平成11年度 第1回 定例県議会 予算特別委員会での質疑質問原稿版

県議会大会議室
平成11年3月9日


中期的な財政収支見込みと行財政改革の推進について

 平成11年度の県予算は、予算額そのものが戦後初めて前年度を下回る「マイナス型」となりました。

一般会計の総額は、1兆769億7200万円となり、98年度当初を約460億円下回った緊縮型予算となっています。借金にあたる県債の残高は、初めて一般会計額を上回り、1兆2538億円にまで膨らみました。一般家庭なら借金総額が年収を超えたようなものです。

 金利を加えた返済総額は1兆8000億円に迫っています。県債の金利だけでも一日約1億円に上る計算になります。

 予算は、前年を4.1%下回わりましたが、公債費や人件費などの義務的経費は102.0%と増え、実質的な県税収入も前年の87.9%とかなりの落ち込みとなっております。

また、県の貯金である一般財源基金は、338億円取り崩され、平成11年度末残高は、217億円にまで減少します。

 まさに、政策的に使える予算が減って、義務的に支出しなくればならない経費が増える、「財政の硬直化」が急速に進んでいる状態です。

ちなみに、財政の健全度をはかるモノサシである経常収支比率は、平成3年度の決算で69.9であったのに対し、平成9年度には90.6%にと悪化しております。この傾向は、平成10年度決算でも更に悪化すると思われます。

 さて、こうした厳しい状況の中、県は昨年3月、新しい行財政改革大綱を決定しました。平成10年度から12年度の3年間で、県債や一般財源基金からの繰り入れに依存しないで、単年度収支がおおむね均衡する財政構造の実現を目指すことを大綱にうたい、厳しい行財政改革に努められて来たわけです。

 しかし、予想を上回る県税収入の落ち込みなどによって、初年度より、その財政収支見通しは大きく改訂せざるを得ない状況に陥っていると思われます。

 例えば、財政収支見込みで11年度の地方税額を4100億円と見込んでいますが、当初予算では、3674億円しか見込めない状態になっています。反対に、県債発行高は、1100億円と見込んだものが、1296億円に増えています。

 そこで総務部長に、まずお尋ねいたします。

 行財政改革の基礎的な物差しとなる「財政収支見通」は、毎年度適時見直しを図ることになっておりますが、昨今の厳しい財政状況を勘案して、早急の見直しが必要であります。いつまでに見直しを行い、その結果をいつ頃、県民に公表されるのか、お伺いいたします。

 <総務部長答弁>

 さらに、財政収支見込みの試算に当たって、現在は名目の経済成長率を1.75%と見積もっておりますが、平成9年、10年と2年続けての実質成長率マイナスを受けて、より厳しい試算を行う必要があると考えます。現に国の今年度の成長見込みは、実質で0.5%であります。物価が安定しております昨今の状況では、名目でも1%以下の成長が目標値になっていると認識しています。

しからば、県の財政収支見込みの名目経済成長率1.75%も、あまりに楽観的な数値であるように思われますが、総務部長のご所見をお伺いいたします。

 <総務部長答弁>

また、経済対策を目的として増発した県債の償還が平成12年度以降本格化すると思われ、公債費の増加が予想されます。

 ワールドカップ開催や高校総体など、茨城県は平成14年ごろを頂点とする大型プロジェクトが目白押しで、投資的経費を急に削減することが出来ない状況でもあります。

更に、一連の景気対策で景気が回復基調に乗ったとしても、企業の業績が上向き利益が生まれ、税収が上がるためには、1年から3年程度のタイムラグが予想されます。つまり、税収の延びはすぐには期待できないわけです。

 一方、経費歳出の切りつめは、平成12年度までの行政改革大綱の実施により、かなりの程度行われていると確信いたしますと、しぼる贅肉がない状態になると思われます。

こうした点を考慮に入れると、私は、「平成13年度以降の財政運営の方が、現状より更に困難になるのでは」と、危惧するものです。

 現在、県独自の税収が豊かで、国の交付税等の収入割合が低かった神奈川県や、愛知県、東京都、大阪府などがすでに危機的状況に陥っています。

 特に、神奈川県では、自治体の倒産に当たる財政再建団体に転落せぬよう、涙ぐましい努力が続けられています。来年度予算で神奈川県では、2900億円の財源不足が生じます。全職員のボーナスカットなどで人件費250億円を圧縮。県債のうち「縁故債」の償還期間を30年間から60年間に延ばし、280億円を浮かせる。県有財産を売った後、賃借して使う「リースバック方式」も徹底して活用する。今年度には職員住宅をおよそ270億円で売却しました。新年度も、児童遊園地や海岸砂防地の跡地などの資産運用で、190億円ほどを調達する。といった、まさに綱渡りの財政運営が続けられております。

 しかし、こうした状況は対岸の火事ではありません。

 静岡県の石川知事は、「地方財政は沈没中のタイタニック号と同じ」と発言しています。一番最初に沈んだへさき部分が神奈川や東京、今、他の県は船尾のところにいるが、そのうちに沈没するのは見えている」とまで発言しております。

 私は、茨城が財政的な正念場を迎えるのは平成13年から15年にかけてであると懸念しております。この3月に竣工する新たな県庁舎を、売却してリースバックで借用するなどと言う深刻な事態さえも想定するものです。

 そこで、一刻も早く「平成13年度以降の財政健全化に向けての方策」を検討し、県民への理解を求める必要があると思います。

中期的視野に立った財政健全化策の検討はどのように進められるのか、重ねてお聞きします。

 <総務部長答弁>

 次に行財政改革の進捗状況についてお伺いいたします。

我が公明党では、この3月2日に全都道府県と政令指定都市に関する行政改革実態調査結果をとりまとめ、発表いたしました。

 この調査によりますと、一般会計における人件費の割合の抑制が不十分である。外郭団体の抑制が不十分である。民営化、民間委託等の推進が重要である。等の結果が報告されております。

さて、この調査結果で茨城県に関する内容をみてみますと、

職員数の増減を、平成元年度を100として平成10年度の指数で比較した項目では、本県の指数は94.4となり、91.8の神奈川、92.9の大阪、93.9の東京に次いで、全国4番目の人員削減を達成しております。

 人員の削減という最も困難な課題に、一定の成果を出しているという結果が出ております。半面、外郭団体については、その長の給与などが全国的にも8番目に高いなど、見直しが遅れている傾向がみられました。

こうした結果をもとに、総務部長に2点お伺いいたします。

一点目は、人件費の削減への取り組みの状況と、今後の具体的な行動計画をお聞かせいただきたいと思います。

 そして二点目は、外郭団体、いわゆる出資団体を含めた具体的な行革目標を明示すべきだと思いますが、総務部長のご所見をお伺いいたします。

<総務部長答弁>

 私は、こうした危機的状況を乗り越えるためには、知事の力強いリーダーシップが必要だと思います。更に、単に県レベルでの対応では限界に達しているというのが実感です。

 私は今後、法定外目的税や法定外普通税の積極的な確保が必要になると思います。更に、国に対して安定的な地方財源の確保を強く要望すべきです。例えば、消費税の地方分1%を2%に増やすこと。また、法人事業税に「外形標準課税」を導入して、安定的税収確保に努めるべきだと考えます。

また、行財政改革も更に進める必要があります。

人件費の圧縮、業務の民間委託、PFIなどの積極活用、そして公共工事の費用の縮減などその課題は多いと思います。

 こうした点もふまえて、地方財源の確保と行財政改革推進に対する、知事のご決意を伺うものです。

<知事答弁>

常陸太田合同庁舎の新築について

 次に、常陸太田合同庁舎の整備についてお伺いいたします。

常陸太田合同庁舎の整備は、来年度予算に、新規の債務負担行為として事業化されました。

 具体的内容は、平成13年度から25年間、建設予定費29億円あまりと事務経費、利子の合計を分割して支払うという内容です。

 私は、老朽化した庁舎の建て直しの必要性を否定するものではありませんが、この債務負担行為、つまり分割またはリース方式による建設手法について、何点かご質問いたします。

 その第一は、なぜ一般の一般財源と県債を活用した建設計画ではいけないのか、一般財源を活用して25年間費用を払い続けるのであれば、それは固定的経費の増加に他なりません。実質的には、借金の増加と同じではないか?との批判を免れません。

 どうして、分割またはリース方式を導入されたのか理由をお伺いいたします。

更に、民間活力を活用した手法で、建設費用が圧縮されると言うのならば、あらかじめ開発公社に建設をさせることを前提にしたこの事業に矛盾を感ずるものです。

本来であれば、建設・管理を委託する業者選定の段階から、市場原理が働くシステム作りを検討すべきだと思います。

 こうした点を含めて、合同庁舎建設計画について、総務部長のご説明をいただきたいと思います。

 <総務部長答弁>

新県庁舎のOA化推進について

 この26日は、新県庁舎の竣工式が行われ、県政に新たな歴史が刻まれます。

この県庁舎は、総工費800億円余りで、現時点では東京都庁に次ぐ規模と最新の設備を有する庁舎となります。

 先程は、行財政改革の必要性を述べさせていただきましたが、人件費の圧縮を考えるとき、今まで3人でやってきた事務処理を2人でこなすようなシステム作りを行う必要があります。

人件費の削減が、単なる人減らしで終わるならば、そのしわ寄せは県民サービスの低下につながってしまいます。

 その意味で、行革推進のためには、事務処理の効率化がポイントになってきます。

新県庁舎は、最新のインテリジェントビルといわれておりますが、企画部長に、事務の効率化を支えるOA化、特にLANの整備を中心にお考えをお聞かせいただきたいと思います。

<企画部長答弁>

 今のご答弁をお伺いいたしまして、一つだけ重ねてご質問をさせていただきます。

 それは、LANの整備に当たって、メールサービスが大きな役割を担ってくると思います。

しかし、お聞きするところによると、このメールサービスの単位は係り単位グループ単位であるとのことです。職員一人一人にIDが配布される体制が出来ないと聞き及んでいます。

 私は、こうした中途半端な体制では、LAN構築の目的はとうてい達成できないと思います。つまり個人のIDが設定されていないと言うことは、個人情報のやりとりは、このシステムでは出来ないと言うことです。人事に関するメールや、個人的な上司への提案や報告のメールは、このシステムでは使えないと言うことになります。

 まさに、「仏作って魂入れず」の状態です。IDの設定には相当の予算がかかると思われますが、早急に本格的なメーリングシステムの構築する必要があります。企画部長のご所見をお伺いいたします。

<企画部長答弁>

 新県庁舎の課題が出ましたので、旧庁舎の暫定使用に関する問題に触れたいと思います。旧庁舎には、福祉部が所管する4つの相談センターが入所することになっています。

ご存じのように旧本館は、歴史的価値は高い建物ですが、老朽化のために様々な問題もあるのが事実です。またその相談施設を活用する県民の立場から考えると、暫定使用といっても、不便であったり使いづらい施設であっていいわけがありません。

 そこで、2点お伺いいたします。

障害をもった方やお年寄りが多く利用すると思われますので、バリアフリーの立場からどのような対応をお考えでしょうか?

 更に、相談者のプライバシーを守る体制はどのようにお考えでしょうか?

総務部長のお考えをお聞かせください。

 <総務部長答弁>

 また、私は、旧本館に次のような施設の整備をご検討いただきたいと思います。

 その第一は、県内のボランティアやNPO等のとりまとめや情報交換の拠点の整備であります。

 第二には、障害者やお年寄り、ボランティアなどがパソコンを勉強できる施設の整備であります。

 私は、旧本館を暫定使用とはいえ、福祉と文化の拠点として有効に活用していただきたいと念願するものです。

 総務部長のご所見をお伺いいたします。

 <総務部長答弁>

茨城学園の園児死亡について

 最後に、茨城学園の園児の死亡事故についてお伺いいたします。

 2月21日、県立の児童の自立を支援する施設・茨城学園の園児が急に倒れ、国立水戸病院に搬送されました。

 誠に残念ながら、その児童は25日に、「急性硬膜下血腫による脳ヘルニア」で亡くなりました。

 この場をお借りしまして、ご冥福を心からお祈りいたすものです。

 茨城学園を所管する福祉部長から、死亡に至る経緯をご説明いただきたいと思います。

 <福祉部長答弁>

 この児童が亡くなったことに、事件性があるか否かは、現在警察でも捜査中であるとのことですので、ここでは触れません。

 しかし、福祉部がこの事実を公表されたのは、児童が亡くなられて6日もたった後でした。なぜ、事実の公表が遅れたのか、または遅らせたのかその理由をお聞かせください。

 <福祉部長答弁>

 実は、この茨城学園については、平成6年の第1回定例議会の同じ予算特別委員会で、我が党の足立議員が触れております。

 その際、入園している児童を本当に理解して、指導することの重要性を強調しております。

 更に、茨城学園の施設が老朽化しているとの指摘を具体的に行い、その改善と養護教員等の配置などのマンパワーの充実を提案しております。

 それから5年たち、またこうしたショッキングな出来事が起こったわけでありますが、そのときのご提案は、今どのようになっておりますでしょうか。

 福祉部長にお聞きします。

 <福祉部長答弁>

 大事な子供さんの死を無駄にすることなく、茨城学園を社会に広く開放し、その整備を進めていただきたく重ねて要望いたします。




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