さい帯血バンク
 9月12日、へその緒と胎盤に含まれるさい帯血が、経営破綻した「民間バンク」から流出し、無届けの再生医療に用いられたとされる事案を受け、厚生労働省はホームページ上に「赤ちゃんを出産予定のお母さんへ」と題して、公的バンクと民間バンクの違いなどの説明を掲載しました。これは、両バンクに関する説明が不十分なまま、民間バンクと保管委託契約を結んでいるケースがあるとして、公明党が丁寧な説明を要請していたものです。
参考:赤ちゃんを出産予定のお母さんへ:http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/ishoku/saitaiketsu.html
 造血幹細胞移植推進法に基づき国が許可した公的バンクでは、寄付されたさい帯血を国が決めた基準で保存。白血病などでさい帯血移植を必要とする第三者のために提供しています。一方、民間バンクは、本人やその親族が将来、病気の治療のために利用する場合に備えて、さい帯血を有料で保管しています。
 厚労省HPでは、白血病など同省が定めた病気(27疾病)については、公的バンクによるさい帯血の提供体制が確保されており、白血球の型が適合する確率も90%以上であると説明。民間バンクについては、契約に当たって安全性や契約終了時の取り扱いなどを「慎重にご確認ください」と呼び掛けています。
 厚労省は同日、日本医師会、日本産婦人科医会に対しても、さい帯血採取時における適正な情報提供について協力を依頼しました。
契約切れの2100人分保管、「民間さい帯血バンク」の実態調査結果
 さい帯血の民間バンクが少なくとも7社あり、5社で計約4万5700人分を保管していることが分かりました。このうち約2100人分は意思が確認できないなどの理由で、契約終了後も廃棄されないままになっていました。民間バンクからのさい帯血流出を受け、厚生労働省が実態調査を行い、公表しました。
 厚労省は9月12日、業務内容の届け出を求める通知を7社に発出しました。届け出内容は同省ホームページに掲載する予定です。
 厚労省は今後、民間バンクでのさい帯血保存のあり方や流出防止策などについても、有識者による検討を行います。
 実態調査は、公明党の中野洋昌衆院議員、山本香苗参院議員が衆参厚労委員会で実施を求めていました。同省は7社の活動実態を確認したが、1社は調査を拒み、1社は「引き渡し(仲介)のみ」と回答しました。

つくばブレーンズからの流出分についても実態を調査し、依頼者に情報公開を
 さい帯血には、「造血幹細胞」という体のさまざまな種類の細胞のもとになる、細胞が豊富に含まれています。さい帯血のような造血幹細胞は、赤血球や白血球などの「血液のもと」になります。血液をうまく造れない血液の病気、白血病や再生不良性貧血などの治療に役立ちます。他にも様々な細胞を作り出す能力が高いために、再生医療での応用が期待されるています。
 2017年6月9日、厚労省は無届けの再生医療を行ったとして、愛媛県の医療機関に立ち入り検査を行いました。その医療機関の停止命令を発表。その後、全国的に本格調査をしたところ、6月から7月にかけて、愛媛の医療機関を除く、11の医療機関にも、同様の問題が発見されました。それらの医療機関は、がん治療や肌の若返りの美容のために、再生医療を行っていました。保険が利かない自由診療で、患者一人あたり300万円程の治療費を得ていました。
 ガンの治療や美容整形などのために、藁をもつかむ思いで高い治療費を払った患者さんのことを思うと、絶対に許されない行為です。
 警察から摘発された医療機関の問題は、国に「無届け」で、再生医療行為を行った点にあります。 さい帯血のような、他人の幹細胞を使った「再生医療」については、「再生医療などの安全性を確保するための法律」によって、届け出でが義務づけられています。法律に沿って、さい帯血を使う再生医療は、国に計画書などを届け出る必要があります。
 届け出には、再生医療について検討する第三者機関の委員会の意見書を添える必要があります。意見書の他にも、定期的な報告書を出し、安全性の確保をする必要があります。
 さらに問題の本丸は、そのような医療機関にさい帯血を渡した「提供元」も問題です。今回の提供元には、茨城県の「つくばブレーンズ」という民間さい帯血バンクでした。経営が行き詰まり破産したことで、そこで預かっていたさい帯血が、債権者に流出してしまいました。
 つくばブレーンズは、子供の将来の病気などに備え、個人からさい帯血を預かる事業をしていました。ところが、資金繰りが悪化し、1500人分のさい帯血のうち、 少なくとも800人分が債権者側に流れ、治療1回分100万円から200万円で売却されました。さらに京都と福岡の医療関連会社が、利益を上乗せし、200万円から300万円で販売。それを買ったのが、今回販売停止になった11の医療機関などでした。
 さい帯血の提供元についても、「造血幹細胞移植推進法」によって「国の許可」が必要です。しかし、販売した業者は国に届け出ていませんでした。
 実は、国に届け出が必要なのは、公的バンクだけです。民間バンクは第三者ではなく、本人や親族に使うために届け出義務がありません。
 さらに言えば、今回のように破産した場合の、さい帯血の取り扱いルールはありません。
 流出した800体のさい帯血が今どのようになっているのか、少なくても、さい帯血を預けていた依頼者には知る権利があります。
 2004年2月以来、つくばブレーンズをウォッチしてきた井手よしひろ県議のもとには、子どもさい帯血を預けた保護者からは悲痛な声が寄せられています。確かに、10年間という契約期間が満了してしていることは明らかですが、であるならばそのさい帯血が廃棄処分され、ぞの情報も完全に抹消されていれば問題はありません。しかし、第三者に投与されたり、未だに保管されている可能性もあります。さい帯血の現状を国の責任で調査し、依頼者の希望があれば報告する必要性があります。それが、さい帯血移植の信頼性を高め、今後の再生医療の進展に寄与する直道だと考えます。