公明党が成長戦略について申し入れ
 5月22日、公明党の石田祝稔政務調査会長らは、首相官邸で菅義偉官房長官に政策提言「成長戦略2019」を提出し、政府が策定する経済財政運営の基本方針「骨太の方針」などへの反映を求めました。

■力強い賃上げの実現
 正社員やパートなどの雇用形態にかかわらず、全ての労働者に適用される「最低賃金」の引き上げは、賃金の底上げ効果を通じて、多様な働き方や安定的な収入の確保、消費の拡大に貢献するだけでなく、人手不足における人材確保や事業者間取引の改善に有効です。
 この最低賃金について提言では、年率3%以上をめどとして着実に引き上げ、2020年代前半には全国加重平均で1000円超に引き上げるとともに、2020年代半ばには47都道府県の半数以上で1000円以上へと引き上げ、地域間格差を是正することを求めています。
 一方、最低賃金引き上げの影響を強く受ける中小・小規模事業者に対しては、生産性向上のための設備投資などの支援を一層強化することが必要です。提言では、IT導入による生産性向上、事業承継の促進、「よろず支援拠点」の機能強化、中小企業の海外展開支援などを訴えています。
2040年の人口構成
■イノベーション創出でSociety5.0
 近年、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ロボットといった第4次産業革命がもたらすイノベーションが、一人一人の生活や社会全体を画期的に変えようとしています。
 こうしたイノベーションによって経済発展と社会的課題の解決を両立する未来社会「Society5.0」を実現し、国民一人一人の生活を目に見える形で豊かにしていくことが重要です。
 提言では、「Society5.0」を支えるICT(情報通信技術)インフラの整備や、量子コンピューターの実用化の加速、科学技術イノベーションの活性化、次代を担う若手研究者への重点支援、デジタルガバメントの推進、キャッシュレス化による地域活性化などを求めています。

■人生100年時代へのライフデザイン
 今年4月から「働き方改革関連法」が順次施行され、10月からは幼児教育の無償化も始まります。
 人生100年時代を見据え、こうした人への投資を着実に実行するとともに、個人の健康や多様な就労、障がいの有無や世代、性別などに関係なく、一人一人の活躍を後押しする「共生社会」をそれぞれの地域で構築していくことが求められています。
 そこで提言では、高齢者人口がピークを迎える2040年を展望した全世代型社会保障のグランドデザインの策定や、健康寿命の延伸、認知症施策の推進を強調しています。
 また、子育てや介護などで年次有給休暇を1時間単位で取得できる制度の導入や、高齢者の就労環境整備と年金制度の見直し、就職氷河期世代への集中的な支援を要望。所得連動返還型奨学金制度の既卒者への適用や、高校生の中退対策支援なども盛り込みました。
 さらに50代のひきこもりの子どもの面倒を80代の親が見る「8050問題」など、複合的な課題に対応するため、制度の壁を越えた包括的な支援の仕組みを検討するよう訴えています。

■地域経済の好循環
 地域経済の活性化に当たっては、先端技術を活用した農林水産業や観光立国の推進をはじめ、良質な住宅提供や公共交通の円滑化などによる住みよいまちづくり、近年多発する自然災害に備えた防災・減災対策などを地方創生の取り組みと連動して進めることが重要です。
 提言では、先端技術を活用したスマート農業などの推進や、食品ロス削減への運動強化を訴えています。
 また、高齢者の運転による交通事故が増加していることを踏まえ、運転リスクが特に高い高齢者に対する「安全運転サポート車」限定免許の導入といった運転免許制度の見直しと、地域で高齢者の足となるコミュニティーバスやデマンド型乗合タクシーなど「地域公共交通ネットワーク」の確保を求めています。

■国際社会における多国間協調に向けた取り組み
 今年6月、日本が初めて議長国を務めるG20が大阪で開催されます。デジタル市場におけるルール整備などを国際社会の中で日本が主導し、さらなる経済外交や海外展開、対日投資の促進に取り組むべきです。
 提言では、デジタルプラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業における取引慣行の透明性・公共性の確保や、独占禁止法の厳格な運用による公正かつ自由な競争の確保、電気通信事業法の適用による利用者保護などを訴えています。