新築住宅の着工数
 アパートやマンションなど賃貸物件の建築が増えています。井手よしひろ県議が住む日立市でも、人口はここ10年来、毎年2000人近く減少しているにもかかわらず、賃貸物件の建設は堅調です。これは、保有する土地に賃貸物件を建設し、相続税などの節税を図ることが個人が増えているためです。賃貸住宅メーカーによる執拗な営業活動や地方銀行・農協などの融資競争も過熱していることも、その要因と考えられています。「賃貸不動産バブル」との懸念も出始めています。賃貸物件が増えても、借り手は増えていない(むしろ減っている)わけではですので、想定通りに借主を集められなければ、貸主の返済計画が破たんし、大きな社会問題となる可能性は否定できません。

 国土交通省の資料によると、平成28年度の全国の賃貸物件(貸家)の着工数は、前年度と比べて11%増の43.3万戸となっています。平成23年度に30万個を下回ったものが、右肩上がりで増えています。特に、27年度に大きな伸びを示したのは、相続税の見直しによって、課税対象が広がり、新たに納税義務者が増えたことが指摘されます。
 土地を相続する場合、更地よりもアパートなどの賃貸住宅を建てたほうが評価額が下がります。さらに、金融機関から賃貸物件の建設費を借りた場合、その借金分を相続分から相殺することができるため、二重の意味で相続税を節約できます。
 また、賃貸住宅メーカーの提案する「一括借り上げ」方式も、貸し手には魅力的なことばです。これは「サブリース契約」と呼ばれる方式であり、メーカーが完成した部屋を一括して20〜30年借り上げ、入居者に転貸するという仕組みです。建て主にとっては、入居者を募集する苦労もなく、長期間安定した収入が得られるという安心感もあり、このシステムが広く広まっています。
 ただし、ここに落とし穴があります。サブリース契約には、通常借主がもくろみ通り集まらなかった場合は、契約を見押すことができるという約定が含まれています。家賃保証を減額された土地所有者が、金融機関への返済に行き詰まるというケースも発生しています。詳しい説明を賃貸住宅メーカーから聴いていなかったと消費者センターなどに相談しても、建て主は個人事業者として契約を行うため、いわゆる消費者保護の対象とはなりません。法律に詳しくない建て主、高齢の建て主にとって、サブリース契約による賃貸物件の契約にはリスクを伴うことを十分に理解すべきです。

 7月10日に日本銀行が公表した今年6月の貸出・預金動向によると、銀行や信用金庫による貸し出しの平均残高は、前年同月比で3.3%増の513兆円でした。69か月も連続して前年を上回っているのは「アパートローンを含む不動産向け貸し出しの伸びが寄与している」と、日銀は分析しています。
 しかし、前述のようにアパート建築が”ミニバブル”の状況であるなら、賃貸住宅向けの融資が急増する可能性もあります。同じく日銀が4月に発表したレポートでは「これまで以上に審査や管理を綿密に実施することが重要」と、警鐘を鳴らしています。日銀は、融資を実行する際に、その物件周辺の家賃相場や入居率などの調査を行っていない事例も目立つ言われます。
(このブログ記事は、7月11日付読売新聞の記事を参考に掲載しました)