対した。

 可決したのは、「中学校社会科教科書の錯娯の削除に関する者見書」で、「従軍慰安婦」の記述に関し、ゞ制連行に国や軍が関与したことを実証する証拠がない⊇招外岼舵悗箸いΩ斥佞蓮大戦当時存在しない・・・と指摘、首相と文相に教科書からの削除を求めている。

 これに対し、大内久美子氏(共産)は本会議で、「歴史の事実をゆがめ、戦争の根本的反省のもとに生まれた憲法の理念に反する」などと反対討論した。



毎日新聞
1997/6/20茨城版


市民団体・他県への波及、憂慮

「抹消は憲法理念違反する」

「従軍慰安婦」記述削除県議会が意見書採択

県連絡協・全県的な集会開催へ

 県議会が19日、全国で初めて従軍慰安婦に関する中学教科書の記述削除を求める意見書を採択し、国への異例の提出を決めたことに対し、これに反対する政党や市民団体が「削除の請願を継続審議にしているほかの県議会に波及する恐れもある」と、批判の声を上げるなど波紋が広がった。 【橋本 明子】

 この日の県議会本会議では、削除を求める請願を採択した一六日の文教治安委員会と同様、公明・新進クラブ3、民主3、共産1の計7議員が意見書採択に反対したが、自民、無所属の計54人の圧倒的多数の賛成で可決した。

 これについて、川井一郎議長は「会議規則に従っただけ」。賛成した自民党議員は「教育の在り方を考えるのは政治の使命。関与ではない」と強調した。

 また、削除の請願を県議会に提出した坂本徳次さん(78)=潮来町潮来=は「慰安婦は強制連行されたのではない。事実を曲げて教える戦後教育が、戦前より優れているとは思えない」と話した。

 これに対して、反対票を投じた大内久美子議員(共産)は、採決前に行った反対討論の中で「従軍慰安帰の存在自体を抹消しようと、いう請願は憲法の理念に反する」と訴えた。

 一方、削除の請願を採択しないよう求める請願を出していた「教料書に真実と自由を」県連絡会は、本会議での採択を受け「今後、学習会や講演会などを行う。終戦記念日の8月15日には、韓国から元従軍慰安婦を招き、全県的な集会を開催する」と、運動を統けて行く方針を明らかにした。

 今回の採択について、橋爪大三郎・東京工業大学教授(社会学)は「政治権力に相当する県議会が、教科書の内容について『教えるな』というのは、従軍慰安婦問題の是非は別にしても望ましいことではない。記述を削除する、しないではなく、資料や討論を増やすなど、歴史の学び方を根本から組み替える必要があるのではないか」と話している。

県内で使われている教科書の従軍慰安婦の記述

慰安婦として戦場の軍に随行させられた女性もいた。(日本文教出版)

従軍慰安婦として強制的に戦場へ送りだされた若い女性も多数いた。(東京書籍)




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