日立電鉄線の存廃問題で、日立電鉄に代わる鉄道事業者を公募している常陸太田市は、9月8日の市議会一般質問で、交渉を断念したことを明らかにしました。
 議員の質問に答えて、萩谷暎夫総務部長は「照会のあった県外の民間鉄道一社とは、条件が折り合わず、引受事業者になれないことが判明した」と述べました。常陸太田市が鉄道施設と運行の一体的継承を求めたのに対し、事業者側は施設を保有せず委託による運行を条件としたため、交渉が入り口で頓挫したと地元茨城新聞には報道されています。
 また、読売新聞の地方版(2004/9/9付け)によると、常陸太田市に問い合わせてきたのは、岡山市内で路面電車を経営している「岡山電気軌道」で、9月になってから3回にわたり、常陸太田市と電話で話し合いを重ねてきたということです。常陸太田市は、電鉄線の線路や施設などを岡山電軌が一括して継承し、運営を引き継ぐよう要望しました。これに対し、岡山電軌側は、経営試算のために運転や保線費用など具体的な数字の提示を求めましたが、常陸太田市は「日立電鉄と話をしていない」と答えるにとどまったと報道されています。その結果、岡山電軌は「経営試算、運営のノウハウの提供など存続の手助けは出来るが、公的援助を得たとしても、採算の合わない鉄道を経営するのは無理」と判断し、9月6日の時点で協議続行を断念したといわれています。
 今回の常陸太田市と岡山電軌とのやり取りは、まさに今回の日立電鉄存続問題への行政対応の無責任さを露呈したものと考えます。
 常陸太田市は、日立電鉄、日立市、茨城県とはしっかりとした協議もなく、日立電鉄線を継続する事業者の募集に踏み切りました。手を上げた事業者に日立電鉄の具体的な事業内容を説明できないなど、問い合わせをいただいた事業者には、まさに「礼を欠くやり方」としか言いようがありません。
 継続に当たっては、上下分離方式が可能なのか、そこに行政は財政支援も含めて関与できるのか、また、鉄道敷きや施設・車両など無償譲渡が可能なのか、こうした最も重要な問題に答えを出さずして、「継承を希望する企業が出た場合は支援を検討する」といった中途半端な発言を繰り返すにではなく、市及び県当局は、責任ある回答を用意する必要があります。
(写真は岡山電気軌道の最新鋭狭軌超低床車MOMO)
<リンク>岡山電気軌道のHP