茨城県の高齢ドラーバーの事故
 高齢ドライバーらの運転操作ミスなどにより、痛ましい交通事故が相次いでいます。
 ただし、テレビや新聞などがセンセーショナルに報道するほど、高齢ドライバーの係る交通事故は増えているわけではありません。
 冒頭のグラフは、茨城県警がまとめ公表ししている高齢ドライバーの事故統計です。 高齢運転者による交通事故の平成19年〜29年の推移をみてみると、発生件数は平成18年(2541件)をピークに減少傾向にあり、平成19年に比べ398件(16.3%)も減少しています。一方、死亡事故件数は平成16年(49件)のピーク以降増減を繰り返しています。平成19年に比べて29年は13件(+56.5%)増加しましたが、平成16年に比べると13件の減少となっています。
 高齢者へ免許証の自主返納を促す取り組みも行われていますが、「生活の足」として自動車を使わなければならない茨城県のような地域も多くあります。
自動車の安全向上技術
 そこで、高齢ドライバーの事故を防ぐため、国や自動車業界も、安全運転を支援する「ASV(先進安全自動車)」の技術開発と実用化を進めています。
 ASV技術は国やメーカーが1991年度から研究開発と実用化を進めてきました。
 その代表例に、衝突被害軽減ブレーキがあります。衝突被害軽減ブレーキは、カメラやレーダーが前方の障害物を検知すると、ブレーキの制御などで衝突時の被害を軽減します。交通事故総合分析センターによれば、衝突被害軽減ブレーキ搭載車の対四輪車の事故率は、未搭載車の半分程度にまで抑えられたといわれています。
 近年、これを乗用車の標準装備とする大手メーカーが相次ぎ、新車搭載率は77.8%(2017年)まで向上しました。国は20年までに9割以上とする目標を掲げています。
 一方、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故対策として、急発進を防ぐ「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」もあります。加速抑制装置の新車搭載率は65.2%(17年)まで達しました。
 このほか、走行車線の中央付近を維持するようハンドル操作を支援する装置や、車線から逸脱しそうになると警報を鳴らす装置などの搭載車両も増えています。
 政府は、衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い時加速抑制装置を搭載した車を「安全運転サポート車(サポカーS)」として位置付け、推奨しています。
 ただし、ASVの装置は後から取り付けできないものが多く、車の買い替えが必要。価格も割高になりがちな欠点があります。
 また、道路環境などによっては装置が作動しないこともあり、ドライバーは機能を過信せず、安全運転に努めることが前提となります。

■高齢者へ普及後押し/香川県では買い替え3万円補助
 ASVの装置を搭載した車への買い替えを促すため、香川県は2016年度から「高齢者ASV購入補助金」制度を全国で初めて創設しました。香川県議会公明党も推進してきました。
 制度は随時、見直しており、現在の対象は65歳以上80歳未満。衝突被害軽減ブレーキなど4種類全ての装置を搭載した乗用車を購入すると、3万円が補助される仕組みです。18年度までに補助件数は計4744台に達しています。
 香川県が昨年、補助金を受けた人にアンケートしたところ、ASVの機能によって事故を回避できた経験がある人は8%に上りました。また、およそ半数の人が車の購入後、「運転する時は常に周囲に注意するようになった」と回答しています。
 県くらし安全安心課は「補助金を受けて買い替えたことで、ドライバーが自らの運転を見直し、安全運転を心掛けてもらえるきっかけになっている」と話しています。

■群馬・大泉町は、ASV購入に5万円、あおり運転対策にドラレコにも助成
 群馬県大泉町は昨年度、65歳以上または免許取得後1年未満の町民を対象に、ASVの装置を搭載した車を購入した場合、最大5万円を補助しました。143台が補助金を受けました。
 今年度は、ASV技術ではありませんが、車両の前後の映像を自動で記録する「ドライブレコーダー(ドラレコ)」の設置費用について、免許を保有する町民に補助しています。あおり運転などを抑止するのが目的です。5000円を上限に、経費の2分の1を補助する仕組みです。

■公明、重点政策に
 公明党は、参院選向け重点政策で「高齢者の移動手段の確保と安全運転支援」を掲げています。
 石田祝稔政務調査会長も4月24日の記者会見で、ASV技術を搭載した乗用車の購入支援を、高齢者に限定して検討する考えを表明。「交通の便が悪い地域では、どうしても車に頼らざるを得ない。(補助制度が)高齢者のASVへの買い替えのインセンティブになることが必要だ」との考えを示しています。
 茨城県議会公明党は、補助金だけではななく地方税である自動車取得税で、ASV購入に対して減免制度ができないか検討しています。