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 プラスチックごみ(プラごみ)による海洋汚染の問題に、日本も本腰を入れて取り組むべきです。
 「プラスチック資源循環戦略」の策定に向けた環境省の有識者会議がスタートしました。戦略には、プラスチック製品の使い捨て削減や再利用を促す方策などが盛り込まれる見通しです。海洋汚染につながるプラごみの排出をどう抑えるか。議論の行方を注視したいと思います。
 世界ではプラごみ削減への取り組みが加速しています。国連環境計画(UNEP)によると、プラスチック製品の生産や使用に対する規制を導入した国や地域は60を超えます。
 一方、日本は1人当たりのプラごみの排出量が米国に次いで2番目に多いものの、こうした規制はなく、国際的に出遅れているのが現実です。
 さらに、中国がプラスチックごみの受け入れを禁止した影響も深刻です。台湾やタイも輸入を禁止する意向があります。そのため、約150万トン(2016年)を輸出していた日本のプラごみが行き場をなくす恐れがあります。
 今年6月の先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)で提起された「海洋プラスチック憲章」には、2030年までにプラスチック包装の最低55%をリサイクルまたは再使用するといった目標が盛り込まれました。
 ところが日本は、国民生活や産業への影響を慎重に検討する必要があると判断し、憲章への署名を見送っています。
 こうした中で環境省が、今回の戦略について、憲章に掲げられた数値目標も含めて議論する方針を示していることは、むしろ遅すぎるぐらいです。来年6月には、わが国でG20が開かれます。取り組みの遅れを挽回し、国際社会でリーダーシップを発揮するためにも、戦略を策定する意義は大きいといえます。
 国内では、大手ファミリーレストラン・すかいらーくやコーヒーチェーン・スターバックスなどがプラスチック製ストローの廃止を打ち出すなど、民間事業者の間でプラごみ削減への動きが広がっています。戦略には、こうした取り組みを後押しする視点が必要です。
 消費者の理解と協力を促すことも忘れてはなりません。例えば、プラスチック容器のデポジット(預かり金)システムです。容器の費用を預かり金として商品価格に上乗せし、消費者が商品購入後に容器を返却すると容器代を返金するというものです。ドイツなどで導入され、高いリサイクル率を記録しています。
 こうした諸外国の事例も参考に、意欲的で実効性のある戦略の策定を期待したい。また、消費者としても賢明な対応で臨みたいと思います。