海外の液体ミルク
災害用備蓄としても活用可能
 熊本地震などの被災地で活用され、普及を望む声が多い乳児用液体ミルクが、国内で製造・販売できる見通しとなりました。このブログでは、液体ミルクの概要や公明党の取り組みについてまとめました。
 3月12日、厚生労働省は薬事・食品衛生審議会分科会の合同部会で、乳児用液体ミルクの規格基準案を決めました。国内での製造・販売に向けた動きが進んでいます。
 乳児用液体ミルクとは、乳児に必要な栄養が含まれた液体状の乳製品です。常温で保存が可能で、ふたを開けて吸い口を装着すればすぐに飲めるものもあります。
 粉ミルクと違って、お湯で溶かす必要がありません。このため、水や、水を沸かすための燃料の確保が難しい災害時に有効活用できます。
 熊本地震の発生時には、哺乳瓶の消毒や調乳が困難な状況がありました。そのような状況の中、フィンランドの乳製品メーカー「ヴァリオ」が液体ミルク約5000個を無償提供し、熊本県益城町や西原村などの保育所に配られました。水道やガスなどのライフラインがない場合でも、衛生的なミルクを乳児に与えることができ、多くの母親たちに喜ばれました。
 海外では粉ミルクと同じように普及していますが、国内では製造・販売しているメーカーがありません。
 日本の乳児用粉ミルクは、食品衛生法に基づく「乳等省令」で成分の規格が決められています。でも、液体ミルクの成分規格が今までありませんでした。安全性を担保する基準がないために、企業が製造・販売できなかったのです。
 熊本地震がキッカケとなり、液体ミルクへの関心の高まりもあり、政府は流通に向けた議論を進行。3月12日に開かれた厚労省の合同部会で、規格基準の案が決定されました。
 厚労省は、液体ミルクを「調製液状乳」と定義。粉ミルクに当たる「調製粉乳」や、常温で保存できる製品も存在する「乳飲料」の規格基準に準じる形で、細菌数や容器包装などの規格基準案を決めたのです。
 基準作成のために業界団体の日本乳業協会が厚労省に提出したデータでは、加熱殺菌後の液体ミルクを缶やレトルトパウチ、紙パックで長期間、常温で保存した結果として、微生物や細菌などが確認されず、乳幼児に必要な栄養素も残ることが示されました。賞味期限は缶やレトルトパウチで9〜12カ月、紙パックで6カ月を想定しています。
 液体ミルクが日本で作られるようにするためには、まだ必要なプロセスがあります。今後、厚労省は国の食品安全委員会の健康影響評価や意見公募(パブリックコメント)を経て、省令を改正し、規格基準を定めることになります。
 また、乳児の発達に適した「特別用途食品」として表示するための許可基準の作成を消費者庁が進めています。
 年内に省令が改正されても、その後、製品の賞味期限と同じ期間、試験する必要があるため、店頭に並ぶのはまだ先になりそうです。

公明党の液体ミルク解禁への取り組み
 公明党は2017年2月に女性委員会の子ども・若者支援プロジェクトチーム(座長=佐々木さやか参院議員)が普及に向けた政府との意見交換を行うとともに、2017年3月の参院予算委員会で佐々木さんが、早期解禁・普及や災害用備蓄としての積極的な活用を主張。6月に政府が取りまとめた「女性活躍加速のための重点方針」には、「製品化の後押しに向けた取り組みを継続的に実施する」と明記されました。
 さらに、今年3月20日にもPTが会合を開き、関係省庁と意見交換しました。会合で佐々木さんは、「防災の観点からも重要。安全性を大前提にして、後押ししていきたい」と訴えました。