茨城県北ジオパークのHP
 12月22日、日本ジオパーク委員会は、貴重な地形や地質が残る自然公園「日本ジオパーク」について審査した結果、「茨城県北ジオパーク」の認定を取り消しました。
 これに対して、県北ジオパーク推進協議会長の三村信男茨城大学学長は「誠に残念。会員と今後の対応を検討する」とコメントを出しました。一度認定されたジオパークが、認定を取り消されるのは県北ジオパークが初めてです。
 ジオパークは、その名の通り「大地の公園」と呼ばれ、貴重な地形や地質が残る場所を保存、利活用する取り組みです。日本ジオパーク委員会により認定されたは日本ジオパークは43地域あります。県北ジオパークは認定が取り消されたことにより、今後ジオパークと名乗れなくなり、ロゴマークも使えなくなってしまいます。

 ジオパークはヨーロッパから始まりました。良く似た取り組みにユネスコの“世界遺産”があります。世界遺産は自然や文化の保護、保全が基本です。一方、ジオパークは科学的に貴重な地質や地形を地域振興に活用しようという目的があります。2004年、ユネスコの支援で世界ジオパークネットワークが設立され、2007年には日本ジオパーク連絡協議会ができました。2015年から世界ジオパークもユネスコの事業となりました。残念ながら、ジオパークは世界遺産に比べて、一般の認知度が低い特徴もあります。世界遺産は一度認定されると取り消されませんが、ジオパークは4年ごとの認定が必要です。
 県北ジオパークは2011年9月に初めて認定されました。2015年12月には「持続可能な運営体制が構築されていない」と指摘を受け、条件付きで認定が継続されました。この指摘を受け、県北ジオパーク協議会はオブザーバー参加だった県や水戸市、日立市、大洗町のほか、常陽銀行と筑波銀行を正会員として体制を強化しました。評価の高いインタープリター(ジオパークの案内人)によるツアーなどに力を入れてきました。地域住民の中にも、県北ジオパークの存在は広く知られるようになってきました。
 2015年12月14日に開催された日本ジオパーク委員会の詳細な議事録が公開されていますので、参考のために転載しておきます。
 昨年12月22日の日本ジオパーク委員会では、企業やガイド、学生などの活動を評価する一方、「関係者の連携が不足し、運営体制が脆弱」と指摘。拠点施設の整備やジオストーリーの開拓も不十分で、改善されていないと判断され、認定が取り消されました。
日本ジオパーク新規認定および再認定審査結果
2017年12月22日
日本ジオパーク委員会
 会員企業、地元企業、ガイド団体、学生プロジェクト等の民間の働きに活動が支えられており、大学に事務局が設置されていることで、比較的自由な活動を展開できる環境がある。
 一方で、関係者間の連携が不足しており、それぞれの取り組みがジオパークの活動として表れていない。また、協議会や事務局の運営体制が脆弱であるために、前回の指摘事項である拠点施設の整備やジオストーリーの開拓などが不十分である。ジオパークとして共有できる基本計画と実施計画がなく、保全・教育・ジオツーリズム・ネットワーク活動等の柱も不明確である。
 以上のことから日本ジオパークとしての認定を取消しとする。
 
 認定取り消しのニュースは、県北ジオパークの関係者に大きなショックを与えました。県北振興のツールとして県北ジオパークを活用したいと考えていた茨城県にとっても青天の霹靂でした。
 創設から現在まで県北ジオパークの中心者として、その労を執っている天野一男茨城大名誉教授は、地元茨城新聞に以下のように発言されています。
 (ジオパーク認定取り消し)だからといって県北ジオパーク自体の魅力が変わることはありません。地域振興の手段ということで、国内のジオパークのほとんどは自治体が中心になって活動しています。県北ジオパークは茨城大学が中心となってで運営している国内唯一の貴重な存在でした。
 インタープリター(大地の案内人)養成も進んでいます。2017年11月には300人を超す大勢の聴講者が来てくれました。案内人の説明を通じ、自分の住む土地について知ってもらえるといい。草の根の運動が大事。生涯学習の一環にもなります。
 県北地域の特徴は、日本で見つかっている最も古い5億年前の岩石があることです。日本列島の「タネ」があり、現在につながる歴史、列島の形成過程が一貫して見られます。案内人は21世紀の「常陸国風土記の語り部」と言えます。

5億年前の岩石が露出する神峰公園
 県北ジオパーク協議会では、日本ジオパーク委員会から詳細な報告を得た後、その対応策を協議することにしています。
 井手よしひろ県議は、県北ジオパークの重要性を深く認識しており、何としても再認させるべきと考えています。これまでの経過をみるに、県を始めとする自治体が前面にでて、事務局体制を強化すると共に、拠点施設を整備する必要があります。それには、金銭的投資、人的投資がかなり大きなものになると考えられます。
 また、“県北”という大きな括りの中で、水戸・千波湖(水戸市)、平磯海岸(ひたちなか市)、常磐炭田(北茨城市)、袋田の滝(大子町)など10市町村に15エリアを、一つのジオパークとして運営していくことが可能かと行った視点で見直す必要があると考えます。
 少なくとも県も市町村も、県北ジオパークは茨城大学が運営するもという認識は、即座に転換する必要があります。

第25回日本ジオパーク委員会議事録
2015年12月14日
(県北ジオパークの条件付再認定が決まった委員会の議事録)
  • 委員:三人の審査員の見解は条件付再認定。公開版の2頁め、まずジオサイトと保全について。 国立公園、国定公園のエリアはないのだが県立公園があって、県がある程度保全活動をしている場所でもあるのだが、インタープリターによるその説明がない。認識していない可能性がある。化石をどんどんとってあげてしまうということを普通にしている。
    二番目の教育活動。茨城大学が事務局なので地質情報活用プロジェクトのメンバーがインタープリターと連携して地域教育活動している。その中ではある程度学術的情報の質が保証されて提供されているが、それ以外の情報が学生のなかにはないので地質と他の情報をつないだストーリーがほとんど聞かれない。地層の話と歴史の話をしてもその関係がわかっていないのにインタープリターはそれでよいと思っている。ジオストーリーがよくわかっていない。例えば岡倉天心という日本美術史に貢献した人の画廊があるジオサイトで、彼がどういう景観で美術をうみだしたのかの必然性の説明があまりない。すぐ炭酸塩コンクリーションの話ばかり出てくる。また風船爆弾の話とか。なぜその話題がジオパークにかかわっているのか、よくわからないまますすんでしまうジオツアーであった。
    茨城大学のなかでもジオパークに協力するという先生方が委員会をつくって活動はされているが、実際行っているのは茨城大学地質情報活用プロジェクトと退官された天野名誉教授。茨城大学理学部地質の先生が天心堂に津波の看板を設置したのだが、そこに茨城県北ジオパークのロゴマークが入っていないので指摘した。学内でもそのような連携がとれていない。協議会会長が学長なので、総合大学として様々な切り口で研究していってほしいのだが、実際は大学内でも動いているのはごく限られた部署だけ。
    三番目の管理組織・運営体制。この中の課題としてはジオパークエリアである日立市、水戸市、大洗町が協議会の会員でなくオブザーバーとしての参加であること。会員でないのにインタープリターが活発に活動している。本当にジオパークとして正式に認められているのかあいまいな地域でジオパークという名前が出され、ジオツアーが展開されているので困ったものだと思う。学長も、2市1町に対し、協議会員になるよう交渉はしている のだが、どうしても日立市は入ってくれない、理由はわからないという状況。事務局には3人お り、一人は臨時職員、事務局長と他の職員は兼務なので、とても7市町村をまとめる機能がない。
    次にジオツーリズム。ジオネットというインターリターが作る自主団体があり、それが市町村の担当者と企業(旅行会社)、学生らと連携してジオツアーをきちんと実施している。JTBのウ ォーキングツアーには2〜300人が参加し、インタープリターがそこで地域の見どころを紹介しながら歩く会が好評だった。活動はしているのに、ジオパークに行きたいがどこに聞けばいいのかわからない、茨城県北地域が何をやっているのかが見えないなど外への情報発信ができていない。
    5番目の国際対応およびネットワーク。英語の看板がある程度であまり重要視していない。全国大会やJPGのパブリックセッションなどに出席して他のジオパークの人々との交流をほとんどしておらず、またそれでよしとしているのが問題。ジオパークの保全に対する考え方をジオツアーの中でどのようにストーリーを作っていくか、どんな看板がよいかを議論している中に参加してみないといけない。自分たちだけでよいと思っている「お説教的」な看板しかない。活動は懸命にやっているのにもったいない。防災安全については東日本大震災の被災した箇所に津波の遡上高を表示したり、被災当時のビデオを上映したりしているが、それをどのように教育に活用しているかは確認できなかった。4年前の指摘事項の対応は現地審査の報告書のなかで10項目あり、それぞれの対応が書かれている。その中で非常に重要なものとして「ジオパーク事務局機能の大学から地域への移行」ができていない。ジオストーリーづくり関連が3つくらいあるが十分なものではない。コアセンター、サテライト施設の設置として茨城県庁の25階展望ロビーを拠点施設としたほか、高萩市にあるふるさと自然公園センター、ビジターセンターのような施設に拠点施設を作ったが、ここはインタープリターが手作りで資料を作っており、質的に少々問題があり、サテライト施設としては不十分。化石の発掘は行われていないと報告されているが、実体はそうではなかった。地質関係のジオサイトは充実しているが地球生態系のサイトはやや貧弱である。
    生物専門のインタープリターの説明については詳細版に記載しているとおり。地域の盛り上がり、インタープリターの活動はすばらしく、民間企業のサポート、筑波銀行をはじめとして地域の方の取り組みも素晴らしい。茨城大学の学生もそれにうまく参加しており地域が盛り上がっていこうとしているのだが、事務局がそれを全く把握できていない。自分達はよかれと思って活動しているので質が落ちてきており、残念ながら化石を配ることもよしとしている。とにかく他のジオ パークに行って勉強してほしい。
  • 委員:前回の課題に対してほとんどできていない。宿題としては指摘事項を2年間で確実に実行することがまず重要。それから組織の再構築。拠点施設も常設されているのではなくて、インタープリターが来て説明したりビデオを流しているだけ。拠点施設はあるといっているが、なきに等しい。
  • 委員長:300名のインタープリターはジオパークのガイドとして養成されたのか?
  • 委員:はい。茨城大学のガイド養成講座を受けてインタープリターが自主的に活動。インタープリター同士で研鑚し合っている。行政はお金を出さないで、自主的に活動している。ボトムアップ的素地としてすばらしいが、ジオパークの質としては疑問。よそのジオパークの活動を見れば地域の人の活動が変わる可能性もある。もったいない状況。
  • 顧問:風船爆弾とジオとの関わりは?
  • 委員:その説明はない。せいぜい、風船爆弾を飛ばすのにちょうどそこにジェット気流があったことや、風船爆弾を長時間飛ばすために必要なバラストとなる砂を調達するため海岸が近い、という程度。ジオとはほとんど関係ないのでジオツアーでいかないほうがいい。
  • 顧問:4年前に視察に行った際、大学から運営母体を市町村に移すべきだと主張してきたのだが、だんだん市町村がそっぽを向くようになった。インタープリターは熱心にやっていたので、運営についてもっと考える必要性があると思った。
  • 委員:救いなのは、県のほうが、県北振興局(正確には“企画部県北振興課”)を作ったこと。その三本の柱のうちの1本がジオパー クによる地域振興を打ち出している。もう少し、県がテコ入れしてほしいと言っても一歩引いてしまう。大学がやっているからとか市町村がやっていると言って県はなかなか動かないなかで、県北振興局を作って一応予算をとっている。県がもっと積極的になってくれるとよい。大学のほうは、持続性という観点からすると学長が今年なったばかりで2年後誰になるかわからない。天野さんの後任はいない。学長から指名されたジオパーク担当の教員もとまどっている。職員は文部省からの派遣で2年後にはまた変わってしまう。大学の組織自体が持続性に欠けている。
  • 委員長:天野さんは内外のジオパークをよく見に行っておりよくわかっていると思うので部外者でも声が届くようにすべき。
  • 委員:行政の人はこれでいいと思っている。しかしそれでは続かないということをわかってほしい。
  • 委員長:インタープリターたちを有効にできるような組織の整備が主なところか。
  • 委員:組織とエリア。
  • 委員長:自治体の協力が必要だが可能性はあるか。それには県の協力がいる。トップダウンはよくないのだが県北とついているわけなので。以上のような条件を付けて2年後の審査を受けるということでよろしいか。