茨城新聞(2017/9/29)
 8月27日投開票の知事選で7選を目指す現職の橋本昌知事は7月28日、県庁で記者会見し、今回の知事選に臨む公約を発表しました。来年で運転40年となる日本原子力発電の東海第2発電所について「再稼働へのハードルを上げる。安全性と避難態勢の実効性が確保されなければ、再稼働は認めない」と述べて、東海第2原発の再稼働問題を、知事選の争点の一つとして重視する方向性を示しました。
 今まで、原発再稼働について、橋本知事は国の安全審査が終わっていないことなどから、慎重な姿勢を示していました。これまで「認めない」と否定的な文言で政策を語ったことはなく、「かなり(原発政策を)転換すると受け取ってもらっていい」と述べたと報道されています。
 その理由については、多くの市町村長や外部からの意見があったことを明らかにし、「(日本原子力研究開発機構の)大洗の事故もあり、より慎重にしていくべきだと考えた」と語りました。
 この現職の方針転換に対して、新人の大井川かずひこ候補は、井手よしひろ県議ら公明党県本部と協定を結んだ政策の中で「安全安心の県土づくりのために、防災体制の整備、原子力安全対策の強化を図る」との基本姿勢を掲げ、ホームページに掲載した公約では、「県民本位の徹底した原子力安全対策と避難対策」を掲げています。東海第2原発にたいする県民の意見や意向を尊重しながら、再稼働や運転延長について結論を出すという立場です。大井川候補は、出馬会見で「住民投票も選択肢の一つ」と語っており、推薦した茨城県議会公明党は、「全県民を対象としたアンケート調査(県民世論調査)」の実施などを県議会で提案しています。
 こうした両候補の原発に対する考え方について、7月29日付けの茨城新聞一面では、「東海第2再稼働、争点に/橋本氏“慎重” /大井川氏“民意重視”/鶴田氏“反対”」と見出しを打ちました。
 知事選の争点として“東海第2原発の再稼働問題”“20年の運転延長問題”がクローズされてきたことは、非常に重要なことです。県知事選を通して、候補の原発に関する政策がより具体化することは、大歓迎です。
 県議会公明党は、県民の声を住民投票やアンケート調査で集約することが出来れば、「東海第2原発は、運転延長・再稼働せず廃炉という」選択になると確信しています。その意味で、大井川候補が掲げる「民意重視」との公約を支持するものです。

■橋本氏「慎重」/大井川氏「民意重視」/鶴田氏「反対」
茨城新聞(2017/7/29)
 8月27日投開票の知事選で、立候補を予定している3氏のうち無所属現職の橋本昌氏(71)が28日、公約を明らかにし、日本原子力発電(原電)東海第2原発(東海村)の再稼働について、慎重な姿勢を示した。無所属新人で会社役員の大井川和彦氏(53)=自民、公明推薦=は県民の意向を重視するとし、同じく無所属新人でNPO法人理事長の鶴田真子美氏(52)=共産推薦=は明確に再稼働に反対している。知事は再稼働の際、地元同意を求められる立場。これまで目立った争点が見当たらなかった同選挙の大きな争点として一気に浮上した。
 橋本氏は同日の記者会見で「県民の命と暮らしを守るため、安全性と避難体制の実効性が確保できない状況では(東海第2原発の)再稼働は認められない」とし、「国の判断が出ていない」と明確な判断を示してこなかったこれまでの見解から一歩踏み込んだ。
 その上で、県独自に行っている外部有識者による安全性の検証や、避難計画の厳格化を図る考えを示した。避難人口の多さや東電の電力需要減少などの状況も踏まえ、最終的には「最善の策を探していく」とした。県民意識の把握については「どこまで(の地域で)聞くか、詰める必要がある」とするにとどめた。
 大井川氏は、公明党県本部と協定を結んだ政策の中で「安全安心の県土づくりのために、防災体制の整備、原子力安全対策の強化を図る」との基本姿勢を掲げている。20日の公約発表会見では「(東海第2原発の)再稼働か、廃炉かという単純な二元論にはくみしない」と述べ、再稼働の是非に関しては「全くの白紙」と強調した。
 ホームページ掲載の公約には「県民本位の徹底した原子力安全対策と避難対策」を掲げている。県民の意見や意向について、大井川氏は「把握する努力をしていく」とし、住民投票などを選択肢の一つとして検討していく考えだ。
 鶴田氏は立候補表明の際に示した公約の中で「老朽化し、被災した東海第2原発の再稼働・運転期間延長には同意しない」とし、立候補予定者の中で唯一、東海第2原発の再稼働に反対する姿勢を明確に打ち出している。(以下略)
■東海第2原発を巡る動き
1978年11月・営業運転開始
2011年3月・東日本大震災により運転停止
2014年3月・原電と立地周辺市町村が安全協定見直しを盛り込んだ覚書締結
2014年5月・再稼働の前提となる適合性審査を原子力規制委に申請
2015年3月・県が原発事故に備えた広域避難計画を策定
2017年5月・原則40年の運転期間に関し原電社長が「延長申請したい」と言及。原電、運転延長に必要な「特別点検」開始
2017年11月・運転延長の申請期限
2017年18年11月・運転開始40年


毎日新聞i
実績か刷新か:’17知事選激闘の舞台裏/下 政策の違いは?
毎日新聞(2017/7/29)
◇大井川氏、住民投票トーンダウン
 7選を目指す橋本昌知事(71)は28日、選挙戦に向けた政策を発表した。自民党が擁立した新人でIT企業役員の大井川和彦氏(53)が既に発表した政策と比べると、「医師確保に取り組む」「東関東自動車道やつくばエクスプレスの延伸」など重なるものが多く、大差は見えない。
 それでも、橋本陣営の幹部は「大井川が先に発表してくれてよかった。突拍子もないことを言うのではないかと警戒していた」と明かした。
 陣営が気にしていたのは、日本原子力発電東海第2原発の再稼働に対する姿勢だった。
 大井川氏は今年3月に立候補を表明した際、再稼働の是非について、「住民の直接の意思表明という機会も与えてもいいんじゃないか。住民投票だと思う」と述べた。
 2016年7月の鹿児島県知事選では、官僚出身で4選を目指した現職候補が、九州電力川内原発の一時停止・点検を求めた新人候補に敗れた。また同年10月の新潟県知事選でも、共産党や社民党などが推薦した新人候補が、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に対する慎重姿勢を掲げ、自公推薦の前長岡市長に大勝した。東京電力福島第1原発事故後、原発へのスタンスは、各地の知事選で主要な争点となっている。
 公明党県本部は今月17日、記者会見を開き、大井川氏の推薦を明らかにした。県本部は東海第2原発の廃炉を主張しており、原発への姿勢が不明確な大井川氏との整合性を報道陣から問われると、県本部代表の井手義弘県議は「大井川氏の支持者には(原子力関係の)事業者もいるので、今後協議する」と明確に答えなかった。
 一方、新人でNPO法人理事長の鶴田真子美氏(52)は、東海第2原発の廃炉を前面に掲げる。この原発政策に賛同した共産党県委員会など6つの政治団体が推薦する。(中略)
 大井川氏は今月20日、県庁で記者会見を開き、選挙政策を発表した。報道陣から住民投票について聞かれると、「選択肢の一つ。必ず実施するわけではない」と答えるにとどめた。
 橋本氏が28日に発表した政策には、「原発再稼働問題は重要課題。安全性と避難体制の実効性が確保できない状況では、再稼働は認められない」と慎重姿勢をアピールする一文が加えられていた。
 知事選の投開票まで1カ月を切った。県民に示す政策と、その選択肢であるべき陣営の枠組みが乖離(かいり)したまま選挙戦は熱を帯び始めている。


朝日新聞
慎重姿勢に転換 東海第二原発の再稼働 橋本知事、公約発表
朝日新聞(2017/7/29)
 7選を目指して知事選に立候補予定の現職、橋本昌氏(71)が28日、記者会見し、選挙公約を発表した。東海第二原発の再稼働問題について安全性と避難態勢の実効性が確保できない状況では、「再稼働は認められない」と明記。「国の対応を見ながら判断する」という従来の考えから、慎重姿勢に大きく転換した。
 橋本氏は会見で、原発事故後の避難態勢について、「もっと重要視すべきだ。原発が再稼働している地域を見ると、十分に議論されてこなかった」と発言。市町村の避難計画ができても、交通弱者向けのバス台数、運転手確保などの実効性が担保されない限り、再稼働を認めないとした。
 さらに大洗町の日本原子力研究開発機構・大洗研究開発センターで6月に発生した作業員の被曝(ひばく)事故についても触れ、「信頼を揺るがすような事故も起きているので、(再稼働の可否判断は)より慎重にしていくべきだと考えた」と述べた。
 転換のきっかけについては「多くの市町村長から原発問題について『慎重に』という意見があった」と説明。8月27日投開票の知事選を控え、明確な姿勢を示す必要があったことを示唆した。ハードルを上げるのかという質問に対しても、「そうとっていただいて結構です」と述べた。
 来秋に運転開始から40年の期限を迎える東海第二原発の運転延長、再稼働の是非は知事選の争点の一つになっている。橋本氏は当初、国の安全審査が終わっていないことを理由に、これらの問題について選挙戦で触れない方針とみられてきた。(以下略)


読売新聞
原発再稼働「ハードル上げる」 橋本知事、公約を発表
読売新聞(2017/7/29)
 8月27日投開票の知事選で7選を目指す現職の橋本昌氏(71)が28日、県庁で記者会見し、公約を発表した。来年で運転40年となる日本原子力発電の東海第二発電所(東海村)について「再稼働へのハードルを上げる。安全性と避難態勢の実効性が確保されなければ、再稼働は認めない」と述べた。
 原発再稼働を巡り、橋本氏は国の安全審査が終わっていないことなどから、慎重な姿勢を示していた。これまで「認めない」と文言に出したことはなく、「かなり転換すると受け取ってもらっていい」と述べた。
 多くの市町村長や外部からの意見があったことを明らかにし、「(日本原子力研究開発機構の)大洗の事故もあり、より慎重にしていくべきだと考えた」と理由を説明した。原子力の研究開発は進めるべきだとした。
 また、自民、公明両党が推薦する新人の大井川和彦氏(53)を念頭に「県民党として戦う」と強調。「知事は県民が選ぶもの。中央から口を出すのはいかがなものか」と批判した。
 政策面では、18歳未満の医療費無料化や、認知症対策など、少子高齢化対策に最も力を入れるとした。
 知事選には、共産党が推薦する新人の鶴田真子美氏(52)も立候補を表明している。