東海第2原発
 11月24日、日本原子力発電(日本原電)は東海第2原子力発電所(東海第2原発)の20年間の運転延長を原子力規制委員会に申請しました。東海第2原発は、昭和53年11月28日に稼動し、来年運転開始から40年を迎えます。東京電力福島第一原発事故を受けて改正された原子炉等規制法は、原発の運転期間を原則40年と定めています。原子力規制委員会が審査の結果、認めれば1度に限って最長20年間、運転を延長することが出来ます。運転延長の申請は、すでに認可された関西電力の3基に続き4基目。東日本の原発では初めてです。福島第一原発と同じ「沸騰水型」としても初めての申請となります。
 東海第2原発は、出力電気出力110万キロワットの大型原発です。年間で2000億円程度の化石燃料分の発電が可能です。日本原電にとって、東海第2原発の運転延長・再稼働は存続をかけた選択です。日本原電は、大手電力会社9社が共同で出資して作られた原子力発電専業の発電会社で2基の原発を運用しています。しかし、再稼働が期待されていた福井県の敦賀2号機は、直下に活断層が疑われ審査合格は難しいと言われています。つまり日本原電は収入を得る発電所が、現在1つもない状況が続いているのです。2012年度以降、東京電力などの電力会社に電気を売れない状況に陥っています。電力会社が日本原電の経営を支える異常な状況が続いています。
 売る電気がない日本原電に対し、電力会社は事実上の資金支援をこの6年間続けてきました。しかし、ただでさえ福島第一原発事故による廃炉や賠償費用もかさむ中、東京電力が日本原電への支援を行えるかどうか、大きな疑問です。原子力規制委員会は、東海第二原発の再稼働は、単に技術的な課題だけではなく、その費用をどのようにして捻出するか、日本原電への電力各社の「債務保証」が課題と踏み込んだ議論をしています。
安全対策費は1800億円に、資金調達の目処立たず
 これまでに再稼働した西日本の原発と異なり、東海第2原発は、2011年の東日本大震災で実際に被災しています。最大5.4メートルの津波の影響を受け、非常用ディーゼル発電機3基のうち1台が使用不能に陥りました。メルトダウンなどの深刻事態にはなりませんでしたが、原子炉が冷温停止するには4日間を必要としました。
 この教訓を踏まえ、日本原電は約17メートルの津波を想定、高さ20メートルの防潮壁を建設することにしています。当初は盛り土の予定でしたが、規制委員会から液状化の可能性を指摘され、鋼鉄製のくいを地下約60メートルの岩盤まで打ち込む方式に変更しました。
 また、浸水に備えて重要施設の出入り口を密閉して、海水が施設内に侵入しないように“水密化”を行います。
 火災対策としては、古い電源ケーブルを燃えにくいケーブルに取り替えます。交換が難しい箇所は防火シートで被う工事を行います。
 電源喪失対策では、高台に電源車やポンプ車を配置し、自主的に予備の冷却装置を追加します。
 こうした工事は、2021年3月までに終える予定です。
 今年10月、日本原電は、防潮壁の建設計画の変更など、東海第二の安全対策にかかる工事費が、従来の想定額780億円から2倍超の1800億円にのぼると公表しました。このうち一部は、資金調達のめどが立っていません。
 11月15日、原子力規制委員会の更田豊志委員長は、東海第二の再稼働の前提となる安全審査について、自社で賄えない工事費を債務保証する事業者を示すことが、「合格」の条件との認識を示しています。

広域避難計画の立案は不可能、自治体同意も得られるのか
 20年運転延長の条件は、東海第2原発の安全性を高める対策を行うことによって、クリアできるかもしれません。しかし、東海第二の運転延長が認められても、再稼働にはクリアすべき課題が残ります。
 まず、第一に自治体による広域避難計画の策定です。東海第二原発の場合、計画の策定が必要な半径30キロ圏の人口は約96万人と、全国の原発の中で最も多い人口を抱えています。これだけの人数を安全に避難させるのは、ほぼ不可能です。
 人口27万人の水戸市や15万人以上の日立市、ひたちなか市など14市町村のうち、計画を策定した自治体はいまだに一つもありません。
 各市町村は、茨城県が2015年3月に策定した広域避難計画を基に、避難先の自治体との間で調整を進めていますが、協定を締結できたのは6市村にとどまっています。避難先が決まっても、入院患者ら要支援者への対応は、別途考えなければなりません。高齢者や障がい者、病気で加療・入院している人など、実効性のある避難計画は、まず策定できないでしょう。
 第2に、自治体から再稼働の同意を得られるかどうかです。日本原電はこれまで、茨城県と東海村との安全協定に基づき、施設の新増設などの際に県と村の同意を得てきました。
 水戸市やひたちなか市などの周辺5市は、県や村と同様の権限を日本原電に要求しています。11月22日、日本原電の村松衛社長は、東海村を含む6市村(日立市、常陸太田市、那珂市、ひたちなか市、水戸市)と新たな協定を結ぶ方針を示しました。
 新協定の詳細は明らかにされていませんが、5市のいずれかが反対した場合、再稼働できない可能性もある。すでに那珂市で行った住民アンケートでは、再稼働反対が賛成を大きく上回っており、新たな原子力協定が締結されれば、再稼働の敷居はますます高くなります。
 
住民の声を具体的に聴き取るべき、県議会公明党が強く主張
 茨城県議会公明党は、福島第1原発事故発生以来、一貫して再稼働の反対を主張してきました。今後の再稼働の議論にあたっては、住民の判断を何より重視すべきです。今年3月の県議会代表質問で、井手よしひろ県議は「県民の東海第2発電所の考え方を統計的に明らかにするため、県政世論調査の項目に東海第2発電所の今後の対応について問う設問を加えるべき」と提案しました。10月議会では、同じく公明党の八島功男県議が、「東海第2発電所の現状を広く県民に知らしめる情報発信を丁寧かつしっかりと推進し、県民の原子力防災の認識の醸成を図る必要があります。そして、毎年県が行う県民世論調査の設問にこの問題を取上げて県民の声を聞き、知事の総合的な決断を求めたいと思います」と、新たに就任した大井川知事に迫りました。
 大井川知事は、「東海第2発電所の再稼働につきましては、施設の安全性や原子力防災体制はもとより、地域経済への影響など幅広い観点から、県民の視点でしっかりと議論していくことが必要であると考えております。このため、東海第二発電所の安全性や必要性などに関する県民の具体的な問題意識を的確に把握していくことが重要でありますことから、その方法につきましては、議員のご提案も参考にさせていただきながら検討してまいりたい」と、答えました。
 県民の意思を十分尊重し、住民の安全安心を守るためには、再稼働という選択はありえません。日本原電の経営や地域への経済的影響を小さくするためには、政府の積極的な関与が不可欠です。東海第2原発の廃炉を速やかに決断し、日本原電自体の国の支援による改組を行うべきと主張します。

東海第二原発 再稼働には総合的判断が要る
【読売新聞社説 2017年11月25日】
 原子力発電所の再稼働を実現するためには、課題を着実に乗り越えなければならない。
 来年11月で運転開始から40年となる茨城県東海村の東海第二原子力発電所について、日本原子力発電が原子力規制委員会に運転延長を申請した。
 電気出力110万キロ・ワットの大型原発だ。年間で1000億円程度の化石燃料代に見合う電力を供給できる。20年間の延長を前提に再稼働にこぎ着ければ、東京、東北両電力の安定電源となろう。
 ただし、難題が山積みだ。
 福島第一原発事故を踏まえた新規制基準への適合性審査は、終盤で行き詰まっている。
 津波に備えて、高さ20メートルの防潮壁を設ける。非常用電源を強化する。原子炉を守る格納容器の損傷対策も多重化する。世界で最も厳しいとされる新規制基準に沿った安全対策を日本原電が提示し、規制委は適切だと認めた。
 問題は、これらの対策に要する約1800億円の費用だ。発電専業の日本原電が保有する原発は全て停止している。電力業界の支援でかろうじて経営を続けている。どう工面するのか。規制委が回答を求めたのは当然だ。
 規制委による審査の長期化や安全対策費の膨張などで、経営の足元は揺らいでいる。
 苦境にあっても、再稼働を目指す以上、安全対策費を圧縮することは許されまい。日本原電の存続がかかっていると言えよう。出資している東電などにとっては、難しい判断を迫られる。
 原発再稼働に伴う膨大なコスト負担の在り方について、政府も真剣に検討すべきではないか。
 運転延長の審査では、原子炉の老朽化などがチェックされる。事故を起こした福島第一原発と同じ沸騰水型の延長は初めてだけに、入念な審査が欠かせない。
 原子力災害対策特別措置法に基づき、県と自治体に義務付けられた避難計画の策定も遅れている。原発の30キロ・メートル圏内には約96万人が暮らしている。重大事故が起きた時に対応できるのか、と不安を訴える声は少なくない。
 大がかりな避難を可能にする計画の策定が必要である。
 東海村の山田修村長は、「自治体には実効性ある避難態勢の確立が求められている。総合的な判断はまだ先だ」と語っている。再稼働の是非を見極めるには、時期尚早だとの見解だろう。
 最終的な判断に際しては、原発の必要性やリスクに関する冷静な議論が不可欠である。

東海第二原発 延命は割に合わない
【東京新聞社説 2017年11月25日】
 日本原電は、来年40年の運転期限を迎える東海第二原発の20年延命を、原子力規制委員会に申請した。3・11後の安全強化で、原発はもはや割に合わなくなった。老朽化が進めば、なおさらだ。
 日本原子力発電(原電)は国内唯一の原子力発電専業会社、原発による電気を電力小売会社に販売する卸売会社である。
 沖縄を除く九電力などが出資して、1957年に設立された。
 茨城県東海村と福井県敦賀市に計4基の原発を持っていた。
 このうち66年運転開始、日本初の商業用原子炉である東海原発は、32年で運転終了、廃炉、解体中。70年稼働の敦賀1号機も廃炉が決まっている。
 87年稼働の敦賀2号機は、直下を活断層が走る恐れが指摘され、廃炉やむなしの公算大。78年運転開始、来年操業40年の東海第二を延命させないと、売るものがなく、電力卸売会社としての存続が困難になる。
 しかし、延長の前には高い壁がある。資金繰りの壁である。
 3・11後、安全対策のハードルは高くなり、40年廃炉のルールもできた。延長は、本来例外的に認められるが、さらに特別な対策が必要とされている。
 東海第二ではこれまでに、規制委に防潮堤の設計変更や、新しい循環冷却システムの設置を求められ、再稼働にかかる予算は当初の2倍以上、約1800億円に膨らんだ。原電は、積み立てが義務付けられた廃炉資金さえ、残高不足、自前の調達は困難な状況だ。
 東海第二だけではない。東京電力柏崎刈羽原発は、3・11後の新たな規制にこたえるため、これまでに6800億円を費やした。
 これは東芝を揺るがす原発関連の損失額に匹敵する金額だ。いずれにしても尋常な額ではない。
 安全を追求すればするほど、対策費は当然かさむ。
 電力自由化の時代、電気料金に転嫁するにも限度がある。
 東海第二の場合、30キロ圏内に全国最多の百万人近い人口を抱えている。県都の水戸市もすっぽり含まれる。事故の際、どこへ逃げればいいのだろうか。
 東海第二は“割に合わない原発”の典型なのだ。無理な延長、再稼働はすべきでない。
 それより原電は、実際の廃炉、解体を他社に先んじて進めている。その分野に業態を転換してはどうだろう。原発高経年化の時代。確実に、需要は伸びる。