2005年3月末での廃線が予定されている日立電鉄線存続問題で、「日立電鉄線廃止問題市民フォーラム」が、3月21日、日立市水木町の泉ケ森公民館で開催されました。
 このフォーラムは「ひたち未来研究会」(代表世話人:伊藤智毅日立市議)などの市民団体が主催し、沿線住民など約150人が参加しました。
 日立市出身の交通評論家の宇都宮浄人さん(「路面電車ルネッサンス」の著者、日銀物価統計課長)が「地方鉄道ルネッサンス」をテーマに基調講演。電鉄が廃線の理由にしている輸送人員の低さ、設備の古さなどは、他の地方鉄道と比較して、さほど見劣りはしないと指摘しました。また、交通渋滞、市街地の衰退、老人など弱者への負担に懸念を示しました。さらに、市民出資の鉄道としてよみがえった富山県高岡市の万葉線の例を挙げ、「ヨーロッパでは、環境にやさしい鉄道が見直されている。経営面だけから見た廃線はおかしい」と持論を展開しました。
 電鉄線を経営する日立電鉄の小野勝久常務は、「安全運行のうえから廃止せざるを得なかった。残る1年、サービスに努めたい」と述べました。
 その後、茨城大地域総合研究所の斉藤義則所長をコーディネーターに、パネルディスカッションが行われました。
 日立市政策審議室の豊田泰二政策企画課長は、昨年秋の廃線検討の通知を受けた後の行政対応を報告。「廃線を甘受する気持ちはないが、現実的手段も考えざるを得ない」との意見を述べました。
 石名坂町の黒沢秀子さんは「私は車の免許を持たない。企業の問題でなく地域の問題として考え、意識改革をしなければならない。電鉄線に乗る運動を」と呼び掛けました。
 市公共交通の在り方を考える会委員の西村ミチ江さんは「鮎川駅(電鉄線終着)から市役所、病院に行くバス運行などで、利用増を図れないか」と促進策を語りました。
 存続を求める高校生徒会連絡会長の渡辺博則さんは、これまでの署名活動などを説明しながら「電車に関する祭りを考えている」と今後の活動報告しました。
 会場からも「廃線は唐突すぎる」、「日立市の対応が鍵を握る。株主だからだ」などの注文や意見が続出しました。
万葉線株式会社について
 高岡市と新湊市を結ぶ路面電車・万葉線は、加越能鉄道によって半世紀余りにわたり運行が続けられてきましたが、近年のモータリゼーションの進展や少子化等により、市民の公共交通機関離れとともに利用者が年々減少していることなどから、加越能鉄道では、これを廃止してバス代替により公共交通の使命を果たしていきたいとの意向を示しました。
 しかしながら万葉線は、
1.通勤・通学等沿線住民の交通手段である
2.進展する高齢社会への福祉対策
3.環境対策
4.都市の個性の象徴として、まちづくりに活用できる
5.定時性が確保できる
6.高岡と新湊を結ぶ都市の絆としての役割を担っている
などの存在意義があることから、両市では万葉線を重要な生活路線であり、かつ、両市の魅力あるまちづくりに活用すべき都市施設であると考え、第三セクターで存続させる方針を打ち出しました。
 そして、富山県の指導、協力を得ながら専門家の意見を参考にして、国の補助金の導入や弾力的な企業経営が可能となる点などから、富山県並びに高岡・新湊両市間で取りまとめた、万葉線を第三セクターの新会社で運行させることについて、県議会や両市の市議会でそれぞれ了承が得られたことから、富山県の支援と両市民の参加・協力を得て万葉線株式会社を設立いたしました。
(第三セクター化への経過)
平成10年度  万葉線検討会(構成:学識経験者、県、両市、加越能鉄道)を設置し、中間報告の形で「存続する場合の経営形態として第三セクター」を提案
11年度  万葉線の将来需要予測・収支見通し等について、「万葉線経営改善計画調査」を実施(県、高岡市、新湊市が(財)運輸政策研究機構に委託)
12年4月  第三セクター化に必要な初期投資額及び公的支援措置等について、「万葉線経営改善計画追加調査」を実施(同機構に委託)
5月 (財)運輸政策研究機構より、「万葉線経営改善計画調査」が報告される
6月 万葉線問題懇話会を開催し、9月に存続に向けた提言を受ける
10月〜
11月 第三セクター化に向けて市内の各種団体との懇談会開催
12月 県議会及び高岡・新湊両市議会で第三セクター化について了承
12月 富山県知事・県議会議長への支援・協力を要請
13年1月 万葉線経営第三セクター設立準備室を開設
2月 万葉線株式会社設立発起人会開催
3月 万葉線株式会社創立総会・第1回取締役会
4月 万葉線株式会社設立登記
14年1月 鉄道事業譲渡譲受認可申請、軌道事業譲渡許可申請
2月 鉄道事業譲渡譲受認可、軌道事業譲渡許可