ノーベル平和賞(核兵器廃絶日本NGOネットワークのHPより)
核兵器禁止条約は、この世界的な危機の時にあって、未来への道筋を示す
 12月10日、非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)に、ノーベル平和賞が授与されました。
 公明党の山口那津男代表は11日、次のような祝意の言葉を発表しました。
 今年のノーベル平和賞が、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に授与され、その授賞式典に、被爆者の代表、広島・長崎両市長をはじめ、日本からも関係の皆様がご参加されましたことを、心よりお喜び申し上げます。
 今回の受賞によって国内外で核軍縮・不拡散に向けた機運が高まることは、大変喜ばしいことです。
 その受賞理由として、本年7月の核兵器禁止条約の採択への貢献があげられています。核兵器の開発や保有、使用を法的に禁止しようとする、多くの方々の思いが、条約採択という形で実を結んだことは、核廃絶という大局的な流れの中で、画期的な一歩だと評価します。
 核廃絶の実現には、核保有国の理解が欠かせません。日本がその橋渡し役を担うことが重要であり、公明党がその先頭に立っていくことを改めてお誓いし、お祝いの言葉に代えさせていただきます。

 ノーベル平和賞の授賞式は、10日午後1時(現地時間)からノルウェーの首都オスロの市庁舎で行われ、ICANのベアトリス・フィン事務局長と、広島出身の被爆者サーロー節子氏が受賞記念講演を行いました。今こそ核兵器の終わりの始まりをと呼び掛けました。
 授賞式には、日本から日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中熙巳代表委員、藤森俊希事務局次長、ICANの川崎哲国際運営委員、広島市の松井一實市長、長崎市の田上富久市長と共に、ICANの国際パートナーとしてノルウェー・ノーベル賞委員会から招へいを受けた創価学会インターナショナル(SGI)の代表が出席しました。

ICANパレード(核兵器廃絶日本NGOネットワークのHPより)
 ICANは、核兵器を禁止し、廃絶することを目指す世界各地のNGOの連合体です。現在101カ国468団体が参加し、スイスのジュネーブに事務局を置いています。医療関係者の集まりであるIPPNW(核戦争防止国際医師会議)を母体として、2007年にオーストラリアで発足しまし、オーストリアで正式に活動を開始しました。SGIはICANの国際パートナーとして、展示の制作・巡回を協働し、核兵器の非人道性を訴える草の根レベルの意識啓発等を行ってきました。
 発足から10年で、空前の世界的広がりを持つ“市民の連帯”を築き、核時代の終焉に挑むんでいます。
 今年(2017年)7月、122カ国の賛成を得て、国連で「核兵器禁止条約」が採択。史上初めて、核兵器の使用や開発、保有、使用の威嚇などを禁じる国際条約が誕生しました。条約発効に必要な50カ国の署名・批准は現在、道の途上にあります。
 一方、核兵器保有国などは“分断を招く”として同条約を非難。また、核開発などを巡る世界各地の緊張は高まっています。
 国際社会が岐路に立たされる中で開かれた授賞式。“前進か後退かではなく、どちらの「終わり」を選択するかということなのだ”と、講演した二人は、聴衆一人一人に語り掛けていました。
 ――世界には今も約1万5000発もの核兵器が存在している。「この事実があまりにも非道であり、それがもたらす結末が想像を超える規模のものであるがゆえに、多くの人々はこの残酷な現実をただ受け入れてしまっているようです」「このような兵器に私たちが支配されるのを許していることこそ、異常なのです」(フィン事務局長)

 核兵器禁止条約の採択が、保有国と非保有国の分断を深めたという議論もあります。しかし、それはむしろ、核兵器廃絶に向けた議論をより幅広い人々と共有するために、どのような立脚点に立つべきかを考える良い機会を提供したものです。誰にも、大切なものがあります。そしてそれを守りたいと思うのは、人間の自然な感情です。そこには、何の理屈もありません。こうした人間の普遍的な感情に基づいて、異なる立場を乗り越える新しい安全保障のビジョンをわかりやすく、そして力強く打ち出すことが必要です。
 そしてのそのビジョンは、人々を核抑止論という悪夢から呼び覚まして、核兵器廃絶への大きな共感に広げていくものです。
 核兵器廃絶条例は、人類の社会の目指す到達点を明確にしたものです。
 核廃絶の実現には、核保有国の理解が欠かせません。保有国と非保有国の橋渡しを日本が担うことが最も重要です。「賢人会議」のような場で、被爆者の声を世界に届けることで、地域の中で核廃絶への思いを共有する人を増やすことで、草の根の行動を進めていきたいと決意します。

 フィン事務局長は、ノルウェー・ノーベル委員会、この運動に惜しみなく時間とエネルギーを費やしてきてくださった人々、共通の目標に向けて前進するために連携して取り組んでこられた勇気ある政策形成者や専門家、この恐ろしい脅威を世界から取り除くことを誓っているすべての人々に感謝を捧げ、概要、以下のように述べました。

◯未だ世界中の数十カ所に、人類を破壊する1万5000個もの核兵器が置かれています。この事実があまりに非道であり、それがもたらす結末が想像を超えるほどの規模のものであるがゆえに、多くの人々はこの残酷な現実をただ受け入れてしまっているようです。私たち全員を取り巻くこの異常な道具について考えることなく、日々の暮らしをおくるためにです。
◯このような兵器に私たちが支配されることを許していることこそ、異常です。私たちの運動を批判する人たちは、私たちは非理性的で、現実に基づかない理想主義者であると言います。核武装国は決して彼らの兵器を手放さないと。
◯核兵器禁止条約は、この世界的な危機の時にあって、未来への道筋を示しています。それは、暗い時代における一筋の光です。そしてさらに、それは私たちに選択を与えています。二つの終わりのどちらをとるかという選択です。核兵器の終わりか、それとも、私たちの終わりか。
◯前者の選択を信じることは、愚かなことではありません。核を持つ国が武装解除できると考えることは、非理性的なことではありません。恐怖や破壊よりも生命を信じることは、理想主義的なことではありません。それは、必要なことに他なりません。
◯私たち全員が、この選択を迫られています。そして私は、すべての国に、核兵器禁止条約に参加することを求めます。すべての国に呼びかけます。私たちの終わりではなく、核兵器の終わりを選びなさい。この選択こそ、核兵器禁止条約が投げかけているものです。
◯私たち市民は、偽りの傘の下に生きています。核兵器は私たちを安全になどしていません。核兵器は私たちの土地や水を汚染し、私たちの体に毒を与え、私たちの生きる権利を人質に取っているのです。
◯世界のすべての市民に呼びかけます。私たちと共に、あなたの政府に対して、人類の側に立ち核兵器禁止条約に署名するよう要求してください。私たちは、すべての国の政府が理性の側に立ちこの条約に参加するまで活動し続けます。

続いてサーローさんは、私は、広島と長崎の原爆投下から奇跡的に生き延びた被爆者の一人としてお話をします。私たち被爆者は、70年以上にわたり、核兵器の完全廃絶のために努力をしてきましたと述べ、概要、以下のようにスピーチしました。

◯私たちは、世界中でこの恐ろしい兵器の生産と実験のために被害を受けてきた人々、長く忘れられてきた、モルロア、エッケル、セミパラチンスク、マラリンガ、ビキニなどの人々と連帯しています。
◯私たちは、被害者であることに甘んじていられません。私たちは立ち上がったのです。私たちは、私たちの生存の物語を語り始めました。人類と核兵器は共存できない、と。
◯今日私は皆さんに、この会場において、広島と長崎で非業の死を遂げたすべての人々の存在を感じていただきたいと思います。皆さんに、私たちの上にそして私たちの周りに、25万人の魂の大きな固まりを感じ取っていただきたいと思います。その一人ひとりには名前がありました。一人ひとりが、誰かに愛されていました。彼らの死を無駄にしてはなりません。
◯米国が最初の核兵器を私の暮らす広島の街に落としたとき、私は13歳でした。私は今でも鮮明にその朝のことを覚えています。8時15分、私は窓から目をくらます青白い閃光を見ました。私は、宙に浮く感じがしたのを覚えています。
◯静寂と暗闇の中で意識が戻ったとき、私は、自分が壊れた建物の中で身動きがとれなくなっていることに気がつきました。私の同級生たちが「お母さん、助けて。神様、助けてください」とかすれる声で叫んでいるのが聞こえ始めました。
◯幽霊のような姿の人たちが、足を引きずりながら行列をなして歩いていきました。恐ろしいまでに傷ついた人々は、血を流し、火傷を負い、黒こげになり、膨れあがっていました。体の一部を失った人たち。肉や皮が体から垂れ下がっている人たち。飛び出た眼球を手に持っている人たち。お腹が裂けて開いている人たち。そこから腸が飛び出て垂れ下がっている人たち。人体の焼ける悪臭が、そこら中に蔓延していました。
◯このように、一発の爆弾で私が愛した街は完全に破壊されました。住民のほとんどは一般市民でしたが、彼らは燃えて灰と化し、蒸発し、黒こげの炭となりました。その中には、私自身のの家族や、351人の同級生もいました。
◯その後数週間、数カ月、数年にわたり、何千人もの人たちが、放射線の遅発的な影響によって、次々と不可解な形で亡くなっていきました。今日なお、放射線は被爆者たちの命を奪っています
◯責任ある指導者であるなら、必ずや、この条約に署名するでしょう。そして歴史は、これを拒む者たちを厳しく裁くでしょう。彼らの抽象的な理論は、それが実は大量虐殺に他ならないという現実をもはや隠し通すことができません。
◯「抑止」論なるものは、軍縮を抑止するものでしかないことはもはや明らかです。私たちはもはや、恐怖のキノコ雲の下で生きることはしないのです。
◯核武装国の政府の皆さんに、そして、「核の傘」なるものの下で共犯者となっている国々の政府の皆さんに申し上げたい。私たちの証言を聞き、私たちの警告を心に留めなさい。そうすれば、必ずや、あなたたちは行動することになることを知るでしょう。あなたたちは皆、人類を危機にさらしている暴力システムの不可欠の一部分なのです。私たちは皆、悪の凡庸さに気づかなければなりません。
◯世界のすべての国の大統領や首相たちに懇願したい。核兵器禁止条約に参加し、核による絶滅の脅威を永遠に除去してください。
◯今夜私たちがオスロの街をたいまつを灯して行進するにあたり、核の恐怖の闇夜からお互いを救い出しましょう。どのような障害に直面しようとも、私たちは動き続け、押し続け、この光を分かち合い続けます。この光は、この一つの尊い世界が生き続けるための私たちの情熱であり、誓いなのです。

全文の英語は、こちらでご覧いただけます(フィン事務局長のスピーチの下方に掲載)。
https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/peace/laureates/2017/ican-lecture_en.html
核兵器廃絶日本NGOネットワークのHPより引用
https://nuclearabolitionjpn.wordpress.com/2017/12/11/nobelweek2017-2-nobelpeacepriceceremony/#more-1809