10月25日、政府は農地集積を加速させる「農地中間管理機構」の設立・整備に向けた関連法案を国会に提出しました。日本の農地は、所有者と耕作者の関係が複雑に入り組み、地域内でモザイク状に点在していることが珍しくありません。バラバラに散らばった農地は耕作の効率が悪く、生産性が低くなってしまっています。生産性を高めて激しい国際競争に勝ち抜く「攻めの農業」を実現するためには、農地を一つにまとめ、経営規模を拡大する取り組みが欠かせません。
農林水産省によれば、経営意欲が高い農家や農業法人などの“担い手”が利用する農地は全農地面積の5割程度です。政府は農地集積の目標として、この割合を今後10年間で8割に引き上げることをめざしています。
その対策として注目されているのが、政府が来年度、各都道府県での整備をめざす農地中間管理機構です。現行制度では、都道府県に設けられている農地保有合理化法人が農地集積に取り組んでいますが、農地の買い入れが中心であり、所有権を手放したくない人からは農地を集めにくい欠点があります。また、担い手にとっては、農地を買い取って営農するには、価格が割高で、集積が限定的にしか進みませんでした。
これに対して、農地中間管理機構は、農地の「貸し借り」の手法を活用します。農地中間管理機構が仲介役となり、小規模農家などから農地や耕作放棄地を借り、大規模農家や企業に貸し出すことで、農地の集積を加速させる仕組みです。
貸借の公平・効率的な運営を担保するため、貸付先の選定ルールを公表し、農地の借り受け希望者は公募します。同時に農業用水路などの基盤整備も行い、安定的に利用できる環境づくりも進めていくことにしています。
一方、農地の滞留を防ぐためには、借り手の着実な確保が重要になります。
借り手が見つからない農地でも、農地中間管理機構は貸し手に賃料を払わなければならないからです。
こうした事態を防ぐため、そもそも借り手の見込みがつかない農地は借り入れないとする基準を策定。一定期間内に貸し付けの見込みが立たない農地については、賃貸借契約を解除できるようにします。
農水省は来年度の概算要求に、農地中間管理機構による農地集約のための予算約1000億円を計上しました。
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