三菱パワー日立工場本館
 日立製作所の企業城下町日立市にとって、日立工場(海岸工場)はその本丸、まさにフラッグシップ的な存在でした。その日立製作所日立工場の看板はひっそりと下ろされ、三菱重工“MITSHUIBISHI”の文字が大きく掲げられています。
 2020年9月1日、三菱重工業は、日立製作所と共同出資している火力発電子会社、三菱日立パワーシステムズ(MHPS)を完全子会社としました。この時点で、日立工場から「日立製作所」の名前は外され、 「三菱パワー(株)日立工場」として新たなスタートを切りました。
 2016年2月1日、MHPSは、三菱が65%、日立が35%を出資する形で火力発電事業を統合し発足しました。両社のタービンやボイラの技術面で融合を推進し、大型ガスタービンの世界シェアは約3割と、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と独シーメンスを抑えて世界トップとなりました。タービン発電機の発電効率も世界最高水準です。三菱重工、日立製作所がそれぞれ対応していた保守をMHPSが引き受けることで業務効率も高まることが期待されていました。
 しかし、両社の蜜月は程なく頓挫。それ以前に日立が受注し、MHPSが引き継いだ南アフリカ事業の工期が遅延し、三菱は損失負担額の支払いを日立に請求する事態に至りました。2019年12月、日立製作所が和解金2000億円を支払い、MHPSの全保有株式も譲渡することで決着しました。和解金と株式価値を合わせると5500億円以上が日立から三菱に支払われました。MHPSの完全子会社化により、三菱重工は日立製作所の技術者を取り込む一方、日立は火力発電システムから事実上撤退することになり、海岸工場の看板も掛け変えられることになりました。
三菱パワー日立工場空撮
 日立製作所日立工場には、日製創業の地として数々の産業遺産が保管されていました。現在、日立製作所は、こうした貴重な品々を保管・展示する新たな施設「日立オリジンパーク」を、福利・厚生施設「大みかクラブ」に整備中です。日立工場内にある「創業小屋」を移築するほか、「小平記念館」に収蔵されている貴重な資料などを展示する施設となります。「日立オリジンパーク」は、2021年に開所を予定しています。展示物は人工知能(AI)など先端のデジタル技術を使い、一般客にも楽しめる内容になります。
 日立製作所は、1910年に小平浪平氏が創業し、鉱山開発などに使う5馬力の電動モーターが最初の製品でした。1956年に小平氏の功績を後世に残すため、日立工場に小平記念館と創業小屋を建設しました。老朽化や耐震問題などがあることから今回大幅な改修を決断されました。
日立工場の沿革
参考:三菱パワー日立工場の紹介パンフ
https://power.mhi.com/jp/media/367796/download