外国人観光客の推移
 1月10日国土交通省は、2019年の訪日外国人数が前年比2.2%増の約3188万人となり、7年連続で過去最高を更新したと発表しました。ただ、日韓関係悪化に伴う韓国人客の急減で伸び率は18年の8.7%増から鈍化しました。
 政府は、20年に4000万人とする目標を掲げており、赤羽一嘉国交相は閣議後記者会見で「目標達成へ、ありとあらゆる手を打っていく」と語りました。日韓関係についても「好転の兆しが少しずつ出ている」と述べ、訪日客の取り込みを加速させる考えを示しました。
 20年は東京五輪・パラリンピックが開催され、日本への関心は「かつてないほど高まる」と国交省では見ています。羽田空港の発着枠拡大や那覇空港の滑走路増設などにより、訪日客の受け入れ能力も600万人増えます。これらを追い風に訪日客のさらなる増加をめざす考えです。
夜の観光のイメージ
 東京オリンピック・パラリンピックの開幕まで200日を切りました。民間の試算では、大会期間中は約60万人の外国人が観戦に訪れるといわれています。中には、初めて訪日する旅行者も少なくないはずです。この機会を逃さず、五輪後に訪日客が一層増加するよう手を打つべきでです。
 この点、夜間帯(ナイトタイム)を使って、日本の芸術や食文化などを楽しんでもらうナイトタイム観光に注目すべきです。
 欧米ではナイトタイム観光が大きな効果を生んでいます。ロンドンでは、飲食への支出や交通需要も含め夜間帯だけで年間約4兆円の経済規模があります。一方、各種アンケートによると「日本では夜の楽しみが少ない」と訪日客の多くが指摘しています。
 日本を訪れる外国人旅行者数は、政府を挙げた観光政策の強化を受けて2018年に3000万人を超え、6年前から約4倍近く増えました。
 外国人旅行者による消費活動も活発です。日本での旅行消費額は18年に4兆5000億円に達し、5兆円規模のコンビニ業界にも匹敵する市場へと成長しました。
 こうした中、政府は今年の訪日客消費の目標額を8兆円としています。その実現のためには、欧米に比べて見劣りするナイトタイム観光の振興が欠かせません。
 ナイトタイム観光と言っても、東京や大阪などの繁華街に限った話ではありません。実は日本では、地方都市が先行しています。例えば、島根県の伝統芸能「石見神楽」の夜間公演や、さっぽろ雪まつりの夜間ライトアップなどは外国人にも人気です。
 このほか、各地で行われる夜祭りや、動物園、水族館の夜間営業も好評を博しています。こうした地方の観光資源の活用に一段と注力する必要があります。
 ただ、ナイトタイム観光は、地域住民の協力や理解が必要不可欠であることも忘れてはなりません。例えば、白馬高原ではパウダースノーを求めて、2016年は年間8万人近く、17年は11万人以上の外国人が遊びに来ました。反面、夜中にレストランや居酒屋で騒ぐ外国人観光客が問題となっています。
 英国では夜間帯の営業を自治体の許可制にしたり、ナイトタイム観光の指針を作成することで地域との共生に努めています。
 観光先進国の事例も参考にしながら、各地域で新たな魅力の発信に知恵を絞るべきです。