九州北部豪雨の流木被害<NHKのHPより>
 福岡、大分両県に甚大な被害をもたらした九州北部豪雨から2週間余り。多くの人が犠牲となり、行方不明者の捜索は今も続いています。被災された方々に心からお見舞い申し上げます。
 被災地では、公的支援を受けるために必要な「罹災証明書」の発行や仮設住宅の申し込みが始まっています。被災者の生活再建に向け、国や自治体は総力を挙げなくてはなりません。
 今回の災害の最大の要因は、長時間にわたり大量の雨が降り続いたことだ。福岡県朝倉市では24時間の降雨量が545.5ミリに達しました。平年の7月一カ月分の雨量の約1.5倍であり、これまでの記録を200ミリ以上も上回わっています。この豪雨の要因は、このブログ記事「九州北部豪雨をもたらした"線状降水帯"」(http://blog.hitachi-net.jp/archives/51662244.html)でも扱ったところです。

 一方、日本地すべり学会は7月16日、大分県日田市で記者会見し、九州北部を襲った豪雨で起きた土砂崩れの特徴について、現地調査の結果を発表しました。
 短時間で狭い範囲に300〜500ミリを超える異常な大雨が集中した結果、森林の保水機能の限界を超え、斜面が崩壊したとしています。調査は14〜15日に福岡県東峰村と大分県日田市、中津市で実施しました。
 学会によると、土砂崩れの多くは尾根直下の傾斜が急な場所で、地面の表層部分が崩壊して起きた。日本有数の林業地帯でスギなどの人工林の割合が高く、樹齢40〜50年の「壮齢林」が多かったため、流木は長さ40メートル程度の長大なものが目立ったといいます。
 特に土砂崩れが大規模だった日田市小野地区の現場は、数千〜数万年前に起きた過去の土砂崩れの影響で斜面上部の地形が緩やかで、堆積物が厚かったことが被害が大きくなった原因とみられると報告しました。
 学会は今後の対策として、2次災害の恐れがある場所には土石流センサーなどを設置し、流木をせき止めるための防災ダム建設や、山林の手入れなどが必要と指摘しました。落合会長は「さらに詳細な調査を検討中だ」と話しました。
何より必要なのは森林の保全
 追い打ちを掛けたのが、大規模な土砂崩れによって発生した大量の流木です。これが被害を拡大させた点に今回の災害の特徴があるとされます。
 これを今後の重要な教訓と受け止めなければなりません。日本の国土は約7割が中山間地域であり、河川上流部からの流木が深刻な被害につながる可能性は全国各地に共通します。
 過去に経験のないような豪雨が相次ぐ中、流木による被害の拡大をどう防ぐか。まずは危険箇所の把握から始め留必要があります。既に鳥取県は7月19日、県内全域を対象に流木被害が発生する恐れのある地点を洗い出す方針を打ち出しました。

九州北部豪雨の流木被害<NHKのHPより>
 具体的な対策としては橋の改修も一案です。橋脚に引っ掛かった流木が川をせき止め、氾濫の原因になるからです。実際、5年前の豪雨の際に流木が引っ掛かり、周辺に浸水被害をもたらした大分県の夕田橋は、3本あった橋脚を1本に減らす架け替え工事を行い、今回は氾濫を免れました。
 山から樹木が流れ出すのを防ぐ対策も重要です。河川の上流部で木や岩などをせき止める砂防堰堤(砂防ダム)の整備を進めなければなりません。
 何より忘れてはならないのは、早めの避難の重要性だろう。地域住民の間で、近くに崩れやすい斜面や古い橋などがないか、確認しておくことが大切です。自治体は「自主防災マップ」の作成など、住民の意識を高める取り組みを積極的に後押しすべきです。
 根本的には、山の整理を怠ってはなりません。地方の山間部では、高齢化や人手不足で間伐など森林の手入れが行き届かず、荒廃が以前から問題となっていました。今までは、暖化対策の側面から二酸化炭素(CO2)を削減、水源の維持などから森林の保全が主張されていました。
 今回の九州北部豪雨では、防災の観点からも森林保全の重要性がクローズアップされました。
 財源としての、全国民を対象とした森林環境税の創設などの議論を本格化させる必要があります。

参考:NHK:九州北部豪雨 “流木”の脅威と対策は(http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2017_0722.html