SDGsへの取り組み SDGsの目標達成には、中小企業の役割が重要と言われています。SDGsの中核のコンセプトは「誰も置き去りにしない」ということであり、政府や大企業だけでなく一人一人が行動を起こすことが前提となっています。SDGsの取り組みを全国の隅々まで行き渡らせるには、企業の99.7%を占め、人々に生活の基盤を提供している中小企業の参画が重要です。
 一方、SDGsに関する中小企業の認知度は未だに非常に低いのが現実です。昨年(2018年)秋に関東経済産業局が実施した「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」によると、調査対象500社のうち98%が「SDGsを知らない」や、「対応を検討していない」と回答しました。
 この調査は10月1日〜4日に11都県に所在する中小企業の代表取締役に対してWEBアンケート形式で行いました。中小企業500社のうち、「SDGsについて全く知らない」と回答した企業が84.2%。「SDGsという言葉を聞いたことがあるが、内容は詳しく知らない」が8.0%、「SDGsの内容について知っているが、特に対応は検討していない」が5.8%という結果でした。
 「SDGsについての対応を検討している」、「既に対応を行っている」企業は500社中わずか10社(2%)に過ぎませんでした。その10社を対象に具体的な取り組み内容を聞いた設問(複数回答)では、8割が理解促進のための情報収集や勉強をあげました。その10社の中でも、自社の経営計画・事業計画等に反映しているという企業は4社にとどまりました。
 一方、大手企業の集まりである経団連が7月、会員企業などに行った企業行動憲章に関するアンケートでは、SDGsの「持続可能な社会の実現」という考え方を「経営理念」や「企業行動に関する規範・指針」に反映している企業は8割に上っています。大企業と中小企業の格差はむしろ広がっているとも言えます。
 大企業に比べてもSDGsへの取り組みは、今後の経営にとって非常に重要です。
 SDGsを基軸にビジネスのルールが大きく変化しつつあります。企業活動の基本は人、モノ、カネというリソース(資源)を活用し市場に価値を提供することですが、これらの経営資源の流れがSDGsに準拠した流れに変わってきており、中小企業もルール変更への対応を求められています。
 例えば、地方の中小企業では特に人手不足が深刻です。しかし経営者がSDGsを推進している企業には、優秀な人材がわざわざ求職に訪れ、活躍する動きが実際に始まっています。またモノ・サービス面では、例えばアップル社が100%再生可能エネルギーの工場で作った部品の調達を打ち出したように、SDGsに準拠した経営を行うことは、取引の上で優位になります。さらに世界の投資額の約4分の1は環境や社会に配慮した経営に向けられており、新規事業立ち上げの際など、SDGs基準を満たしていれば投融資を受けやくなってきます。
 経営資源の乏しい中小企業が、SDGsに踏み出すためのポイントは、従来のリソースを活用することです。自社のコアビジネスは何で、経営理念として何を大切にしてきたかを振り返り、地球的規模で構想した場合の発展の可能性を考えることが重要です。例えば耕作放棄地を活用している県内の酒造メーカーの場合、「ふるさとの風景を守る」という観点で、同じ境遇にある国内外の各地の事業者とのパートナーシップを広げられる。こうした“同時多発的”な現象を引き起こせれば飛躍できるのです。
 SDGsの視点から見直した自社ホームページやレポートを英語版を含めて発信すれば、海外からも直接アプローチしてきます。誠実な対応を続ければ次第に展開地域が増えていくはずです。
 中小企業の取り組みを広げるには、行政、特に地方自治体の支援が必要です。自治体などの公共調達において、SDGsに準拠した事業者との取引を広げることが重要です。広島県では、SDGsに取り組む先進的な地元企業を紹介する事例集を作成しています。金沢市周辺では、月に2〜3回、SDGs関連のイベントが開かれています。事業者や従業員、市民らがSDGsに触れることのできる環境づくりにも必要です。