181212kasan 今年(2019年)4月の診療報酬改定で新設された「妊婦加算」を巡る疑問や批判の声を、国は真摯に受け止めるべきです。
 妊婦加算とは、妊娠中の女性が病気やけがで外来診療を受けると、医療費が上乗せされる制度のことです。
 妊婦は診断が難しい疾患や合併症に見舞われる頻度が高く、胎児の発育に悪影響を与える医薬品もあることから、診療には特別な注意が必要とされます。このため、妊婦であることを理由に診療を断られる事例が少なくありません。
 こうした現状を踏まえ、妊娠の継続や胎児に配慮した適切な診療を評価することで、妊婦が必要な医療を受けられるようにすることが、妊婦加算の目的です。
 しかし、投薬を伴わないコンタクトレンズの処方で加算するなど、制度の趣旨を逸脱した運用が相次いでいます。これは、受診者の理解を得られない不適切な行為です。(図表は東京新聞の記事より引用させていただきました)
 厚生労働省は、妊婦としての配慮が必要ない診察を行う場合は、加算の対象外とする見解を示しています。早急に医療現場への指導を徹底すべきです。
 制度の周知も不十分と言わざるを得ません。加算は、医師が診察の際に妊婦であることを直接確認する必要がありながら、支払い時に初めて上乗せに気付く妊婦もいます。患者への丁寧な説明やカルテへの記載といった透明性の高い運用が不可欠です。
 出産や育児を社会全体で支えようという機運が高まりつつある中で、妊婦が加算分を負担することの影響にも目を向ける必要があります。負担増を嫌って受診を控えたり、妊娠を隠したりする女性が出るようでは、まさに本末転倒です。
 厚労省は、次回の診療報酬改定に向けて、患者の立場に十分配慮した議論を進めるべきです。
 加えて指摘しておきたいのは、妊婦がどこにいても適切な医療が受けられる体制の整備促進です。
 産婦人科医が慢性的に不足していることを考えれば、内科医や外科医らに対して、投薬の注意点といった必要な情報を提供する取り組みが欠かせません。研修などを通じて医師の意識やスキル向上を進めることも必要です。