仮想通貨
 2月2日、仮想通貨の大手取引所「コインチェック」から580億円相当の仮想通貨が流出した問題で、金融庁は顧客の補償に充てる資金が十分にあるのかなど、財務内容を早急に調べる必要があるとして、立ち入り検査を行いました。この問題で、被害を受けた人は26万人にも上っています。

 仮想通貨はインターネット上で取引される“お金”のようなもの。しかし、お金のようにモノとして存在するわけではなく、ネット空間のデータが取り引きされます。
 「ビットコイン」が最もよく知られていますが、ほかにもさまざまな種類があり、今回被害にあった「NEM」もその一つです。これは、現実の貨幣に「円」や「ドル」、「ユーロ」など、さまざまな通貨があるようなイメージです。
 最近では現実の通貨のように支払いに使える店舗も徐々にでていますが、株と同じように投機の対象として購入している人がほとんどだとされています。
 「ビットコイン」は去年の初めには1ビットコイン当たり10万円前後だった価格が、買い注文が集まった12月には200万円を超えました。1年足らずで20倍に急騰したのです。こうした仮想通貨を取り扱うのが民間企業が運営する「取引所」です。「コインチェック」は仮想通貨を取り扱う「取引所」の中でも、国内の先駆者の1つでした。
甘かったセキュリティー対策
 コインチェックに対してはセキュリティー対策が不足していたという厳しい指摘が相次いでいます。取引所は被害を防ぐため、「ウォレット」と呼ばれる仮想通貨用の口座をインターネットにつながっていない場所=コールドウォレットに管理することが常識とされています。外部から不正な操作をされるリスクを減らせるからです。しかし、「コインチェック」は流出したNEMを外部のネットワークにつなげて、取り引きができる状態で管理していました。
 さらにNEMの管理では取り引きのための暗号キーを複雑にするという対策も取っていませんでした。
 取引所の運営母体はほとんどが中小企業です。セキュリティーの知識が不足していて、十分な対策が取れていないケースがほとんどとされています。強固なセキュリティーと監視を導入していれば被害を防げた、あるいは最小限に抑えられたといわれてています。

 このような現状のもと、優先すべきは利用者の保護です。これをないがしろにしていたからこそ、今回のトラブルが起こったのです。
 日本では、昨年4月に施行された改正資金決済法で、利用者保護のための対策を講じているかどうかなどを審査し、仮想通貨を扱う取引所を登録する制度を導入しました。現在、審査を通過し、登録された取引所は16社あります。
 驚くことに、コインチェックが仮想通貨の取扱高で首位を争うほどの最大手であるにもかかわらず、未登録であったという事実です。
 金融庁は、未登録を含む全ての取引所の安全対策の現状を確認する緊急調査に乗り出しました。取引所に利用者保護を優先した対策を徹底するよう指導すべきです。
 3月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、ドイツとフランスが、利用者の保護に向けて、仮想通貨を規制するためのルール案を共同提案するといわれています。日本も、国際的なルールづくりに積極的に関与すべきです。