さまざまな経済状況を想定し、将来受け取ることができる公的年金の水準を試算する財政検証の結果を、厚生労働省が8月27日公表しました。
参考:将来の公的年金の財政見通し(財政検証):http://bit.ly/2lShmna
5年に1度の財政検証は年金の「定期健康診断」とも言われています。今回の結果は、当面は健康上の大きな問題がないものの、体力強化も促していると言えます。
まず確認されたのは、2004年の制度改正で築いた、向こう100年を見据え年金を安定的に運用する枠組みは揺らいでいないという点です。
財政検証では、経済成長の度合いなどを6通りに分けて推計しています。
経済が堅調に推移した標準的ケースでは、現役世帯の平均手取り収入に対するモデル世帯の年金額の割合「所得代替率」が、現在の61.7%から、47年度以降は50.8%となります。出生率向上や女性と高齢者の労働参加が進むとして、前回検証の標準的ケースに比べ0.2ポイント改善しました。
少子高齢化で「支え手」の現役世代が減り、「支えられる」高齢者は増え続けます。その中で制度を維持するため、給付水準の低下が避けられないながらも、2004年の制度改正で政府が約束した「50%以上」を長期に維持できると確認された意義は大きいといえます。
一方、経済が停滞した想定では、40年代に所得代替率が50%を下回ることも示されました。こうした事態を避けるには、少子化対策に粘り強く取り組み、女性や高齢者の就労を後押しして安定的な経済成長を進めることが大前提です。
いうまでもなく公的年金制度は、20歳から59歳までの全員が定額(2019年度は月1万6410円)の保険料を払って、老後に最大で月約6万5000円(現在の額)を受け取る国民年金(基礎年金)が「1階」、これに上乗せして、会社員や公務員らが加入し、賃金の18.3%の保険料を労使で折半する厚生年金が「2階」という「2階建て」の構造になっています。厚生年金は保険料に基礎年金分も含まれており、老後に受け取る年金額は現役時代の賃金に比例します。
今回の試算では、将来の給付が確保されるように年金額の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」によって給付水準が低下する度合いが、厚生年金よりも基礎年金の方が大きいことが改めて確認されました。基礎年金の給付水準低下そのものに対する手当てと同時に、将来、基礎年金だけになる人をいかに減らし、厚生年金に加入する人を増やすかが、非常に大事になります。
具体的には、パートやアルバイトなど非正規雇用の人たちは、厚生年金に入っておらず、国民年金のみの人が多い現実を見直さなくてはなりません。こうした人たちが、厚生年金に“移籍”できるようにしていくことが必要です。
本人にとっては将来、受け取る年金額が増えるし、年金財政の安定にもつながります。今回の財政検証のオプション試算では、厚生年金の適用範囲を拡大すると、将来の所得代替率が上昇することが確認されています。
ただ、厚生年金の保険料は労使折半です。加入する人が増えれば、雇い主の企業の負担が大きくなるので抵抗も大きい事も事実です。しかし、放置すれば将来、基礎年金だけでは暮らせずに生活保護を受給する人も増えかねません。経営への影響が特に懸念される中小・小規模事業者への支援なども併せて、厚生年金の適用範囲拡大を進めるべきです。
受給開始年齢の上限引き上げなども検討すべきです。受給開始年齢を、一律に決めるのでなく、もっと柔軟に受給者の意思で引き上げるようにすべきでしょう。こうした制度を変更した場合の試算も、今回の財政検証では行っており、将来の年金水準の底上げに効果があります。
さらに、国民年金にしか入っていないなどの低年金対策も大きな課題となります。まずは、10月から始まる低年金者への年間最大6万円の給付金の支給を円滑に実施する必要があります。
今回の財政検証については、秋に予定される臨時国会で焦点となる見通しです。国民の老後を支える公的年金が将来世代へ安定的に引き継がれるよう、与野党問わず冷静かつ建設的な議論を進める必要があります。
経済が堅調に推移した標準的ケースでは、現役世帯の平均手取り収入に対するモデル世帯の年金額の割合「所得代替率」が、現在の61.7%から、47年度以降は50.8%となります。出生率向上や女性と高齢者の労働参加が進むとして、前回検証の標準的ケースに比べ0.2ポイント改善しました。
少子高齢化で「支え手」の現役世代が減り、「支えられる」高齢者は増え続けます。その中で制度を維持するため、給付水準の低下が避けられないながらも、2004年の制度改正で政府が約束した「50%以上」を長期に維持できると確認された意義は大きいといえます。
一方、経済が停滞した想定では、40年代に所得代替率が50%を下回ることも示されました。こうした事態を避けるには、少子化対策に粘り強く取り組み、女性や高齢者の就労を後押しして安定的な経済成長を進めることが大前提です。
いうまでもなく公的年金制度は、20歳から59歳までの全員が定額(2019年度は月1万6410円)の保険料を払って、老後に最大で月約6万5000円(現在の額)を受け取る国民年金(基礎年金)が「1階」、これに上乗せして、会社員や公務員らが加入し、賃金の18.3%の保険料を労使で折半する厚生年金が「2階」という「2階建て」の構造になっています。厚生年金は保険料に基礎年金分も含まれており、老後に受け取る年金額は現役時代の賃金に比例します。
今回の試算では、将来の給付が確保されるように年金額の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」によって給付水準が低下する度合いが、厚生年金よりも基礎年金の方が大きいことが改めて確認されました。基礎年金の給付水準低下そのものに対する手当てと同時に、将来、基礎年金だけになる人をいかに減らし、厚生年金に加入する人を増やすかが、非常に大事になります。
具体的には、パートやアルバイトなど非正規雇用の人たちは、厚生年金に入っておらず、国民年金のみの人が多い現実を見直さなくてはなりません。こうした人たちが、厚生年金に“移籍”できるようにしていくことが必要です。
本人にとっては将来、受け取る年金額が増えるし、年金財政の安定にもつながります。今回の財政検証のオプション試算では、厚生年金の適用範囲を拡大すると、将来の所得代替率が上昇することが確認されています。
ただ、厚生年金の保険料は労使折半です。加入する人が増えれば、雇い主の企業の負担が大きくなるので抵抗も大きい事も事実です。しかし、放置すれば将来、基礎年金だけでは暮らせずに生活保護を受給する人も増えかねません。経営への影響が特に懸念される中小・小規模事業者への支援なども併せて、厚生年金の適用範囲拡大を進めるべきです。
受給開始年齢の上限引き上げなども検討すべきです。受給開始年齢を、一律に決めるのでなく、もっと柔軟に受給者の意思で引き上げるようにすべきでしょう。こうした制度を変更した場合の試算も、今回の財政検証では行っており、将来の年金水準の底上げに効果があります。
さらに、国民年金にしか入っていないなどの低年金対策も大きな課題となります。まずは、10月から始まる低年金者への年間最大6万円の給付金の支給を円滑に実施する必要があります。
今回の財政検証については、秋に予定される臨時国会で焦点となる見通しです。国民の老後を支える公的年金が将来世代へ安定的に引き継がれるよう、与野党問わず冷静かつ建設的な議論を進める必要があります。