漁業法改正
 12月8日、水産業の活性化をめざし、漁業制度の約70年ぶりの抜本改革となる改正漁業法が成立しました。「企業に売り渡す」などの批判は全く的外れで、水産業の成長産業化を柱とする改正漁業法の内容を検証してみたと思います。
 養殖を含む日本の漁業生産量は1984年をピークに減少を続け、昨年は最盛期の約3分の1に当たる430万トンまで落ち込んでいます。
 背景には、国際的な乱獲による水産資源の減少や漁業者の減少・高齢化、国内消費の落ち込みなどがあります。
 先行きが厳しさを増しつつある中、長期にわたって水産物を安定的に供給し、水産業の活性化を進めるのが改正漁業法の目的です。適切な資源管理と水産業の成長産業化を柱としているのです。

資源管理:生息調査や実績で漁獲上限を設定
 水産資源の管理について改正漁業法は、乱獲を防ぎ、持続可能な漁業への転換をめざします。
 漁獲上限を定める漁獲可能量(TAC)制度の対象魚種をサンマやマアジなど現在の8種から拡大します。国が漁船ごとに漁獲枠を割り当てる個別割り当て(IQ)方式による数量管理も導入し管理責任を明確にします。
 漁獲可能量や漁獲枠の割り当てに関しては、農水相や都道府県が水産物の生息・生育調査や実績などを踏まえて設定します。
 加えて、ナマコやアワビなどの密漁対策を強化。罰金の上限を現行の200万円から3000万円に引き上げます。
成長産業化:未活用の漁場に新規参入認める
 漁業を営む権利である漁業権の見直しでは、地域の漁業協同組合などに優先して与えられる制度を見直し、漁協が「適切かつ有効に活用」していない漁場や、利用されていない漁場に限り、企業が新規参入できるようになります。
 新たな漁場については、「地域水産業の発展に最も寄与する者」に漁業権を付与すると定められており、事前に既存の漁業者などの意見を考慮。「適切な活用」や「地域水産業の発展への寄与」に関する判断基準については、国が「ガイドライン」を速やかに示すことになります。
 一方で、漁船の大きさの制限は緩和し、大型化を促して操業の効率化を進めていきます。

 漁業制度の約70年ぶりの抜本改革となることから、水産庁などは全国100カ所以上で説明会を開催してきました。
 11月26日の衆院農水委員会の参考人質疑では全国漁業協同組合連合会の岸宏代表理事会長が、「(漁協や政府の対応で)浜の不安の声は相当程度、払拭、解消した」と明言しました。その上で、改正法の付帯決議には漁業者に対し、丁寧な説明を継続して行うことが盛り込まれました。
 漁獲量や国内消費の減少、漁業者の高齢化など水産業を取り巻く環境は厳しく、持続可能な成長産業への転換は喫緊の課題です。改正漁業法の柱である適切な資源管理は水産資源を守るため、科学的知見に基づいて進めるものです。一方で、魚種の選択性の低い定置網漁など現場の実情を踏まえた対応も欠かせません。公明党の要請を踏まえ、国は小規模漁業者の実態に即した管理方法を丁寧に構築します。
 漁業権の新規参入に関しては、漁協が適切に管理していない、または利用されていない漁場に限られます。当然、地元漁業者の意見を十分考慮します。公明党の主張を受け国は、参入の判断基準を示すガイドラインも早急に策定します。「海を企業に売り渡す」といった一部の批判は当たりません。
 改正法では、漁船の大型化などを通し、コスト縮減や水産業の成長産業化も進めます。一層、若者に魅力ある漁業への転換を後押ししていきます。