この夏、新潟、福井など列島各地を襲い、甚大な被害を及ぼした局地的集中豪雨――。その教訓を生かし、災害に対する万全の対策が求められる中で、災害時の命綱となる緊急通報体制の充実が大きな課題となっています。
 7月中旬に新潟県を襲った集中豪雨では15人が犠牲となりました。最も被害の大きかった三条市、見附市、中之島町の3市町は、いずれも自治体が住民に一斉・同時に通報する「同報系」と呼ばれる防災行政無線が整備されていませんでした。
 三条市は7月13日午前10時10分から同11時40分にかけ、1万555世帯に順次避難勧告を発令しました。しかし、住民に一斉・同時に伝える防災無線はなく、市が放送するFMや広報車両での伝達では、住民に徹底することは出来ませんでした。FM放送は聴いている人が少なく、広報車のスピーカーは雨と風の音でかき消され、雨戸を締めて室内にいた住民には全く聞こえなかったということです。
 一方、7月18日からの福井豪雨で死者1人、行方不明1人、床上・床下浸水389戸の被害が出た福井県美山町では、午前6時の災害対策本部設置から5分後に山間地域の一部に避難勧告を発令し、8時40分には町内全域へ勧告を発令しました。いずれも町内全世帯に設置した防災無線を通じて住民に伝えられた。堤防決壊などが起こったのは午前10時ごろまでには、全ての住民の避難が完了していました。町当局は「急激な出水が起きた99年の豪雨の経験から早めに判断ができ、防災無線が周知に生かされた」と分析しています。
 防災行政無線の整備について国は、これまで整備費用の2分の1を補助する国庫補助制度と起債による財政措置によって整備を促進してきました。一連の豪雨災害を受けて消防庁は7月28日、迅速な避難体制を確立する上で防災行政無線の整備に努めるよう各都道府県知事に通知しました。
 消防庁は概算要求で「防災行政無線(同報系)の普及促進」に21億円(前年度18億円)を要求したほか、テレビ局の地上デジタル放送による携帯端末向け放送を、防災分野に導入した場合の効果を検討する費用も要求に盛り込みました。また、消防庁は現在、各都道府県に対し、市区町村の防災行政無線の整備に関する今後の取り組みについて9月中旬までに調査するよう依頼していますが、その状況を把握した上で、国の補助の上乗せを検討しています。
(写真は日立市内の各家庭に配備されている防災行政無線の戸別受信機)
 日立市内では、99年9月30日に発生した東海村JCOの臨界事故を契機に、市の南半分にあたる3万6000戸あまりに防災行政無線機の個別受信システムが稼働しています。その整備費には、10億円がかかっており、残り全世帯に防災無線のシステムを整備するには負担が過大となります。
 井手よしひろ県議は、今日立市が進めているCATVによる情報基盤整備の中で、ケーブルテレビを活用した防災情報システムの可能性を研究するべきと提案しています。