令和2年7月豪雨で球磨川が氾濫し、大きな被害を受けた熊本県球磨村は、被災した住民の仮設住宅を「木造移動式住宅(ムービングハウス)」で建設することになりました。
 7月18日、19日の両日、茨城県小美玉市の「防災・家バンク小美玉研修所」で宿泊施設として使用していたムービングハウスの21ユニットを解体し、球磨村に向けて積み出す作業が行われました。
 工場がある北海道から積み出されたムービングハウスと合わせ、球磨村の運動公園に仮設住宅として33棟、集会所1棟が建設されることになります。8月上旬には、被災した方が入居できるようになります。
防災・家バンク小美玉研修所
 ムービングハウスは、工場で製造する木造の一般住宅です。解体せずに基礎から建物を切り離してクレーンで吊り上げ、家具もそのままで貨物としてトラックに載せて輸送できる高い移動性をもっています。
 国際規格の海上輸送コンテナと同じ形・サイズ(長さ12m×幅2.4m、広さ約30m2が基本ユニット)に統一されているため、道路の通行に特別な許可を必要とせず、フェリーなどの海上輸送にも迅速に対応できます。
 設置後は、電気・上下水道、ガスに接続すれば、すぐに生活をはじめることができます。被災地で一から職人が組み立てる建設型の応急仮設住宅に比べ、職人不足や悪天候などの影響を受けることもありません。被災者が早期に入居できることは、災害関連死や健康被害のリスクの軽減にも有効です。通常のプレハブ型仮設住宅が建設に2ヶ月から3カ月掛かるのに対して、ムービングハウスは1週間から2週間で入居が可能となります。
 また、ムービングハウスは、もともと一般の住宅として開発・使用されています。例えば、窓やドアには三重ガラス製サッシを使用されています。
 したがって一般の住宅と同等以上の耐震性、断熱性・気密性、防音性などの性能を備えています。
被災者のために応急的に仮設住宅を建設するのではなく、最初から高い住宅性能を備えた「一般住宅」を仮設住宅として提供するという、発想の転換です。これによって、入居者の安全と健康を向上させることが期時できます。
 ムービングハウスは、建築物でありながら移動できるので、「社会的備蓄」が可能になります。これは、平常時は全国各地で宿泊施設やコミュニティ施設として活用しつつ災害時の応急仮設住宅として備えて、災害時には災害救助法にもとづき相互に貸し出す取り組みです。