4月28日衆院厚生労働委員会で、年金改革案が与党単独で採決され、ゴールデンウィーク明けにも、本会議で衆院を通過する運びとなりました。
 遅きに失した感もありますが、厚生労働省は「年金改革についての資料」をホームページに掲載しました。今まで、なかなか詳細なデータが、私達に伝わってこなかったのですが、やっと提示されたかという感じです。どうしてこんなに遅いのか、国民への説明が最優先であるはずなのにとの思いで一杯です。
 今回の年金改革であまり議論されなかった事柄に、「マクロ経済スライド」制の導入というものがあります。この件も、わかりやすく説明が載っていました。(マクロ経済スライドの仕組み年金額の調整の仕組み−「マクロ経済スライド」を少し詳しく
「マクロ経済スライド」制とは
 日本の年金制度は今働いている現役世代の保険料を、その年の高齢者の年金に回す「賦課方式」です。
 しかし、65歳以上の人1人を支える15〜64歳の人数は2000年は3.9人だったのに、少子高齢化の影響で2025年は2.1人、2050年には1.5人となる見通しで、支え手の負担は重くなる一方です。
 そこで厚生労働省は年金額の伸びを抑える制度=「マクロ経済スライド」の2005年度から導入します。
 今の制度では新たに年金を受け取り始める人の年金額は、前年に受給が始まった人の水準に、その年の1人当たり賃金上昇率を上乗せした額になります。賃金上昇率が1%なら年金も1%増えるわけです。
 しかし、少子高齢社会では、1人当たりの賃金は増えても働き手の総数が減少するため、働き手全体が稼ぐ総賃金は減っていきます。例えば1人当たりの賃金が500万円から505万円に増えれば、賃金上昇率は1%になりますが、同時に、働き手が1000万人から990万人に減れば、総賃金は50兆円(500万円×1000万人)から、49兆9950億円(505万円×990万人)へ下がり、最終的には、0.01%減になってしまいます。
 このように物価上昇分から、働き手の減少分、年金受給者の増加分を差し引いて、年金受給額を計算する方法を「マクロ経済スライド」方式といいます。
 厚労省は毎年の働き手の減少率0.6%、年金受給者の平均余命の伸び率0.3%の計0.9%分を「スライド調整率」とし、賃金上昇率からスライド調整率を差し引いたものを年金改定率とします。
 なお、物価上昇が0.9%以下であったり、下落した場合でも、年金受給額を減額することはありません。
 また、今日(5/1)の朝日新聞の一面には、厚労省が公表した具体的試算値が掲載されていました。
厚生年金給付、「現役の5割」は1〜12年後で4割台に
assahi.com(2004/5/1)
 給付水準は、毎年の年金額とその時の現役世代の手取り年収を比べたもの。厚労省が新たに示した現役世代の平均手取り年収とモデル世帯の年金額の見通しをもとに計算したところ、政府案が10月に施行された場合、現在65歳以上の人の年金の給付水準は04年では59.3%だが12年後に4割台になり、20年後には43.2%にまで落ち込む。
 23年以降に年金を受け取る46歳以下の場合、最初の年は50.2%になるが、翌年に5割を割り、20年後は40.5%になる。単身者や共働き世帯の水準はさらに低くなる。
 厚労省が示したデータは政府案と同じく、09年度以降の賃金上昇率を2.1%、物価上昇率を1%としている。
 小泉首相や坂口厚労相らは国会答弁などで50%確保を強調してきたが、給付水準の推移は説明していなかった。厚労省は「作業に追われ、細かいデータ公開ができなかった」としており、今回朝日新聞の求めに応じてデータを示した。
 この記事によると、年金受給額は減ることはないが、物価や賃金の上昇分に比べて伸び率が抑制される状況が具体的に示されています。
 こうしたマクロ経済スライドを、基礎年金も含めて導入すべきがどうかなど、本質的な部分を国会では議論を深めてほしい。民主党は、参議院では夢幻の民主党案を振り回すのでなく、実質的で冷静な議論を期待したいと思います。