画期的な意義もつ障害者自立支援法案について考える
 「自立と共生」の地域社会づくりをめざし、障害者の福祉サービスを抜本的に改革する障害者自立支援法案が、国会で審議されています。自立支援法に対する井手よしひろ県議ら公明党の考え方や取り組みについて、Q and A形式で整理してみました。
障害者自立支援法案の意義
第1に、身体、知的、精神と障害種別に分かれていた福祉サービスを一つの法律に統合し、一元化することです。とりわけ支援費制度でも対象とならず、大変に遅れている精神障害者への福祉サービスが、身体、知的障害者と同じ法律に位置づけられたことは画期的な意義があります。
第2に、障害者の福祉サービスは従来、法律で支出が義務付けられていない「裁量的経費」の位置づけでしたが、これを国が義務的に負担する「義務的経費」に位置づけることで、安定した財源を確保できるという大きな意義があります。
障害者支援費制度との関係は
2003年度にスタートした支援費制度は、知的障害者の移動介護をはじめ、潜在化していた需要を顕在化させ、サービスの利用が大きく拡大するなど、障害者福祉を前進させました。法案は支援費制度を発展させ、障害者の福祉サービスを全体としてさらに拡大するものです。しかし、支援費制度は財政的基盤が弱かったため、行き詰まったと言っても過言ではありません。この反省が、自己負担と財政の経費の義務化を位置づけた支援法の枠組みに繋がりました。
負担のあり方をどう考えるか。
従来は所得に応じて負担する応能負担でしたけれども、今回はサービス量に応じて負担する定率負担(応益負担)の部分と、所得に応じて負担の上限額を設定する応能負担の部分を組み合わせた負担のあり方となっています。
全体として、応益負担であるとのご指摘もありますが、最重度の障害者で月200時間を超えて介護サービスを受ける方であっても、それに応じて負担が増えるということではなく、所得に応じて負担の上限が決まるという意味では応能負担の制度であるということができるわけです。
負担のあり方を見直すのは、介護保険制度との連携を視野に入れ、他の制度との整合性を図るということが一つあります。
そして、定率負担について言えば、同じ所得、同じ障害程度区分の方であれば、サービスの利用に差があった場合に、それに応じて負担をするということは、逆に公平性を確保する意味でも大切な視点ではないでしょうか。
ただし、負担が現行の支援費制度の水準から、大きく増大するケースは問題です。低所得者への十分な配慮をはじめ、障害者の負担が急激に増大しないよう、激変緩和策を設けるなどの工夫を厚生労働省に強く求める必要があります。
利用者負担の上限額設定は本人の所得を基準に設定すべきでは。
利用者負担は定率負担と応能負担の組み合わせで決まりますが、この定額の上限、応能負担の部分は、法案では世帯の所得によって決まるとされています。
これは介護保険や医療保険など他の制度との関連から、このような規定になっていますが、障害者の福祉サービスにおける利用者負担は、扶養義務をできるだけなくしていく方向で進められてきた経緯があります。この歴史の流れは逆行させてはなりません。
井手県議ら公明党は、財務大臣と厚生労働大臣への要望や予算委員会の質疑を通し、本人の所得を基本とするよう訴えています。
今後の障害者の所得保障については。
就労支援の強化はもちろん、昨年、無年金障害者を救済する法律を成立させましたけれども、現在の障害基礎年金の水準が適切かどうか、また諸手当のあり方等について引き続き検討していくことが必要です。
財政難から障害者に負担を押し付けるのかとの批判もあるが。
財政難といっても、支援費制度に関する財政支出は毎年、大幅に拡大しています。今回の改革は、今後さらに増大していく障害者の福祉サービスを賄うための財源を確保するためのものです。
法案は政省令に委任する部分が多く、具体的な姿が見えないとの指摘があるが。
約200項目が政省令に委ねられており、自らの生活が具体的にどうなるのか分からないというのでは、障害者の方々は安心できません。従って審議を通して、政府は政省令をどのような考え方でどのような水準に定めていくのかを明らかにすべきです。
改革によってサービスの利用が減ることがあってはならないし、施設から地域へという流れを後戻りさせてはなりません。障害者の声が政省令に十分反映されるよう、国会審議を進めていくことが大切です。
介護保険との統合問題については。
障害者が介護保険によるサービスを活用できるようになれば、障害者福祉サービスの枠は格段に広がることは間違いありません。そういう意味でも、介護保険との統合・連携の問題は着実に議論を進め、結論を出すべきだと思います。