井手よしひろ県議は、1月19日、茨城県住宅供給公社が、水戸市と常北町にまたがる十万原地区に開発を進める「水戸ニュータウン」(十万原住宅団地)を現地調査しました。
 この「水戸ニュータウン」は、水戸市の中心部から車で約25分。国道123号から300メートルほど入った台地の一画に、2002年9月から、約1ヘクタール38区画分の販売が行われています。
 当初計画を大幅に変更したとはいえ、公社は最終的に約135ヘクタールを開発します。計画では、1700戸の住宅に加え、大規模商業施設、病院なども誘致し、2015年度に計画人口5100人を見込んでいます。
 今回の特徴の一つは、従来よりも坪7万円からと価格を低く押さえていることです。ちなみに一番低価格の区画は70坪で520万円となっています。
 販売開始から2年を過ぎ、隣接地には県営十万原アパートの入居も始まり、市立リリーベール小学校が昨年開校するなど、やっと具体的な開発の姿が見えてきた状況ですが、分譲の実績はあまり上がっていないのが現状です。
 公社自体の廃止プロセスが検討されている中、この大規模開発はどのように完結させていくべきなのか、問題の深刻さを実感しました。
参考:水戸ニュータウンの詳細
水戸ニュータウンの地図
水戸ニュータウン(十万原住宅団地)の開発の経過を、新聞各社の記事から整理してみました。
4000戸の住宅団地計画 水戸・常北地区で県住宅供給公社
1991.05.24 朝日新聞東京地方版/茨城版
 水戸市と東茨城郡常北町にまたがって4000戸余りの住宅団地を造る計画が、県住宅供給公社によって進められている。同公社はこのほど、土地の買収に着手した。
 計画されているのは「十万原住宅団地(仮称)」。計画では、面積は約250ヘクタール、人口は1万6000人とされている。水戸市藤井町と常北町にまたがる山林、田畑を買収して、造成する計画だ。
 同地域の開発は以前からの課題とされ、過去には、県庁や大学を誘致する運動が盛り上がったこともあった。そうした流れの中で、水戸市の充実、拡大のためには住宅需要にこたえることが不可欠として、同公社が住宅団地を開発することになった。
 水戸市の側では、地元住民で作る開発対策協議会が、常北町の側では同町開発公社が、それぞれ中心になって用地交渉にあたっている。計画通りに完成すれば、同公社がこれまでに手がけた事業の中では最大規模のものとなる。

岐路に立つ住宅公社 売れない団地、光見えず /茨城
1997.05.17 朝日新聞東京地方版/茨城版 
○荒れる予定地、やっと見直し 十万原
 水戸市の中心部から北西に10キロほど。同市藤井町と常北町増井の間の高台に畑地が広がる。県住宅供給公社が開発を計画中の「十万原住宅団地」(仮称)の予定地だ。
 ゴボウやヤマイモの産地だったが、今は荒れた土地が目立つ。道路わきには所々に「ゴミを捨てるな」の立て看板も。近くに住む兼業農家、鯉渕洋二さん(51)は「住宅地ができれば、バスが通って便利になると期待もあった。土地を売ったはよいが、いつになったら造成が始まるのやら……」。
 十万原の造成計画が持ち上がったのは1989年ごろ。それまでも県庁や大学の誘致など、数多くの開発話が持ち上がり、消えた。「それなら住宅団地でどうか、という話になった」と公社の担当者は振り返る。
 当初の予定では、面積250ヘクタール、計画戸数4200戸。県内では、民間を含め、けた違いの大きな規模だ。「常陸那珂港の開発が進めば、住宅需要も伸びるだろう」(担当者)との見込みだったという。しかし、計画規模を打ち出す根拠となった需要予測やデータは、公社にはまったく残されていない。用地買収が一部で難航したため、公社は92年暮れ、計画を170ヘクタール、3000戸に縮小した。造成と分譲開始のスケジュールも99年度と2001年度にずれ込んだ。
 「今の規模のままでは、完売は厳しい」。公社は昨年暮れ、ようやく計画の見直しにとりかかった。有識者で構成する「まちづくり計画策定委員会」が発足し、「住宅面積を減らし、ほかの民間施設を誘致する」との議論も出ている。
 用地買収は既に85%が終了した。これまで投じられた資金は約140億円。いつ開発に着手できるのか、見通しは立たない。

必要なの?超大型事業 水戸〜常北「十万原地区」ニュータウン事業=茨城
1999.07.31 読売新聞東京朝刊/茨城版
◆販売見通し不安の声も 後戻りできない… 県住宅供給公社 「“良質”供給、公社の使命」
 県住宅供給公社(理事長・角田芳夫副知事)が水戸市北西部から常北町に及ぶ136ヘクタールの山林や原野、通称「十万原地区」に計画しているニュータウン事業が、今年度中に建設省に事業計画の認可を受けて、本格的に動きだす見通しだ。常陸那珂港(ひたちなか市、東海村)周辺の開発に伴う住宅需要にこたえ、病院や商業施設なども備えた新しい街をつくる、と公社は目的を説明する。しかし、構想着手後にバブル経済は崩壊し景気は低迷して、住宅事情は一変した。事業費400億円以上、1700戸、人口5000人という公社最大の開発計画には、「建設しても売れるのか」、「バブル後の不況期にニュータウンそのものが必要か」と、疑問の声が出ている。
 同事業の構想を公社が地元に持ちかけ、土地購入を始めたのは1991年ごろ。土地価格はまだ上昇中で、「将来の住宅需要に応じられるように」と先手を打ったものだった。
 公社では、その後の環境一変を受けて、構想を二度見直して規模を当初の約半分に縮小、現在の計画となっている。
 しかし、現計画でも疑問の声はある。水戸市内の民間住宅会社の社員は、「十万原から一時間かけて常陸那珂港まで働きにいく市民は、まずいないだろう。また、住宅を建設して売れなければ、土地の金利、人件費や広告費がかさみ、積もれば販売価格が原価より高くなる。一方で、よほど安い価格設定をしない限り売れないだろうし」と厳しく指摘する。(中略)
 これに対して公社の青木昭総務部長は、売れ行きが不振の場合、値段にはね返るおそれがあることが悩みの種と認めながらも、「住宅需要は将来確実にある」と言い切る。また、一般の開発と違い、生活に必要なインフラも地元の自治体と協力して一体的に整備し、病院や学校なども備えた良好なニュータウン構想であることを強調する。(中略)
 公社は県や県議会での事業見直し論を踏まえて1998年6月、〈1〉新規事業は当面行わない〈2〉「百合が丘」の建設戸数は約200戸先送り〈3〉他の三つのニュータウン開発は4〜6年間、事業を先送りする――などのリストラ策を決定。
 百合が丘ニュータウンと永国団地(土浦市)で実施した、上水道やガス、電線を地中に埋め込む街の構造だと経費がかさむため、少しでも販売価格を抑えるために十万原開発ではこの構造での整備はしない方針だ。
 十万原計画について、地元水戸市都市計画課では、「市の人口増につながる話だし、公社がやっていただけるのだから歓迎」としながらも、必要になるインフラ整備の負担には常北町とともに消極的。両自治体に負担を求めたい、公社との今後の協議が課題となっている。
 こうした厳しい環境の中で青木部長は、「十万原は、我々にとっても大きなかけ、存在意義を問われる事業。良質で良好な住宅供給が公社の使命」と語る。一方、関係者からは「もう農地としての使用をやめ、用地も9割買収済みだから、後戻りできない」との声も漏れている。

存続かけ新たに分譲 借入金など抱える県住宅供給公社 /茨城
2002.09.21 朝日新聞東京地方版/茨城版
 水戸市と常北町にまたがる十万原地区。水戸市の中心部から車で約25分。国道123号から300メートルほど入った台地の一画約39ヘクタールは1次的な造成工事が終わり、住宅分譲予定地は整地されていた。28日から、このうち約1ヘクタール40区画分の購入予約受付を始める。
 公社は最終的に約135ヘクタールを開発する。公社が保有する県内の土地では最大規模だ。計画では、1700戸の住宅に加え、大規模商業施設、病院なども誘致し、2015年度に計画人口5100人を見込む。
 今回の特徴の一つは、従来よりも価格を低くしていることだ。
 公社は、これまで民間に比べて消費者の信頼性が高いことを背景に、比較的高い値段を設定していた。価格はまだ公表していないが、公社建設部の梅沢信行課長代理は「これまでの考えを改め、思いきった価格にした。100人のうち70〜80人は安いと感じると思う」と自信をのぞかせる。
 さらに、住宅購入者には計400万円を公社に積み立ててもらい、年4%の高い金利を付ける「積み立て式分譲住宅」や、土地の面積についても客の希望に柔軟に対応するなど、従来にない条件を付けて販売促進を狙う。通常1週間の募集期間を、約1カ月に延長する。

水戸・常北「十万原新都市」、契約は5件・かすむ複合都市構想、公社の見直し議論も
2002.11.03 常陽新聞
 県住宅供給公社(理事長・角田芳夫副知事)が開発した水戸市と常北町にまたがる県内最大の住宅団地「十万原新都市」(仮称)の販売が不振だ。10月20日に第一期分の売り出し40戸の募集は終了したが、わずか5件の申し込みしかなかった。同公社では販売を延長して引き続き売り込みに奔走するが、長引く景気低迷などの影響で見通しは暗い。同住宅団地は総事業費約四百七十八億円の税金を投入し、2015年度には完成を目指す計画だが、県では同公社自体の存続を含め抜本的に見直す動きも出ている。同住宅団地が構想に描く複合都市としての街づくり以前に、住宅販売に苦戦を強いられている。
 水戸市中心街から約15キロ離れた場所にある同住宅団地は、同市藤井町と同町増井町にまたがる。135ヘクタールに住宅1200戸を建設する。計画人口5100人と同公社としては最大規模の住宅団地だ。そこに県営住宅(2004年春に募集開始)のほか、ショッピングセンターなどの商業施設、私立の幼稚園・小学校などの教育施設も誘致を進め、完成目標の2015年度には「複合都市」を目指す。
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 バブル期の1991年の用地買収から本格的に事業が動き出し、住宅エリアについては2001年10月に第一次造成工事に入り、現在60%が完成した。最初の第一期分40戸の売り出しは9月28日に始まった。販売価格は1平方メートル単価平均で2万7000円と、同公社の物件としては低価格に設置。さらに一定の金額を積み立て、土地・建物の購入代金に充てる「積み立て分譲住宅制度」も導入するなど、工夫をこらして販売に乗り出したものの、いざふたを開けたところ申し込みは低調。たった5件の契約で10月20日に販売は終了してしまった。
 同公社の大内吉雄総務部長は、「この経済情勢の中での販売だったので苦戦は覚悟していたが、五件しか申し込みがなかったのは予想外だ」と、苦渋の顔を浮かべる。販売不振の要因の一つに道路などのインフラ整備が進んでいないことを挙げる。
 現地は山林を切り開き平坦にした広大な造成地が広がっているだけの状態。大内総務部長は「現地を見学に訪れた人から、周辺整備について質問や心配する声が多かった」と話す。
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 同公社では約326億円をかけて区画道路、宅地造成、調整池などの整備を行い、主要幹線道路や下水道・上水道・公園・緑地などのインフラ整備については、国や県、それに地元水戸市を中心に約152億円の税金を注ぐ。2015年度の完成まで合計で約478億円もの多額の税金が支出される。
 県では年内に国道123号に接続する「藤井橋十万橋線」と、市でも年度内に団地内の「十万原環状線」の道路工事に着手する。
 インフラ以外については、教育施設では、学校法人「リリー文化学園」(水戸市南町)が2004年度に私立小学校を、また2008年度には私立幼稚園を開園する計画を表明しているが、ショッピングセンターなどの商業施設は未定の状態。

十万原開発事業計画変更を可決 県都市計画審議会=茨城
2002.12.25 読売新聞東京朝刊/茨城版 
県都市計画審議会(幡谷浩史会長)は12月24日、県住宅供給公社(理事長・角田芳夫副知事)が水戸市北西部から常北町にかけての135.2ヘクタールに計画している「十万原新住宅市街地開発事業」の土地利用計画の変更案件を原案通り可決した。
住宅用地を42.3ヘクタール(31.3%)から40.8ヘクタール(30.2%)に削減、公共用地を54.4ヘクタール(40.3%)から55.8ヘクタール(41.3%)に広げるなどの内容。同事業は集合住宅も含め1700戸、人口約5100人規模のニュータウンを造成する計画だが、売れ残りを懸念する声が出ていた。

「県住宅供給公社、廃止を」 検討委が提言 巨額借入金肩代わりも=茨城
2003.12.19 読売新聞東京朝刊/茨城版
巨額の借入金を抱えて経営難となっている県住宅供給公社(理事長・角田芳夫副知事)について、県が設置した「あり方検討委員会」(委員長・大村謙二郎筑波大教授)は12月18日、「公社は廃止に向かうべき」との提言を公表した。借入金のうち556億円について、県は損失補償をつけており、公社の事業失敗のつけが県財政を直撃する可能性が出てきた。県は来年秋をめどに公社のあり方を最終決定する。
提言では、勤労者向けの住宅と宅地供給を行ってきた同公社の役割について「終わりつつある」と明記。そのうえで、具体的な事業のうち、住宅分譲事業について、〈1〉用地取得を伴う新たな住宅開発は行わない〈2〉保有している土地は造成費を極力かけずに現状のまま処分する――とした。
また、水戸市と常北町にまたがる十万原団地開発(135ヘクタール)については、第一期事業(39ヘクタール)の造成は「やむを得ない」としたが、以降の造成は凍結する方針を打ち出した。