地方都市に若者のUIJターンを
 地方への移住を望む若者をどう呼び込むか。とりわけ就労環境に関する情報を積極的に発信することに知恵を絞る必要があります。
 若者の地方移住の促進策について、政府の有識者会議(わくわく地方生活実現会議)が報告書案を取りまとめました。近く梶山弘志地方創生担当相に提出され、政府が6月に策定する地方創生施策の基本方針に反映される予定です。
 報告書案の大きな柱となっているのが、Uターンなど大都市圏から地方へ移住するための施策の強化です。
 東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県)は、昨年1年間に12万人の転入超過となりました。その大半は19歳から29歳までの若者です。
 一方で、地方移住に対する若者の関心も高い事も事実です。認定NPO法人ふるさと回帰支援センターを利用した人のうち、40代までが占める割合は増加傾向にあります。「静かな環境で仕事に専念したい」「豊かな自然の中で子育てしたい」など理由はさまざまあります。
 こうしたニーズに的確に応えることで、東京圏一極集中の流れを少しでも変え、地方創生につながることが期待できます。
有識者会議資料
 特に若者にとって働く場の確保が重要です。その意味で注目したいのが、有識者会議の報告書案が地方の中小企業による求人活動を支援する取り組みを提言していることです。
 例えば、地方の求人情報を網羅したウェブサイトの創設です。地方には、独自の技術で世界のトップシェアを占めるような中小企業も少なくありません。しかし、情報発信力で東京圏の大企業に及ばず、十分に認知されているとはいえません。また、地方の中小企業にとって、大手の就職情報サイトを活用するにはコスト的に無理があるという面もあります。
 人口減少、少子高齢化のスピードは地方ほど速く、中小企業の人手不足は深刻です。こうした中で、移住を希望する若者と地方の中小企業を結び付ける取り組みを進める意義は大きいものがあります。併せて、ハローワークでの相談体制の拡充も検討すべきです。

有識者会議資料
 もう一つ注目したい指摘が「関係人口」の拡大です。「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者を指します。地方圏は、人口減少・高齢化により地域づくりの担い手不足という課題に直面しています。地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待できると指摘しました。