令和2年7月豪雨により400世帯以上の住民の避難生活が続く熊本県球磨村では、7月22日から移動可能な仮設住宅「ムービングハウス」の設置工事がはじまりました。
 ムービングハウスは、工場で作った木造の建物をトレーラーで運んで現地に設置する仮設住宅で、短期間で工事が終わるのが特徴です。22日は大型のクレーンを使って7戸が設置されました。3人用の2DKタイプと7人用の4LDKタイプがあり、25日までに33戸を球磨村に設置する計画です。8月上旬には、球磨村の担当者は仮設住宅の鍵を住民に手渡したいとしています。
 現場工事責任者の田内玄史さんは「球磨村の皆さんで被災された方に一日も早く安心で安全な住まい、生活を取り戻してもらいたい」と、地元マスコミの取材に答えていました。
ムービングハウス設置工事
 ムービングハウスは、工場で製造する木造の一般住宅です。解体せずに基礎から建物を切り離してクレーンで吊り上げ、家具もそのままで貨物としてトラックに載せて輸送できる高い移動性をもっています。国際規格の海上輸送コンテナと同じ形・サイズ(長さ12m×幅2.4m、広さ約30m2が基本ユニット)に統一されているため、道路の通行に特別な許可を必要とせず、フェリーなどの海上輸送にも迅速に対応できます。設置後は、電気・上下水道、ガスに接続すれば、すぐに生活をはじめることができます。被災地で一から職人が組み立てる建設型の応急仮設住宅に比べ、職人不足や悪天候などの影響を受けることもありません。被災者が早期に入居できることは、災害関連死や健康被害のリスクの軽減にも有効です。通常のプレハブ型仮設住宅が建設に2ヶ月から3カ月掛かるのに対して、ムービングハウスは1週間から2週間で入居が可能となります。
 また、ムービングハウスは、もともと一般の住宅として開発・使用されています。例えば、窓やドアには三重ガラス製サッシを使用されています。したがって一般の住宅と同等以上の耐震性、断熱性・気密性、防音性などの性能を備えています。被災者のために応急的に仮設住宅を建設するのではなく、最初から高い住宅性能を備えた「一般住宅」を仮設住宅として提供するという、発想の転換です。これによって、入居者の安全と健康を向上させることが期時できます。
 ムービングハウスは、建築物でありながら移動できるので、「社会的備蓄」が可能になります。これは、平常時は全国各地で宿泊施設やコミュニティ施設として活用しつつ災害時の応急仮設住宅として備えて、災害時には災害救助法にもとづき相互に貸し出す取り組みです。今回、球磨村に導入されるムービングハウスの内、約3分の1は茨城県小美玉市で、3分の1が長野県安曇野で「防災・家バンク研修所」として社会的備蓄されているユニットが搬入されました。

球磨村総合運動公園
 今回7月21日から、2泊3日の短期間でありましたが、私は球磨村の現状も調査させていただき、以下の2点を是非ご検討いただきたく、熊本県ならびに球磨村関係者に提案させていただきます。

提案−1 球磨村の仮設住宅の増設をご検討下さい。
アーキビジョン21社によると現状50棟〜100棟程度は、すぐに対応できるということです。
場所は、総合運動公園の野球場が立地としてふさわしいと考えます。

提案−2 今回の豪雨災害対応が一段落したのち、ムービングハウスの「社会的備蓄」拠点を熊本県内に誘致していただきたいと提案致します。
50年に一度、100年に一度という自然災害が、毎年のように繰り返されています。九州地区にも、防災家バンクの拠点施設が是非必要です。茨城県境町では民間活力を活用し社会的備蓄拠点「ホテルスタンバイリーグさかい」を建設しました。建設費の2分の1を国の拠点整備交付金でまかない、残り2分の1を民間企業が賃料にて支払うことによって、実質自治体の負担をゼロにしています。