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ガイアックス課税問題の経緯と井手よしひろの見解

 アルコール系燃料(商品名:ガイアックス)の課税問題についての茨城県議会での議論の経緯、県議会議員井手よしひろ(以下、私と記載させていただきます)の見解をまとめさせていただきました。

はじめに

 ガイアックスへの課税問題は、2000年3月8日の県議会で初めて取り上げられました。

 私は、この年の1月末、旧知の友人からアルコール系燃料の話しを初めて聞きました。

 県内の有力ガソリン販売店が、経営の悪化から傘下の7カ所のガソリンスタンドをアルコール系燃料の販売会社(関東ガイアックス、本社:東京都)にスタンドの土地や建物、施設などを一括して売却し、新たにアルコール燃料の販売を始めるとのいう話しでした。

 このガイアックスは、ガソリン車にそのまま給油でき、環境にも大変優しい燃料であると説明を受けました。

 そして、税金の問題に結論がでていないため、無税で販売をされる。ガソリンと同じように石油揮発油税を課税されたのでは、経営的にアルコール系燃料は販売できない。と付け加えられました。

 私はこの話しを聞き、2月初旬、県の税務当局からのヒアリングを行いました。

 当初、県税当局の説明では、自動車燃料の課税は、燃料に含まれる炭化水素の組成によって、石油揮発油税が課税されるか軽油引取税が課税されるかが決まる。県でも、アルコール系燃料の販売店が1999年12月に開業しており、早々に組成の調査等を行っているとのことでした。

 実際的には、国税庁が国税である石油揮発油税の課税対象にならないことを明示され、その後に地方税としての石油揮発油税の課税を検討するとの見解が説明されました。

 私は、ひたちなか市を中心にアルコール系燃料を販売するスタンドがオープンするのを待って(2000年3月1日)、実際にその燃料を自家用車に給油し、実感としてアルコール系燃料の使用感を検証いたしました。

 その時の感想は、全くガソリンと混ぜて使用しても違和感はないと感じました。(私の自家用車は、日産セフィーロ2000CCDOHCエンジンです)。本当に環境に優しい(二酸化炭素や窒素酸化物を低減できる)のであれば、行政も含めて普及策を積極的に展開すべきだと考えました。

平成12年第1回定例県議会での議論

 こうしたアルコール系燃料を販売する側の意見や使用実感をもって、3月度の定例県議会を迎えました。

 現在県の財政は、法人税の減収や県債の増加によるその返済額の増大、保健医療などの義務的経費の増加など、危機的状況に陥っています。

 そうした中、貴重な税財源である軽油引取税は、悪質な脱税や課税のがれが多発しています。

 アルコール系燃料が、国税である石油揮発油税でなく、県税の軽油引き取り税が課税されることに、私は二重の意味で賛成をしていました。

 それは、県(都道府県)の貴重な税財源になるということと、揮発油税(53円80銭)に比べ軽油引取税(32円10銭)は割安であり、環境負荷が少ないアルコール系燃料の普及にはプラスになると考えたからです。

 私は、そうした考えから、3月8日の県議会一般質問の再質問でこれらの考え方を要望として県執行部に提案しました。

 直後から、多くのみなさまから賛同の声、ご意見をいただきました。ガソリン販売業者の方からは、評価が定まらないものたいしての発言は慎重であるべきだとのご注意もいただきました。

 しかし、私に発言により、県内でも一定の議論が喚起できたと思っています。

 3月8日の一般質問は、要望という形で発言したため、税務当局の回答を得るまでのは至りませんでした。

 そこで、3月17日の予算特別委員会(予特)で具体的に取り上げました。この予特では、自民党の県議会議員で、自らも燃料販売店を営む田山東湖議員も、この問題を取り上げました。

 「同一条件で価格の競争を行うことは市場の原理でありますけれども,ガソリンスタンド自身がさまざまな努力を払って販売価格,サービス面での競争をしておる中での現象であります。片や1リッター当たり揮発油税,御案内のとおり国税でございますけれども,約53円,軽油引取税で約32円,いずれも課税されていない。いわば無税の商品が我々の石油販売業界の市場に堂々と出ているという現象でありまして,もはや競争にはならない。同じガソリン車向けの燃料を販売するのに不公平だろうと,いわば徴税の公平性が著しく損なわれている現象があるわけであります」と、田山議員は、速やかな課税体制の整備を訴えました。

 税務当局は、
 「つい最近,国税当局から揮発油税等には該当させないという見解が示されたところでございます。
 この結果,アルコール系代替燃料につきましては,製造または通関の段階で炭化水素成分が50%未満の場合は軽油引取税を課税すべきこととなりますので,今後は,地方税法の規定に基づき,課税のための手続に早急に移行してまいりたいと思っております」と務台総務部長が、県税である軽油引き取り税を課税する方針を公式に示しました。

 一方私は、
「このアルコール系燃料の問題を議会で取り上げる上で,これは単なる税金の問題にだけは終わらせたくないというふうに思っております。(中略)アルコール系燃料は,非課税ゆえの低価格燃料という性格よりも,本来的には,低公害の燃料として今後普及を図られるべきではないかと考えております」と延べました。
 課税問題を一刻も早くクリアして、低公害燃料として普及を図るべきであり、性能評価もしっかりとした中で、県のグリーン購入(環境負荷の少ないものの優先購入)の候補にも加えるべきであると主張しました。

県税当局の動きとガイアックス販売店の対応

 こうした議論を経て、県の税務当局は、ガイアックスを販売する事業者(小売店)に対して、軽油引取税の納入を働きかけてきました。

 茨城県における販売業者最大手の関東ガイアックス社は、自主申告に応じ納付を開始していると聞き及んでいますが、自主申告に応じず、賦課決定通知(燃料販売量の計算を自主申告しないため、県が販売量とそれに関わる税金の額を決定し通知する制度)が送付され業者もありました。

 さらに、この賦課決定に対しても、3つの業者からは異議申し立てにあたる審査請求が提出されています。

 茨城県でアルコール系燃料が販売を開始されて以来15ヶ月にわたって、納税が完了していない状態が続いていることになります。こうした事態は、アルコール系燃料の普及に大きなマイナスであると考えます。

 ガイアックスを生産しているガイアエナジー社の法的代理人である鳥飼総合法律事務所(http://www.torikai.gr.jp/zsoshou/main.html)[リンク切れ]には、ガイアエナジー社の課税に関する公式見解が詳しく掲載されています。

 その中で、「私ども(ガイアエナジー社および法的代理人である鳥飼総合法律事務所:筆者注)は、そもそも「ガイアックス」に何らかの税金が課せられることに反対しているのではありません。

 むしろ、燃料によって自動車を走らせ、道路を損傷するのは同じであるにもかかわらず、片や、1リットルあたり53円80銭ないしは32円10銭という負担が課せられ、片や全くの非課税というのは、たしかに不公平ではあるのです。ここから、課税の公平を図るべきだと考えるのは、正しいことです。そのことは、ガイアエナジーも、その販売店も重々承知しているのです。

 ところが、国税庁は、揮発油税の対象にはならないとの公式見解を出しました。条文上、「ガイアックス」を税法上の揮発油と解釈することは出来なかったからです。当然のことです。そこで、何とか「ガイアックス」に課税しようとする意図は理解できます。そこで、むりやり「軽油引取税」を持ち出してきたわけです。

 しかし、「ガイアックス」に課税するについては、新たな法律制定によらなくてはなりません。つまり、憲法の大原則であります「租税法律主義」によれば、ガイアックスに軽油引取税を課税することには無理があるのです。新たな立法なしに、「ガイアックス」に軽油引取税を課するとすれば、行政権が立法権を侵害することを認めることになります。そうなりますと、行政権が近世の絶対君主と同じように、何の規制も受けずに国民に勝手気ままに課税することが許されることになるのです。それが許されるべきでないことは明らかです。

 課税庁が、ガソリンや軽油と同じように、「ガイアックス」にも課税したいという気持ちは理解できます。しかし、だからといって、立法なしに、単に機械的・形式的にその部分だけが条文にはまるからといって、「ガイアックス」に軽油引取税を課すことには問題があります。それが、憲法が基本原理として定めている「租税法律主義」の当然の要請といえるのです。それが貫徹されなければ、私たちは、安心して事業を起こしたり、生活したりできなくなってしまいます。

 「ガイアックス」に関する課税の本当の問題は、まさに、租税法律主義に基づく素朴な正義の実現を図るということにつきます。課税は、課税庁が法律の根拠なく、独断でやってはいけないのです。私どもは、そのことがいいたいのです」と結論されています。

 ガイアエナジー社の主張はよく理解できます。立法府である国(国会)の対応の遅れを、私も問題ありと認識します。

 しかし、それを理由にいたずらに納税を遅らせることに、国民は理解を得られるでしょうか?

 他の多くの燃料販売業者は、大変な努力を積み重ねながら、ガソリンや軽油を販売し、正直に納税の義務を果たしています。

 ガイアックスは、環境に優しい燃料であるから無税であるべきだ。(または、優遇税制であるべきだ)という主張はあまりにも安易すぎないでしょうか。

 私は、税に対する専門的な知識を持ち合わせておりませんが、庶民の感覚として、賦課が決定された軽油引取税の申告・納付を完了して、堂々と新税の制定を主張されるべきだと考えます。

 また、税制への反論をされるのであれば、少なくても現行の税体系の中で裁判所への供託など、納税の意志を明確に示す必要があると思われます。

環境省:排気ガス分析結果を公表 ガイアックスは環境に優しい燃料か?

 さらに、ガイアックスの課税問題には、新たな展開が起こっています。

 それは、2001年3月1日に環境省が、ガイアックスの排出ガス実態調査の調査結果について、その結果を公表したのです。

 それによると、「ガイアックス使用時の各種物質の排出量は、ガソリン使用時に比べ、一酸化炭素及び炭化水素は改善する傾向だったものの、窒素酸化物は悪化する傾向を示した。その他、二酸化炭素及び燃料消費率はほぼ同等となり、アルデヒド類の排出量は悪化する傾向を示した」、というものでありました。

 その原因は、「ガソリンを燃料とする自動車にガイアックスを使用することにより、排出ガス中の窒素酸化物等を除去する触媒が正常に作動する制御範囲を超えたため」と分析しています。

 ガイアエナジー社は販売に当たって、現在のガソリン車に何ら整備・改良を加えずに給油ができ、 環境悪化物質の排出量が低減できることをうたっています。早急に、環境省の調査への反論なり、更なる性能試験の実施、結果の公表を行う必要があると思います。 今後新たな環境負荷が少なく、廉価な新燃料が次々と開発されてくる可能性があります。

 旧来の枠組みにとらわれず、国民本位のエネルギー行政を進める上で、今回のガイアックスを巡る論議を、大いに住民の中で高めてまいりたいと決意を新たにしています。

このページは、茨城県議会井手よしひろの公式ホームページのアーカイブ(記録保管庫)の一部です。すでに最終更新から10年以上経過しており、現在の社会状況などと内容が一致しない場合があるかもしれません。その点をご了解下さい。