茨城県議会(手前)と県庁
 茨城県は、新年度(2018年4月1日)よりに、大規模な組織改編を行う方針を固めました。
 去年8月の県知事選で、大井川和彦知事が新たに誕生。大井川知事は昨年12月、新たな県政の指針「政策ビジョン」を公表しました。この中で、研究施設やIT関連企業、東京圏の本社機能の誘致をはじめ、もうかる農業の実現、県産食材の国内外への販路拡大などを掲げました。農産物の東京市場での販売促進や茨城空港の台湾チャーター便就航に関しては、自ら現地でトップセールスに乗り出しています。
 今回の組織改革の目玉は、何といっても「営業戦略部」の設置です。これまでは商工労働観光部や農林水産部などで、それぞれ進められてきた県内への企業誘致や観光振興、それに県産品の販路拡大などの営業活動を、1つの部署でまとめて行うことにします。これによって、外部への営業活動が統一された方針のもとで強化されるということです。
 都道府県単位で、県の強みを全国に発信する部門に、一般企業と同様に「営業」と名付けたところに、大井川知事のアグレッシブな姿勢が端的に現れています。
 愛媛県が「愛のくに・えひめ営業本部」といった課レベルの営業部門を設置していますが、部レベルの「営業」を標榜する組織は、日本初ではないかと思われます。
茨城県の組織改正
 また、これまで主に政策の立案などを担ってきた「知事直轄」の部局を廃止しました。従来の企画部を「政策企画部」に改めて、県政運営の基本方針となる「県総合計画」の策定などを行うための部署に再編します。
 さらに、大規模な災害に迅速に対応するため、これまで生活環境部にあった防災部門を格上げして、「防災・危機管理部」を新たに設置します。保健福祉部には部長級を1人増やして2人体制にする方針です。大井川知事の公約も目玉でもある医師確保など医療体制の整備に力を入れるため、医療部門と福祉部門に、各々担当部長を置くことにします。
 こうした組織改正で、現行の9部局30課体制は、11部局93課体制になり、2部局13課室が増えることになります。県では、市町村に派遣した県職員(副市長など)を引き上げることで、人材を対応します。
 県は、こうした組織改編をことし4月に行う予定で、そのために必要な条例案を、2月開会する定例県議会に提案することにしています。なお県議会では、条例改正を受けて、常任委員会の編成替えなども必要となります。
 組織改正によって、県の業務の進捗状況とその責任が明確になる効果が期待されます。その組織が持つ目的にそった組織編成替えであり、今までにない新たな発想の実現と評価します。ただ、かなり大きな組織改正となるために、当初の混乱は大きいかもしれません。また、今後具体的に人事が行われるわけですが、県職自体が大井川知事の求める組組織改正の織の在り方を理解し、同じ思いで仕事を進められるかに、今回の組織改正の成否がかかっています。
茨城県行政組織の改変の概要(平成30年度より実施予定)
(1) 「営業戦略部」の設置
改正の理由:企業誘致、海外展開観光、県産品販路拡大、港湾の利用促進などの営業活動を強力に推進するため、「営業戦略部」を設置する。
(2) 企画部を「政策企画部」に改組(知事直轄の廃止)
改組の理由:「新しい茨城」づくりに向けた政策立案、総合計画、地方創生総合戦略等の推進に係る一体的な推進体制を整備するため、企画部を「政策企画部」に改組する。
(3) 生活環境部を「県民生活環境部」に改組、「防災・危機管理部」の設置
改正の理由:災害時の迅速な対応を行うため、防災・危機管理局を部として昇格させる。女性活躍・国際交流業務及びオリンピック・パラリンピック関係業務を生活環境部に移管し、同部を「県民生活環境部」に改組する。
(4) 商工労働観光部を「産業戦略部」に改組
改正の理由:産業立地、工業団地整備及び土地販売の一元化により、産業基盤の構築に一層迅速に取り組むとともに、産学連携や特区制度の活用・推進等により成長産業の振興に戦略的に取り組むため、商工労働観光部を「産業戦略部」に改組する。
その他の主な組織改正
保健福祉部に「福祉担当部長」(正部長級)を設置(福祉関係の議会答弁も対応)。
営業戦略部に「東京渉外局」を設置。首都圏近郊の営業活動を担う。大阪事務所、北海道事務所は廃止する。
政策企画部に「県北振興局」及び「交通局」(交通政策及び空港対策を所管)を設置。
県民生活環境部に「霞ヶ浦浄化対策監」(本庁次長級)を設置。
産業戦略部に「技術振興局」(中小企業の技術開発支援及び科学技術振興)及び「立地推進局」(産業立地、工業団地整備及び土地販売)を設置。