準天頂衛星“みちびき”
日本政府が独自に開発/世界初の試み、地上の位置を高精度で測定/自動車や農業機械の無人化、災害時の安否確認などに活用
 政府は、衛星測位システム(GPS)の精度を高めるため、独自に開発した「準天頂衛星システム」の整備を進めています。
 GPSは、人工衛星から受信した電波を利用して現在の位置を割り出すシステムで、スマートフォンや車のカーナビゲーションなどに欠かせない技術です。日本は、米国が開発したGPSを利用していますが、ビルや山に遮られると、電波が届かず、測位できないことや誤差が大きくなる場合があります。
 そこで、GPSの精度を高めるため、日本政府が独自に開発したのが「準天頂衛星システム」です。日本列島のほぼ天頂(真上)を通る軌道を持つ人工衛星を複数組み合わせた衛星システムで、“日本版GPS”ともいわれます。
 現在、準天頂衛星「みちびき」計4機体制で運用し、日本列島のほぼ真上を常に1機以上が飛ぶため、電波の届きにくい“死角”が減り、位置精度が大幅に向上しました。さらに地上の電子基準点も活用した場合、誤差は数センチ単位までに小さくなると見込まれています。これは世界初の試みです。
 この日本版GPSにより、正確な操縦が求められる車の自動運転技術の向上をはじめ、農業機械の無人化や省力化が大きく進むと期待されています。
 また、大規模な災害で地上の通信インフラが失われた場合でも、準天頂衛星を経由して、被災者の避難状況を把握するという活用も想定されています。
準天頂衛星“みちびき”
 本格的な運用は2018年度から開始する予定です。現在、「みちびき」を活用し、農業や建設も含めた、さまざまな分野で実証実験が繰り返されています。
 例えば、内閣府は10月31日から沖縄県内で、「みちびき」の受信機を載せた小型バスの自動運転の実証実験を行っています。「みちびき」の技術で、より正確な位置情報を把握しながら、事前に決められたルートで走らせ、測位の精度や安定性などを確かめるのが目的で、12月13日まで行われます。
 国連総会で決議された「世界津波の日」の11月5日には、南海トラフ地震が想定される和歌山県広川町と高知県芸西村で、「みちびき」を活用した個人の安否確認システムの実証実験も行われました。
 被災者役を務めた参加者が、避難所に用意されたタブレット端末に氏名、年齢、電話番号、安否情報などの必要事項を入力すると、専用端末から「みちびき」を経由して、内閣府のサーバーに集約されます。自治体が専用回線などを通じて、住民の安否情報を即時に把握できるようになれば、スムーズな救援態勢の確立につながります。
 政府は、こうした実証実験を重ねるとともに、将来にわたって高精度の測位を維持するため、23年度をめどに同衛星を7機体制に整備する方針です。
 公明党は、有望な成長分野として日本版GPSの実現に向け、国会質問や政府への申し入れなどを通して積極的に推進。衛星の7機体制への拡充も力強く後押ししています。

準天頂衛星“みちびき”
茨城県常陸太田市に「みちびき」の管制局
 みちびきの地上システムのうち、最も重要な拠点の1つが、常陸太田市に置かれています。
 準天頂衛星システム「みちびき」の地上システムは日本全国に7箇所あります。管制局は常陸太田(茨城県)と神戸(兵庫県)との2カ所にあります。この施設は、衛星の位置、姿勢などについて監視と制御を行うとともに、5カ所ある追跡管制局や各地の監視局など地上各設備の監視・制御も行います。このうち常陸太田には、追跡管制局も設置されています。