進学準備金給付金の創設 十分な教育を受けられずに貧困が親から子へ引き継がれる「貧困の連鎖」を断ち切るため、厚生労働省は2018年度から、生活保護世帯の子どもの大学進学支援を強化します。大学や短大などに進学する際に一時金(進学準備給付金)を支給するほか、大学進学者が生活保護の対象から外れる現行制度も一部改善します。
 いずれも公明党が訴えてきた取り組みです。政府は、2月9日閣議決定された生活保護法改正案に進学準備金給付金の創設を盛り込んだほか、2018年度予算案に必要経費として17億円を計上しました。
 生活保護世帯の子どもの大学などへの進学率は、2016年4月時点で33.1%。全世帯の73.2%を大きく下回っていまし。今回の取り組みは、こうした“格差”の是正をめざすものです。一時金は新生活立ち上げの費用に充てることを想定しており、自宅通学生に10万円、自宅外通学生に30万円を支給します。今年3月に高校を卒業し、4月に大学や短大、専修学校(専門課程)などに進学する子どもから対象となる予定です。給付時期など詳細は今後決まる見通しです。
 また厚労省は、大学生などが実家から通学する場合については、生活保護費のうち家賃などに充てる「住宅扶助」の減額を行わないことも決めました。
 現行の生活保護制度では、就労せずに大学進学する子どもは、家族から独立した別世帯として扱われています。この「世帯分離」の仕組みによって子どもが生活保護の対象外となり、その分、一家の保護費も減ってしまうことが、進学の妨げになると指摘されてきました。
 そこで厚労省は、関係通知を改正し、今年4月から住宅扶助を減額しない運用を開始します。2017年度以前に進学した大学生などがいる世帯も対象になります。
 このほか厚労省は、高校卒業予定者がいる生活保護世帯が、大学進学に向けた費用について相談や助言を受けられる体制なども整備します。
 公明党は昨年8月、厚労相に対し、2018年度予算概算要求に向けた重点要望で、住宅扶助の減額廃止などを提案しました。昨年12月には、生活保護に関する厚労相宛ての緊急要望で、2018年春の高校卒業生から進学支援を実施するよう求めていました。

所得の低い層とのバランスをとるために生活保護「生活扶助」費の見直し
 生活保護のうち食費などの生活費にあたる「生活扶助」が、平成30年度の見直しで約7割の世帯で減る見通しとなりました。特に、都市部の単身世帯や多子世帯で減額幅が大きく、地方を中心に増額になる世帯もあります。見直しは平成30年〜32年の毎年10月に段階的に行います。
 生活保護基準の改定は5年に1度。今回は地域や世帯類型別に、一般の低所得世帯の消費支出と同水準になるように見直されます。生活保護を受けていない世帯も、生活費は変化しており、そのバランスをとることはあり程度必要です。しかし、減額幅が計算上5%を超える場合は、影響を抑えるために一律で5%の減額としました。
 その結果、一人親世帯に支給する「母子加算」などを含めた生活扶助額は、受給世帯の67%で減少します。8%は現状維持。26%は増える見込みとなりました。
 減額になるケースが多いのは約8割を占める単身世帯です。65歳未満の81%、65歳以上で76%が引き下げになります。例えば東京23区に住む75歳の場合、来年10月から月2000円減って月7万3000円になり、最終的に7万1000円になります。
 子どものいる世帯では57%が増え、43%が減ります。今は中学生までが対象の「児童養育加算」が、来年10月から高校生にも月1万円支給されることになり、子育て世帯では恩恵が多くなります。