身体・知的・精神の3つの障害者サービスを一本化
 あらゆる障害者の地域での「自立支援」を目的として、福祉サービスを利用した障害者に原則1割の自己負担を求める「障害者自立支援法」案が閣議決定し、2月10日に国会に提出されました。
 現在、障害者の福祉サービスは、「身体」「知的」「精神」の各障害別にばらばらの法律(身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法、児童福祉法の一部)で定められていますが、この「障害者自立支援法」で一本化されることになります。支援費制度でも積み残された「精神障害」も含めた一体的な新法となったことは、画期的なことです。
 その背景には、2003年度に導入された「支援費」制度が、財政的に頓挫したことから、国と都道府県に費用負担を義務化する一方、障害者の自己負担を制度化します。今国会で成立すれば、2006年1月にも実施されます。将来的には、介護保険制度との一体化も視野に入れられており、大きな議論を呼びそうです。
自立支援法の目的は、安定的な財源確保
 2003年度からスタートした支援費制度は、障害者自らがホームヘルプなどの福祉サービスを選択し、サービスを提供する指定事業者や施設と直接契約する制度です。2003年4月から身体障害者と知的障害者を対象にスタートしましたが、2004年度は国の補助分だけで約250億円の財源不足となる見込みです。厚労省は、補正予算や事業費の振り分けなどで財源を確保する方針です。
 支援費の補助は国が2分の1、4分の1が都道府県、残りが市町村となっていますが、国と県は、予算の範囲内でしか出せない裁量的経費であるため、財源の不足分は市町村が負う制度となっています。こうした仕組みでは、安定的に障害者福祉サービスを提供することはできません。
 そこで、「自立支援法」では、国と都道府県が財政負担に責任を持つことを明記しました。義務的経費として位置づけることで、財政の安定化が可能となります。
 反面、サービス量に応じて原則1割を負担する「応益(定率)負担」の考え方を導入します。応益負担を導入する理由について厚労省は、サービスを利用する人としない人の公平を確保することや、障害者自らが制度を支える仕組みにすることなどを挙げています。具体的には、月額で最高4万200円を負担上限とし、所得に応じ2万4600円、1万5000円の2段階で上限を引き下げ低所得者対策とします。また、生活保護受給者は無料とします。
課題も多く国民的議論が必要
 「自立支援法」にはいくつかの課題があります。
 例えば、負担の範囲や利用限度額を定める所得を本人に限定することが必要です。「自立支援法」では、介護保険法との統一性を考慮し、家族の所得を加味して利用限度額を定める仕組みが提示されています。家族の負担軽減を図る意味でも、利用者個人の所得の中での負担を考えるべきだと思います。
 また、精神障害者の通院医療に関する公費負担制度が見直されるために、自己負担が急増する懸念があります。
 外来通院している精神障害者の医療費制度は、現在、通院医療費の95%を保険給付と公費で賄うことになっています。つまり、自己負担は5%です。(低所得者は自己負担なし)これを、所得に応じて1〜3割に引き上げます。場合によっては、自己負担が一挙に6倍となるケースもあります。(通院医療費公費負担制度<32条>問題)