あすなろの郷の遠景  茨城県社会福祉事業団(理事長:橋本昌県知事)は、平成16年度から、内原町の知的障害者施設「県立あすなろの郷」の入所者580人の約3割にあたる200人程度を、今後10年間で地域のグループホームなどに移行する方針を固めました。
 ノーマライゼーションの理念を踏まえて、現入所者の地域社会への移行を積極的に推進すると共に、地域生活へ移行した人たちの支援を将来にわたって継続することになります。
 具体的には「あすなろの郷」の役割・機能を、10年計画(平成25年度)で以下のように見直しを行います。
1)入所中心の施設から地域生活移行支援機能へのシフト
 入所者590人を10年間で290人程度に削減。現在2カ所のグループホームを47カ所に増設し、180人程度を移行する。重度重複障害者や強度行動障害者など民間の施設では処遇困難な利用者を中心に、250人程度受け入れる。
2)地域生活支援センターの機能充実
 24時間365日いつでも利用可能なシステムを整備する。緊急ステイに送迎サービスを付加する。
3)病院等機能の充実
 重症心身障害児施設の運営継続、老朽化施設の改修(定員40人の継続)。地域生活移行者(グループホーム)に対応した外来診療の充実など。
4)高齢知的障害者に特化した特別擁護老人ホームの設立・運営(定員80人程度)
 具体的には、3月中に3カ年実施計画を策定し、地域での生活を望む軽度の障害者48人程度を、3年間で事業団が開設するグループホーム12カ所に移行します。
 「あすなろの郷」は、1973年に設立され、茨城県社会福祉事業団が県から運営を委託されています。昨年4月に内原更生園を統合、「コロニーあすなろ」から「あすなろの郷」に改称しました。敷地約66ヘクタールの及び、居住棟や訓練施設、病院などがあります。入所者の約7割が20年以上、あすなろで暮らしています。
 地域への移行は、家族の負担増を避けるため、事業団が直営するグループホームに移すことになります。移行に際しては本人の意思を尊重し、障害程度に応じた個別支援計画を策定し、自活訓練や自立訓練ホームなどの多様なルートを用意する予定です。賃貸住宅を利用してグループホームを毎年約4カ所ずつ開設し、世話人とあすなろの郷職員が障害者の生活を支援します。費用は支援費制度や本人の障害基礎年金などを充て、新たな負担増はありません。
 都道府県レベルで、知的障害者施設の本格的な地域移行に踏み切るのは、宮城や長野などに続く試みです。
 宮城県が入所者全員を地域に移し施設を廃止する方針なのに対し、茨城県では、地域移行を進める一方で、病院や地域生活支援センターの機能を拡充させ、民間で処遇困難な重度障害者を引き続き受け入れる、いわば『茨城方式』を策定しました。
 障害者を施設に閉じ込めておく考えは、ノーマライゼーションの立場から、時代遅れです。一刻も早く地域との共生をめざすべきです。しかし、宮城県などの手法は、障害者が地域で暮らすための受け皿や支援体制が、未整備な現状では無理があることも事実です。また、どうしても施設でしか生活できない人もいることも否定できません。障害者一人ひとりの状況に合わせて、行政が責任を持って支援できる体制整備が必要です。