緑の農地
 近年、農地について相続が発生しても、登記名義人が変更されず、権利関係が不明確となるケースが多くなっており、担い手への農地の集積・集約化を進める上で阻害要因となっているとの指摘があります。
 2016年、農林水産省では、このような相続未登記農地等の全国の状況を把握するため、農業委員会を通じて、実態調査を実施しました。調査の結果、2018年においては、全国で、
(1) 登記名義人が死亡していることが確認された農地の面積は約47万7000ha
(2) 登記名義人が市町村外に転出しすでに死亡している可能性があるなど、相続未登記のおそれのある農地の面積は約45万8000ha
存在することが確認されました。これらを合計すると、93万5000haとなり、全農地面積の約2割となっています。
 なお、これらの農地のうち遊休農地の面積は、約5万4000haとなっています。
 茨城県の面積が61万haですから、いかに広大な土地が所有者不明になっているかに驚かされます。
 この調査によると、茨城県の相続未登記農地は、2万145ha、相続未登記の恐れがある農地も1万686ha存在することが明らかになっています。合計で3万831haに及び、農地全体の17.8%を占めるています。
 ただ、このうち1年以上耕作されていない遊休農地は5.6%の1727haにとどまり、相続未登記農地の多くは法律上の所有者と異なる担い手が耕作しているとみられています。
 こうした実態を受けて、茨城県は本年度(2018年度)、約185万筆に及ぶ県内全ての農地の実態調査に初めて乗り出しました。今後3年がかりで農地の所有者や実際の耕作者、今後の賃貸の意向などを全筆調査するものです。約17万haに及ぶ農地の全筆調査に踏み切ることになりました。まさに、“平成の大検地”ともいうべき農地の所有者を明確にする作業です。団塊の世代の高齢化が今後進むと、農地の所有者が一層分からなくなる恐れがあるとして、実態を把握し農地の集積・集約化につなげたい考えです。
 調査項目は農地の所在地、地目、面積、権利者の名前などの農地台帳抽出情報のほか、農地利用現況や実際の耕作者、賃貸を含む今後の利用意向などを、所有する個人・世帯ごとに聞き取り調査を行います。遅くとも2020年度までに調査を完了する予定です。
 調査票を郵送するか、農業委員や農地利用最適化推進委員が戸別訪問して届ける二つの調査方法を予定しています。郵送の場合でも後日、農業委員らが戸別訪問し、記入漏れの確認などを行います。
 調査開始に向け市町村農業委員会は、農地台帳に基づく調査票の作成時期や調査実施期間、調査方法、集計・検証時期などを決め、実施計画書(年次計画)を県に事前提出することになります。
 相続未登記農地の増加は集積・集約の妨げになる恐れがあります。団塊の世代が全て75歳以上となる『2025年問題』も叫ばれており、今のうちに全県下の農地の実態を把握し、農地の集積・集約の促進につなげる方針です。