希望の党
新聞各紙が厳しく批判、「選挙目当ての互助会」(朝日)、「理念、政策、度外視の野合」(読売)、「矛盾噴出は容易に想像」(毎日)
 10月22日投票の衆院選を前に、民進党が、小池百合子東京都知事が代表を務める新党「希望の党」への合流を決めたことに対し、マスコミ各紙は、「政策を二の次にした選挙目当ての互助会」(朝日)、「理念や政策を度外視した野合」(読売)、「新党に移った方が選挙で有利という打算が透けて見える」(日経)などと一斉に疑問を投げ掛けました。
 新代表を選出したばかりの野党第一党が、結党したばかりの新党に身を売る決断をした理由について各紙は、離党者が相次ぐなど民進党の党勢拡大が全く進まない実情を指摘している。前原誠司代表が「二大政党をつくるために名を捨てて実を取る」と強弁したことにも、「党勢回復のメドが立たない中で、有権者の信任を得る努力を放棄し、理念も政策も大きく異なる小池氏の人気に便乗したとしか見えない」(読売)などと厳しく批判しています。
 民進党の合流に対して否定的な見方が多いのは、両党が掲げる政策が大きく食い違うからです。「安全保障関連法や消費税について、民進党と希望の党の間には大きな齟齬が残っているのに、合流へ動き出している」(産経)にもかかわらず、「国民のために何を目指すのかという根本的な論議がかすんだまま」(日経)では、政権打倒という「目的を達成したら、その瞬間から矛盾が噴出することは容易に想像できる」(毎日)などと見透かしています。
 今後の焦点は、小池代表が合流に向け民進党出身者をどう選別するかです。それを見越して、各紙は「やみくもに民進党出身者を受け入れれば、『駆け込み寺の第2民進党』という他党の批判も説得力を帯びる」(読売)、「民進党の看板の掛け替えとの批判は免れまい」(産経)などと警鐘を鳴らしています。

なぜ、政党としての民進党を存続させるのか、所詮は数十億の政党助成金目当て
 民進党は事実上、希望の党に合流する方向となりました。しかし、少なくとも10月22日投開票の衆院選終了までは、政党としての民進党は存続させる方向です。
 その背景には、民進党所属の参院議員(49人)や多数の地方議員がいることに加え、民進、希望双方の選挙資金面の事情があります。
 政党助成法は、政党交付金の交付を受けている政党が解散した場合、国庫へ返還しなければならないと規定しています。2009年8月結党の旧みんなの党が2014年11月に解党した際には、保有していた政党交付金約12億円を返納しました。
 民進党に昨年1年間に交付された政党交付金は総額97億4388万円に上ります。もともと資金に不安がある希望の党はもちろん、民進党がすぐに解党すれば、希望の党公認で出馬する民進党候補の選挙資金もあてがなくなります。
 衆院選の供託金だけでも、小選挙区の1候補あたり300万円、比例区との重複立候補には900万円が必要です。仮に120人を立候補させるとすると10億8000万円必要です。
 その他、公認候補の活動費(いわゆる餅代)などを支出すると、本来民進党に交付された政党助成金を、国庫にたとえ1円でも返納したくないとの思惑があります。
 このため、参院議員ら国会議員の一部が当面残って民進党を形式的に存続させ、政党交付金は事実上、希望の党の選挙活動などにあてことが考えられました。
 現在の制度では、政党間の資金移動は制限なくできます。
 民進党と希望の党との合流は、何としても選挙で勝ち残りたい民進党と選挙資金を調達したい希望の党との打算の産物でもあります。