液体ミルク
 常温で保存でき、お湯で溶かす必要がない乳児用液体ミルクを、災害時の備蓄物資に採用する動きが広がりを見せています。公明党の強力な推進で、政府は昨年(2018年)8月、北欧などで普及が進む液体ミルクの国内での製造・販売を解禁。国内メーカーが相次ぎ市場に参入しており、公明党の地方議員が各議会で訴えていることもあり、一括購入する自治体は増えてきました。
 「日本では使用例がなく衛生管理が難しい」。昨年9月の北海道胆振東部地震で、北海道は液体ミルクの配布に慎重を期すよう求める通知を出しました。東京都から支援物資として被災5町に送られたが、日高町の担当者は「使用例がないと書かれていたら、住民に提供しようとは思わない」と不測のリスクを考慮したことを明かしています。
 結局、5町に配布された1050本は、1本を除きすべて、使われないまま廃棄されました。
 ただ、江崎グリコと明治が今春、液体ミルクの販売を開始して以降、風向きは変わりつつあります。利便性の高さが受け、乳児がいる若い夫婦などに浸透。7月には三重県が都道府県で初めて、備蓄物資の粉ミルクを液体ミルクに代えるなど、全国の自治体にも購入の動きが広がっています。
 備蓄物資としての浸透には課題も残っています。青森県弘前市の防災課職員は「導入コストは粉ミルクの2倍。使い勝手がいいのは分かるが、財政面からの検討も必要」と二の足を踏むと語っています。まずは少量を購入して本格的導入への検討を進めると計画です。

液体ミルク、コンビニでも販売開始
 一方、ローソンとファミリーマートが、乳児用液体ミルクの取り扱いを順次始める予定です。働きながら子育てする世帯やインバウンド(訪日外国人客)の関心が高く、需要増が見込めると判断しました。24時間営業を基本とするコンビニ店舗での導入で液体ミルクの認知度が高まることが期待されます。
 液体ミルクは今春から販売が始まりました。災害時の備蓄としての活用が主に想定されていましたが、哺乳瓶にそのまま注げる利便性から育児の負担軽減になると好評で、外出時や夜間の日常的な利用が急増しています。
 ローソンは8月12日から大阪国際空港店で先行販売を開始しました。病院内やドラッグストアとの共同店舗など、医薬品を取り扱う計約450店舗を対象に今後ニーズを検討します。ファミマでは神奈川と静岡両県の高速道路の休憩施設内にある4店舗で週内に液体ミルクを全国の店舗で初めて販売開始。観光客らの需要が見込まれる全国の店舗に近く希望を募り、9月中旬から販売店舗を拡大する方針です。
 関係者によると、コンビニ2社で取り扱うのは明治の「明治ほほえみ らくらくミルク」(240ミリリットル)。スチール缶で賞味期限は1年。ファミマはこのほか明治の粉ミルクなど計5種類を今後そろえます。