茨城県の空き家件数の推移
 平成25年に総務省が実施した住宅・土地統計調査によると、全国の総住宅数は前回調査より304万戸増えた6063万戸であり、総世帯数の5246万世帯に対し住宅ストックが量的には充足していることが示されています。つまり、総世帯総数より、住宅総数の方が多い状態です。
 空き家の数は820万戸であり、空き家率は13.5%と前回調査より0.4%上昇しています。
 また、「賃貸用又は売却用の住宅」及び「二次的住宅」を除いた「その他の住宅(一般の住宅)」の空き家の数は318万戸に上っており、総住宅数に占める割合は5.2%です。その数は過去20年間で約2倍に増加しています。
 茨城県の空き家の状況は、住宅総数の約14.6%を占める18万4700戸です。
 年々増加している空き家の中には、適切な管理が行われない結果として安全性の低下、公衆衛生の悪化、景観の阻害等多岐にわたる問題を生じさせ、ひいては地域住民に深刻な影響を及ぼしているものがあり、今後も数が増加すれば、それがもたらす問題が一層深刻化することが懸念されます。
日立市空き家対策条例施行
 日立市では、空き家等への対策を進めるため、2016年12月に「日立市空家等対策の推進に関する条例」(空き家条例)を制定しました。この条例は、今年(平成29年)4月1日から施行されました。
 空き家条例の目的は、適切な管理が行われていない空き家等が、地域の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることから、所有者、市及び市民等の責務などを定めて、市民の生活環境の保全を図ります。併せて空き家等の活用を促進することを定め、安全・安心で活力のある住環境を形成することを目的としています。
  • 所有者等の責務:所有者等は、所有する空き家等に関して、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切な管理を行わなければなりません。
  • 市民等の責務:市民等は、市が実施する空き家等に関する施策に協力するほか、適切な管理がされていない空き家等の情報を市に提供することとしています。
  • 日立市の責務:日立市では、所有者等に対して、空き家等の適切な管理や利活用についての助言や情報提供を行います。適切な管理が行われていない空き家等に対しては、助言、指導により、所有者等に対して必要な措置を求めます。また、倒壊など地域に著しく悪影響を及ぼすおそれのある空き家等を「特定空家等」に認定し、助言・指導に加えて勧告、命令、代執行を実施します。危険が差し迫っていると判断された場合は、空き家条例に基づき、緊急安全措置として市が必要最小限の措置をすることにより危険を回避し、その費用は所有者等に請求します。

 日立市が昨年5〜8月にかけて、市内全域で実施した実態調査によると、2878戸の空き家が確認されました。空き家率は4.1%に達しています。20件に1件近くは空き家ということになります。このうち、町内別で最も空き家が多かったのは久慈町の244戸で、空き家率が最も高かったのは白銀町の8.29%でした。全域の家屋の状態は「危険」「著しく危険」が合わせて12.8%でした。

山側団地の高齢化率・空き家率
深刻な山側団地の超高齢化
 空き家を巡り、その対策が最も急がれるのが山側の団地群です。日立市によると、山側には1960〜70年代にかけて開発された13カ所の大規模団地があり、空き家率は4.8%にとどまるものの、高齢化率が市平均の約1.4倍に当たる42.6%に上ります。空き家は今後、急激に増加するとみられます。
 昭和50年代までに完成した住宅団地では少子高齢化が進行しており、平成27年の市内の高齢化率29.2%を大きく上回っています。
 山側住宅団地における高齢化率を見ると、塙山団地では51.4%、金沢団地では50.5%でいずれも50%を超えており、次いで山の神団地でも48.5%と50%に近い高さになっています。
 空き家率では、実態調査結果による市内全体の平均4.14%に対し、山の神団地が11.5%と突出して高いものの、他の団地では市内他地区とほぼ同程度の率となっています。しかし、高齢化率を考慮すると、近い将来、急激な空き家の増加が懸念されています。
 山側住宅団地の意向調査では、住み続けたいと考えている居住者が61%と多く見られましたが、高齢化が進んでいることから、今後、急速な空き家化が想定されます。また、18%の居住者は、利便性が高いまちなかの住宅やサービス付き高齢者住宅への住み替えなどを考えています。
 その一方で、若者・子育て世代は、賃貸住宅等から広い居住環境への住み替えを求めており、この両者のマッチングを図ることで、高齢者のまちなか居住による安全・安心で利便性の高い住環境の実現が図られるとともに、山側住宅団地では空き家発生を抑制し、多世代がバランス良く浬在した健全な住環境の持続を図ることができると考えます。

日立の山側団地活性化への4つの提案

高齢者世代と子育て支援世代の住み替え促進
 山側団地に対する短期的な取組としては、高齢者、子育て世代の住み替えを促進する仕組みの検討を行います。
 一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)では、高齢者の住み替えに有効な「マイホーム借上げ制度」を実施しており、また、常陽銀行では、この制度と連動したリバースモーゲージローン「住宅スタイル」を実施しています。
 また、住宅金融支援機構(JKF)では中古住宅の購入とリフォームを一体にしたローンを実施しています。
 こうした、山側住宅団地の中古住宅流通に有効な制度について情報収集、広報・周知を行います。また、より有利な仕組みの開発を促します。

空き家をコミュニティー施設に活用
 空き家を、地域集会所や井戸端交流サロン、コミュニティビジネスの拠点やシェアハウス等として活用することが考えられます。
 空き地は、新築住宅用地はもとより、隣接住宅の拡張用地やポケットパーク、狭あい地区での共同駐車場、市民農園などで活用したりすることで地域の活力を高めることができると考えられます。
 空き家をUIJターンの受け皿にすることも有効です。そのため、日立市が積極的に関わる“空き家情報バンク”を早急に整備します。

公共交通機関の充実
 山側団地の利便性を高める政策の展開も不可欠です。そのためには、高齢化に対応する公的な交通機関整備が必要です。山側団地と市街地を結ぶコミュニティーバスやデマンドタクシーなどを充実させることが重要です。

買い物・行政手続き拠点整備、ATMなどを充実
 買い物をする場所を確保することが大事です。高齢化や人口減少により、小売店舗の採算割れが起こり、従来あった店舗が徹底を余儀なくされています。行政が空き家等を活用して、テナント形式の店舗を安く提供し、小売機能を存続させる政策導入を検討すべきです。
 公共関与の小売店舗が確保できれば、マイナンバー制度を活用して住民票や印鑑証明書などの公的申請の窓口や金融端末(ATM)などを設置することも可能となります。