薔薇の花
政治主導で被害者の早期救済を
 旧優生保護法に基づき障がい者らが不妊手術を強制されるなどした問題では、国に損害賠償を求める訴訟が相次いで起こされ、国会でも救済へ向けた動きが出ています。
 旧優生保護法とは、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止し、母性の生命健康を保護すること」を目的に、障がい者らに対し、本人の同意なしでも不妊手術を行えることなどを定めた法律です1948年に議員立法で制定され、96年に差別的な規定を撤廃した「母体保護法」に改正されるまで存続しました。
 この法律の源流は、19世紀に英国で提唱された「優生学」です。人の才能は遺伝で受け継がれ、結婚相手の選択などで子孫が改良できるという考え方です。1907年に米インディアナ州、33年にナチス・ドイツ、34年にスウェーデンで、障がい者らの不妊手術を実施する法律が相次いで制定されました。日本では、戦後の人口過剰問題などの事情もあったとされますが、戦後に制定されたのは特異な例です。
 厚生労働省によると、本人の同意なしで不妊手術を受けたのは男女1万6475人。同意のあった遺伝性疾患やハンセン病などを理由とするケースを加えると、2万5000人近くに上ります 。
 茨城県では5月18日現在、男女21人に不妊手術が施された事実が確認されています。
 医師が診断し、医師や民生委員らで組織する都道府県の優生保護審査会で手術の適否を決定しました。手術費用は国が全額負担しました。
 宮城県の60台女性が今年1月、国家賠償請求訴訟を起こしたのがきっかけで問題が表面化しました。1998年には既に、国連の人権規約委員会が強制不妊手術の対象者に法律で補償を受ける権利を規定するよう勧告。2016年にも国連の委員会が被害規模の調査や、補償などの法的救済を勧告していました。
 現在、救済に向けた動きが、政治主導で進んでいます。3月に被害者への謝罪や補償などを検討する超党派の国会議員連盟が設立されました。自民、公明両党もワーキングチーム(WT)を立ち上げ、議員立法も含めた救済のあり方を検討しています。WTの要請で、厚労省は都道府県などに関連資料の保管状況や件数などの調査を依頼。市町村や医療機関、障がい者施設などにある資料も保全するよう通知しました。