モバイル型仮設住宅(トレーラーハウス)
 西日本豪雨被害から2ヶ月。被災地においては、8日より仮設住宅の入居がスタートする予定です。本格的な復興への動きが始まろうとしています。
 今回、応急仮設住宅の建設の中で注目される動きが2つあります。その一つは、倉敷市で建設されている「モバイル型応急仮設住宅」、そしてもう一つが総社市で建設されている「板倉住宅」による応急仮設住宅です。
 このブログでは、日本ではじめて導入された「モバイル型応急仮設住宅」について、その導入の経過やメリットなどをまとめてみたいと思います。

災害応急仮設住宅の新たな可能性「モバイル型応急仮設住宅」
 「モバイル型応急仮設住宅」とは、トレーラーハウスやムービングハラス(製品名:スマートモデューロ)などの「運べる住宅」のことです。居住性の高い、高品質の既存住宅を、災害が発生した被災地に運んでしまうという、今までの仮設住宅とはまったく反対の発想です。
 トレーラーハウスは、まさにタイヤがついた家です。スマートモデューロは、海上コンテナ(40フィート)と同じ規格でつくられた木造の住宅です。運搬は大型トレーラーに載せて運ばれます。
 今回、一般社団法人日本RV輸入協会がトレーラーハウスを、一般社団法人日本ムービングハウス協会がスマートモデューロを、仮設住宅として準備しました。一般社団法人協働プラットフォームが、導入を決定した倉敷市や岡山県、国(内閣府防災担当)との連係調整を図りました。関係者の努力が結実し、9月8日には、被災した方々の入居が始まる予定です。
 建設地は、被害の大きかった倉敷市真備町に隣接する船穂町。本来は多くの被災者が住んでいた真備町に用地を確保すべきところですが、まとまった広さの土地が確保できなかったことや、公共下水道が整備されていることが条件であったことから、この地に決定されました。
 トレーラーハウス10棟とスマートモデューロ41棟の合計51棟が設置されました。また、スマートモデューロを連接した集会場も建設されます。
8月7日、8日の両日、井手よしひろ県議も現地調査
モバイル型仮設住宅を視察する井手よしひろ県議 8日7日、8日の両日、井手よしひろ県議は倉敷市真備町を訪れ、工事がはじまったモバイル型応急仮設住宅を視察しました。
 今回、倉敷市では従来型仮設住宅を4箇所に150棟、モバイル型は1箇所51棟建設しています。視察した時期は、仮設住宅への1次申し込みが締め切られたタイミングでした。その結果、モバイル型は申し込みが定員に満たないという結果になっていました。
 当初、「コンテナハウス」という言葉が先行し、「コンテナは暑い」「狭い」「無骨」「安定性が悪い」など、住宅としてネガティブなイメージが一人歩きしてしまい、申し込みが低迷するという結果を招きました。そこで、倉敷市では8月10日、11日の両日、急遽、仮設住宅の現地見学会を開催しました。考えてみると仮設住宅に入居する際、実際の住宅を見て選べるということ自体が、日本初のすばらしい取組みであったと思います。
 現地見学会に足を運んだ方々の反応は、事前のそれとは全く違うものでした。
 猛暑の屋外から入ってみると、高気密、高断熱仕様のムービングハウスは想定外の涼しさ。さらに、室内は、いわゆるコンテナと違っていたようです。高原の別荘を思わせるお洒落な雰囲気や木の香りに包まれたログハウスのような内装も見学者を驚かせました。
 スマートモデューロは、松材を中心とした木造の住宅。ベッドやシステムキッチン、電磁調理器、ウォッシュレットなどが標準で取り付けられています。窓は3重構造で、24時間連続換気装置とエアコンも設置され、高い断熱性と通気性を確保しています。一般の仮設住宅と異なり、完全戸建てですのでプライバシーも確保できます。こうした魅力を実感し、「思っていたのと違う、ずっといい」「機能性が高い」という評判が広まり、その後は入居希望者が相次ぎました。
 中には、「仮設住宅ではなく、落ち着いたら、ぜひ購入したい」という声もあったようです。

熊本地震の際のトレーラーハウス
モバイル型応急仮設住宅導入決定までの経過
 災害時の仮設住宅としてもモバイルハウスを活用することは、東日本大震災以降様々な検討が行われてきました。
 一つの節目となったのが熊本地震です。特に被害が大きかった益城町に仮設の福祉避難所として、熊本県の産業展示場「グランメッセ熊本」の駐車場には、総数19台のトレーラーハウスが導入されました。仮設の福祉避難所であったため、わずか2カ月で撤去されましたが、その有効性を検証・確認することができました。
 西日本豪雨の際、まず行動を起したのは茨城県の境町でした。境町は3年前の鬼怒川水害(関東東北豪雨)の教訓から、町有地にさせたシャワー室やトイレ、簡易宿泊施設のコンテナユニットを備蓄していました。西日本豪雨災害が発生すると、間髪を入れずクラウドフアンディングをスタートさせ、倉敷市真備町に、備蓄したコンテナコニットを贈るためのプロジェクトをスタートさせました。このクラウドフアンディングはわずか一週間で目標の100万円を突破し、コンテナユニット3基が倉敷市立二万小学校に設置され、被災者の支援に活躍しました。
 さらに第二弾としてムービングハウス協力から提供されたスモートモデューロ4基を、ボランティアセンターの宿泊施設として配備しました。この移動費用は第一弾のクラウドフアンディングを継続することで捻出されました。
 第一弾、第二弾合わせたクラウドファンディングの総額は419万円(9月8日現在)を超えました。
 倉敷市ならびに岡山県は、被災した住民の生活再建を第一に検討を加え、実際、現地に設置されたコンテナコニットやスモートモデューロを精査した上で、建設型応急仮設住宅として、内閣府の防災担当にモバイルハウスを提案しました。

スマートモデューロ
「モバイル型応急仮設住宅」のメリット
 モバイル型応急仮設住宅は、従来の災害救助法に基づく、いわゆるプレハブ仮設住宅、既存の賃貸物件(アパートやマンションなど)を借り上げる「みなし仮設住宅」に続く、第三の応急仮設住宅として注目されています。
 災害発生後に、一から建設を開始する従来型の仮設住宅では、工期の短いプレハブ構造とはいえ、それなりの工期が必要です。また、短期間に工事が集中するため、大工(作業員)の確保も困難です。プレハブ構造のため、暑さ対策、寒さ対策、プライバシーの確保など、被災者のQOLの課題もあります。原則2年間で解体されますので、その解体費用や資材のリサイクルにも課題があります。
 借上型の「みなし仮設」は、賃貸物件を都道府県が賃借して、被災者に無償転貸する仕組みです。早期に被災者に提供できるメリットがあり、都市部などでは有効です。しかし、被災者の数やニーズに、既存物件が合致しないケースが多く、住みなれた地域に物件がないために、地域コミュニティが維持できないという大きなディナリットもあります。
 そこで第3の道、「モバイル型仮設住宅」の存在価値があります。
 モバイル型仮設住宅の建設の建設コストは、従来型の8割提度。モバイルハウスの耐用年数は20年以上ありますので、使い捨てではなく再利用することが可能です。当然、再利用できるということは、仮設住宅が撤去される際の廃棄物が発生しないというメリットも見のがせません。
 また、モバイルハウスはきわめてQOLが高い住宅です。そこで発想を変えれば仮設住宅という扱いではなく、そのまま終の棲家として活用も可能だということです。応急仮設住宅として2年間使用して、残価を被災者に支払っていただければ、モバイルハウス自体を購入していただくこともできます。さらに、不動産事業者の買い取ってもらい、安価で家賃を支払っていただくことで、そのまま住み続けるという制度設計も可能ではないでしょうか。

 この原稿をまとめた翌日9月6日。北海道胆振東部地震が発生しました。多くの被害が発生し、地滑りや液状化で住む家を亡くした方も多数発生しています。この地域は、10月に雪が降ると伺いました。一刻も早くモバイル型仮設住宅の導入を早期に決定し、被災者が安心して復興に取り組めるよう準備すべきです。(2018/9/6更新)