チューリップ
 5月18日、高齢者や障がい者が円滑に移動できる社会をめざす改正バリアフリー法が国会で成立しました。
 12年ぶりとなる今回の改正は、急速な人口減少・少子高齢化に対応し、バリアフリー化を一段と加速させることが目的です。障がい者が十分に社会参加できる共生社会の実現に向けた取り組みを、2020年東京五輪・パラリンピックの開催を機に、東京だけでなく全国各地で推進する点からも大きな意義があります。
 主な改正点は、▽エレベーターの設置や職員を対象にした介助研修などの計画策定と進捗状況の公表を公共交通事業者に義務付ける▽高齢者や障がい者も参画しバリアフリーの取り組みを評価する協議会を市町村に設置する▽新たに導入する貸切バスや遊覧船もバリアフリー基準の適合対象とする――などです。
 特に注目したいのが、市町村に対し、バリアフリーのまちづくり方針や重点対象地区を定める「マスタープラン」と、事業の実施地区や内容を特定する「基本構想」の策定を努力義務として規定している点です。マスタープランの策定は23年度までに300市町村での実現を目指します。
 既設地下鉄駅の構内に多機能トイレを設置する十分なスペースがない場合、駅と近接する建築物の内部に設置を促す制度も創設する。駅と近接する建築物の新改築時に、共用部の連絡経路を含んだ多機能トイレの床面積を容積率に算入しない仕組みを導入します。
 不特定多数が利用する建築物や道路、都市公園、路外駐車場といった施設管理者に対しては、施設のバリアフリー情報の提供を努力義務化します。市町村が官民の集客施設などのバリアフリー整備状況を可視化した地図を作る際、民間事業者に協力してもらう制度も創設されます。
 改正法のうち、マスタープランと基本構想の策定規定と、施設のバリアフリー情報の提供を努力義務化する規定は公布から半年以内に施行します。既設地下鉄駅に近接する建築物に多機能トイレの設置を促す容積率特例規定は19年4月1日に施行します。
 バリアフリーのまちづくりを進める上で課題となっているのが、施設単位での取り組みが先行し“移動の連続性”が確保されていないケースが少なくないことです。
 例えば、駅や公共施設はバリアフリー化されても、両者をつなぐ歩道が「点字ブロックがない」「幅が狭く車いすと人がすれ違うことができない」という状態では連続した移動は難しくなります。
 このため、まず市町村が重点地域を設定し、一体的にバリアフリー化を実施する方針を示すのがマスタープランです。個々の事業は、このプランに基づいて計画的に進められる。衆院の参考人質疑で障がい者団体の代表は「全ての自治体でマスタープランが作られればバリアフリーが進む」と評価しています。
 ただ、市町村にはプランづくりに必要な人材やノウハウの面で差があることに目配りが必要です。ガイドラインの提示や先進事例の情報提供、作成経費の助成など国による支援が重要となります。