小美玉防災・家バンク
 一般社団法人日本ムービングハウス協会は、企業版ふるさと納税制度などを活用し、茨城県内自治体にムービングハウス300棟を、今後5年間で寄付する方針を明らかにしました。ムービングハウスへの理解を進め、「社会的備蓄」の拡大により大規模災害へのレジリエンスを高めることを目標としています。ムービングハウス協会の佐々木信博代表理事は「大型災害に備え、全国で最終的に1万棟くらいの備蓄を目指す」と語っています。
 ムービングハウスは、海上輸送コンテナと同じ形で、基本は幅2.4メートル、奥行き約12メートルの約30平方メートル。 高断熱、高気密のムービングハウスは、エアコン一台で快適な住環境を創出します。防音効果にも優れ、結露などもほとんど起こりません。また、その名称のように移動しやすさが最大の特徴で、災害時に迅速な応急仮設住宅の整備と、平常時に他用途で活用できる利点があります。会員の株式会社アーキビジョン21が約25年前に技術開発。北海道を中心に一般住宅として約3000棟の販売実績があります。
 今回の寄付の取り組みは、災害時に被災地へ大量供給するのに備え、社会的備蓄を行政と連携して取り組む「防災・家バンク」事業の一環です。会員各社が企業版ふるさと納税を活用して、自治体に寄付する取り組みです。
熊本県球磨村の仮設住宅
 ムービングハウス協会は、南海トラフ地震や首都直下型地震など大規模災害で100万〜200万棟の応急仮設住宅が必要になると予想。最低でも40万戸の備蓄がないと対応できないとみて、生産拠点の拡充を図る方針です。今後4〜5年の間に全国で1500棟を備える方針で、このうち300棟を茨城県内の自治体に振り分ける考えです。
 ムービングハウスが災害救助法の応急仮設住宅に適用されたのは、2018年の西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市の活用が初めてです。北海道胆振東部地震の被災地や令和元年東日本台風の常陸大宮市で、仮設住宅としての実績を積み重ねました。今年の7月豪雨の熊本県球磨村では、1期工事33棟、2期工事35棟、合計38棟が仮設住宅として採用されました。ムービングハウスは、耐久性にも優れているため、使い回しができ資源の節約と建築コストの削減ができます。短時間で入居できることから、自宅に戻れなくなった被災者の早期の生活安定と、災害関連死・健康被害のリスク軽減が期待されます。優れた居住性は、被災者の生活再建への大きなサポートとなります。
 常陸大宮市の仮設住宅は、電気や水道などの接続に便利な場所に設置されたため、着工から入居まで最短の8日間で完了しました。熊本県球磨村の仮設住宅も2週間で完成しました。
 災害時に協会が持つ、ムービングハウスをいち早く応急仮設住宅として活用できるよう、境町や下妻市、桜川市、常総市、水戸市、取手市の6市町が協会と協定を結んでいます。小美玉市、那珂市とも協定締結の予定です。今年度は、協定を結んだ自治体を優先に60戸程度の寄付を行う予定としています。
 ムービングハウス協会の会員数は45社。全国に12の生産拠点があり、5の共同拠点があります。災害時に活用できるムービングハウスは現在約500棟。県内には小美玉市内に展示場兼宿泊施設「小美玉防災・家バンク」があり、下妻市内に生産工場(鈴木鉄工建設)があります。行方市内にも、展示場とストックヤードを建設中です。