日立電鉄(松場卓爾社長)は3月26日、国土交通大臣に対して鉄道事業の廃止届出書を提出しました。廃止予定路線は、常陸太田市・常北太田駅〜日立市・鮎川駅まで18.1キロの日立電鉄線で、廃止予定日は2005年4月1日となっています。 電鉄線の廃止理由は、経営状況悪化による安全運行の継続が困難になったためと説明されています。マイカーの普及で、年間乗客数は1981年の707万人をピークに、2002年は177万人にまで減少しました。運輸収入は3億3000万円に落ち込んでいます。全線ワンマン化や無人化駅など合理化によるコスト低減を図ってきましが、この10年間の累積赤字は約4億円に膨れ上がりました。こうした状況に中でも、安全運行確保のための設備投資は不可欠で、松場社長は「補助を除いても年間約1億2000万円掛かる。鉄道事業の基本的使命である安全運行は経営的に困難と判断した。断腸の思いだ」と廃止届提出に当たって語りました。
 地元報道によると、樫村千秋日立市長は「利用者の安全を第一とする日立電鉄の苦渋の決断はやむをえないと考える」と容認するとのコメントを発表しました。一方、渡辺龍一常陸太田市長は「交通渋滞や運行時間など社会に及ぼす影響は大きい。公的支援を含めて、維持存続の再考を要望」との声明を発表。また県の平山恒夫企画部長は「地元両市の協議や対応をみて、方針を決める」との姿勢を公表しました。
 井手よしひろ県議は、3月26日夕刻、日立電鉄から正式な廃止届けが出された事実を、国土交通省鉄道局の担当者より確認しました。その際、担当者より「鉄道事業法により、廃止届けから1年たてば、鉄道の廃線が可能になります。行政指導等で強制的に廃線を止めることは出来ないのは事実ですが、当事者と関係自治体間での話し合いは今後も出来ると思います。廃止届を提出した後、別会社が鉄道事業資産を譲り受け、鉄道営業を続けている実例もあり、鉄道事業者と利用者が納得できる結論をめざしていきたいと思います」と、語っていました。
 廃止届けで日立電鉄存続問題が終わったわけではありません。まず、関係者が同じテーブルに着く協議の場を持つことが大切です。